恋の誘導尋問~恋に不器用な先輩に捕われたい~♡

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
140 / 141
番外編~斎藤ちゃんのひとりごと~

しおりを挟む
「お兄ちゃんは会社帰り?」

「ああ、おまえは?」

「私も同じ。友達のオススメの店に、これから行くところなんだけど……」

 まっつーに嫌なことをした綾瀬川を友達と言わなきゃならないのが、本当につらい。

「本当に友達なのか?」

「へっ?」

「おまえが前に言ってた理想の男が、そこにいるもんだから」

 お兄ちゃんが指を差したのは綾瀬川。私がゲッと思いながら綾瀬川の顔を見たら、愛想笑いを浮かべてわざわざ私に目を合わせる。

(付き合うなら私よりも背が高くて、イケメンで強い男がいいと、お兄ちゃんに言ってしまったことを、いまさら悔やんでも悔やみきれない!)

「お兄さん、申し訳ありません。僕は斎藤さんの友人のひとりなんです」

「それじゃあ後ろにいる彼は?」

 お兄ちゃんが訊ねたことで、安心して紹介できると思った。

「会社の同期で――」

「斎藤さんとこれからお付き合いするかもしれない、加藤さんです!」

 いきなり私の話をぶった切り、爆弾発言した綾瀬川に怒りを覚える。

「なに言ってんのよ。勝手に彼氏にされる、加藤がかわいそうじゃない!」

「かわいそうと言ってますが、加藤さん本人はそんなこと微塵にも思っていませんよ」

 含み笑いをしながら綾瀬川が加藤を見るので、つられるように彼を見たのだけれど、真っ赤になってる顔を俯いて隠している様子に、呆然とするしかない。

「お兄さん、斎藤さんの理想と違う彼ですが、とても優しくて頼りになる方なんです」

 なぜか綾瀬川がお兄ちゃんに、加藤の人柄の説明をしはじめる。

「加藤さんは薫よりも強いのか?」

「えっ? それは――」

「さっき彼らのやり取りを見ていましたが、腕力は斎藤さんが上ですけど、会話においては加藤さんが一枚上手と言ったところでした」

 私が言い淀むとそれをフォローするように、綾瀬川が言の葉を紡ぐ。

(いったい、なんだっていうんだろ。綾瀬川はさっきから、加藤のことを持ちあげるし――)

 呆れ果てていたそのときだった。俯いていた加藤が赤ら顔を晒すように頭をしっかり上げて、お兄ちゃんを見つめたあと、90度に腰を曲げた。

「お兄さんの目から見て、綾瀬川さんよりも頼りない男に見えるかもしれませんが、彼女を想う気持ちは誰にも負けません!」

 私たちの傍を通りがかった人が振り返る大きな声に、挙動不審なくらいに周りを見渡してしまった。

「斎藤さん、加藤さんが告白したけど、どうするんですか?」

「薫、加藤さんと付き合うのか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...