貴方が残してくれたもの

相沢蒼依

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virgin suicide :欲望の夜

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 あれから……どれくらい時間が経ったのだろう? 部屋の時計を見渡すと、午前三時になっていた。
 
 確かここに来たのが、午後十時半過ぎだと記憶しているので、その間仮眠室を独占していたようだ。そこかしこに残る体の痛みは、全力で拒否った名残の筋肉痛らしい。
 
 よいしょと掛け声をかけて、何とか起き上がり、自分の身なりを確認する。
 
 肌触りの良い桜色のワイシャツが着せられていて、ネクタイも緩く締められていた。まるでさっきの出来事が、何もなかったかのようだ。

「とにかく一度、家に戻ってから、シャワー浴びないと……」

 痛む体を引きずりながら、何とか立ち上がった。不意に虚脱感が、じわりと俺を襲う。

「どうして……あの人に好かれなきゃ、ならないんだよ……」
 
 俺のどこを好きになったんだ? ワケ、分からない――

「山上先輩と、仕事するの……イヤ、だな」
 
 今日は当直明けなので顔を合わせずに済むけど、その後はもう……どんな顔していいか、本当に分からない。

「早く、帰って綺麗に、しよう……」
 
 残された痕や心のキズは消えないけれど――。
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