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番外編~斎藤ちゃんのひとりごと~
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「斎藤さん、さきほどはどーも。やっぱり千田課長に頼んで正解だったな」
会社の前で、満面の笑みでお出迎えされる気分は、非常に最悪である。しかも相手は顔面偏差値最強男なのだが、あいにく私にはそれ系のイケメンは、とても苦手な部類だった。
眼帯を外した綾瀬川の顔を見ていたら、まっつーの言葉が甦ってしまった。
『斎藤ちゃんにはあまりに気持ち悪くて、詳しく話をしてなかったんだけど、実は澄司さんドMなの。変態って言ったら、ヨダレを垂らして喜ぶんだよ』
(この顔でヨダレを垂らして喜ぶなんて、気持ち悪さを通り越して、私にはお笑いにしかならない。ああ、実際に言って確かめてみたいわ。しかしながら指を差してゲラゲラ笑うことすら、綾瀬川にはご褒美になるんだろうな)
「あ、綾瀬川、殴って…そのぷっ、悪かったわ。んんっ、私がわるっ…ぷぷっ」
「なに吹き出してるんですか。全然謝ってる感じがしないんですけど」
「ちょっ、顔を近づけないで! おもしろすぎて笑っちゃうでしょ!」
首を傾げながら顔を寄せる綾瀬川の肩を掴んで、ぐいっと遠くへ押しやる。これ以上顔を近づけられると、私の内なる妄想力が爆発して、大爆笑に繋がってしまう危険があった。
「斎藤さんは、すぐに手を出す癖があるんですね。そんなんだと彼氏ができませんよ?」
遠くへ押しやったというのに、ふたたび近づく綾瀬川に、私は迷うことなく手を伸ばそうとしたら。
「斎藤っ、またおまえってヤツは!」
会社の扉から飛んできた加藤が、私の腕を掴んで動きを止める。
「なにすんのよ、綾瀬川が悪いんだからね。近づくなって言ってるのに、顔を近づけるから遠くにしてただけで、殴ったりしてない!」
「そうなんですか?」
訝しげに加藤が綾瀬川に訊ねた。どうして私の言葉を信じないんだろう。
「だって僕の顔を見て、吹き出すんですよ。すごく失礼な態度ですよね?」
「だからってわざと顔を近づけて、私のリアクションを引き出そうとする綾瀬川が、絶対に悪い!」
睨み合う私たちを見ながら、加藤が嫌そうに口を開く。
「とにかく、会社の前で言い争うのはやめてください。それで松尾にご執心だった綾瀬川さんが斎藤を呼び出したのは、どういった理由なんでしょうか?」
私が知りたかったことを聞いてくれたことにラッキーと思って、返事を待った。
「加藤さんならどうします? 斎藤さんに殴られて、そのまま見過ごすことができますか?」
「俺は争い事が苦手なので、なにもせずにいつもどおり過ごします。俺のことよりも、今回のことは綾瀬川さんに非があったから、斎藤が殴ったんですよね。だったらなにもせずに、このままお帰りください」
私よりもチビのくせに、加藤が綾瀬川の前に出て勝手に交渉する。しかも綾瀬川に深く頭を下げるなんて、見ていてイライラした。
「僕に非があるから、斎藤さんにお詫びに伺ったんですけど」
「お詫びなんて別にいらないわよ」
「そういうわけにはいきません。ついて来てください」
綾瀬川はなぜか加藤の腕を掴み、どこかに向かって歩きはじめた。
「え? なんで俺が? ちょっと待ってください」
「人質は黙って歩いてください。斎藤さんが助けに来ないでしょ」
(私に聞こえるように言うあたり、確信犯じゃないの。加藤を人質にするなんて、強引にもほどがある)
「わかった。ついて行くから、加藤を放してやって。このことに関係ないんだし」
「加藤さんはどうしますか?」
相変わらず私の意見を無視して、綾瀬川が加藤に訊ねた。
「斎藤の性格を考えたら、いつ暴走してもおかしくないので、ストッパーとしてついていきます」
「そういうことなので、斎藤さん。両手に花状態でついてきてくださいね」
結局、綾瀬川のあとをついていくことになってしまった。しかも歩かされること20分。到着した場所は、私が行くことの絶対ない高級ブティック店だった。
「斎藤さん、さきほどはどーも。やっぱり千田課長に頼んで正解だったな」
会社の前で、満面の笑みでお出迎えされる気分は、非常に最悪である。しかも相手は顔面偏差値最強男なのだが、あいにく私にはそれ系のイケメンは、とても苦手な部類だった。
眼帯を外した綾瀬川の顔を見ていたら、まっつーの言葉が甦ってしまった。
『斎藤ちゃんにはあまりに気持ち悪くて、詳しく話をしてなかったんだけど、実は澄司さんドMなの。変態って言ったら、ヨダレを垂らして喜ぶんだよ』
(この顔でヨダレを垂らして喜ぶなんて、気持ち悪さを通り越して、私にはお笑いにしかならない。ああ、実際に言って確かめてみたいわ。しかしながら指を差してゲラゲラ笑うことすら、綾瀬川にはご褒美になるんだろうな)
「あ、綾瀬川、殴って…そのぷっ、悪かったわ。んんっ、私がわるっ…ぷぷっ」
「なに吹き出してるんですか。全然謝ってる感じがしないんですけど」
「ちょっ、顔を近づけないで! おもしろすぎて笑っちゃうでしょ!」
首を傾げながら顔を寄せる綾瀬川の肩を掴んで、ぐいっと遠くへ押しやる。これ以上顔を近づけられると、私の内なる妄想力が爆発して、大爆笑に繋がってしまう危険があった。
「斎藤さんは、すぐに手を出す癖があるんですね。そんなんだと彼氏ができませんよ?」
遠くへ押しやったというのに、ふたたび近づく綾瀬川に、私は迷うことなく手を伸ばそうとしたら。
「斎藤っ、またおまえってヤツは!」
会社の扉から飛んできた加藤が、私の腕を掴んで動きを止める。
「なにすんのよ、綾瀬川が悪いんだからね。近づくなって言ってるのに、顔を近づけるから遠くにしてただけで、殴ったりしてない!」
「そうなんですか?」
訝しげに加藤が綾瀬川に訊ねた。どうして私の言葉を信じないんだろう。
「だって僕の顔を見て、吹き出すんですよ。すごく失礼な態度ですよね?」
「だからってわざと顔を近づけて、私のリアクションを引き出そうとする綾瀬川が、絶対に悪い!」
睨み合う私たちを見ながら、加藤が嫌そうに口を開く。
「とにかく、会社の前で言い争うのはやめてください。それで松尾にご執心だった綾瀬川さんが斎藤を呼び出したのは、どういった理由なんでしょうか?」
私が知りたかったことを聞いてくれたことにラッキーと思って、返事を待った。
「加藤さんならどうします? 斎藤さんに殴られて、そのまま見過ごすことができますか?」
「俺は争い事が苦手なので、なにもせずにいつもどおり過ごします。俺のことよりも、今回のことは綾瀬川さんに非があったから、斎藤が殴ったんですよね。だったらなにもせずに、このままお帰りください」
私よりもチビのくせに、加藤が綾瀬川の前に出て勝手に交渉する。しかも綾瀬川に深く頭を下げるなんて、見ていてイライラした。
「僕に非があるから、斎藤さんにお詫びに伺ったんですけど」
「お詫びなんて別にいらないわよ」
「そういうわけにはいきません。ついて来てください」
綾瀬川はなぜか加藤の腕を掴み、どこかに向かって歩きはじめた。
「え? なんで俺が? ちょっと待ってください」
「人質は黙って歩いてください。斎藤さんが助けに来ないでしょ」
(私に聞こえるように言うあたり、確信犯じゃないの。加藤を人質にするなんて、強引にもほどがある)
「わかった。ついて行くから、加藤を放してやって。このことに関係ないんだし」
「加藤さんはどうしますか?」
相変わらず私の意見を無視して、綾瀬川が加藤に訊ねた。
「斎藤の性格を考えたら、いつ暴走してもおかしくないので、ストッパーとしてついていきます」
「そういうことなので、斎藤さん。両手に花状態でついてきてくださいね」
結局、綾瀬川のあとをついていくことになってしまった。しかも歩かされること20分。到着した場所は、私が行くことの絶対ない高級ブティック店だった。
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