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番外編~結婚しても恋してる~
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♡♡♡
名古屋の支店とはいえ、私が以前働いていたところよりもうんと大きい建物を見上げた途端に、気負いそうになった。
(俊哉さんはこんな大きい場所で、支店長代理として頑張ってるんだなぁ。そりゃ疲れるよ。ここで働くたくさんの人たちが路頭に迷わないように、お仕事してるんだから)
そんな俊哉さんの隣に並んでも大丈夫な奥様を演じるために、気合いをしっかり入れ直してから、まっすぐ受付に向かった。
「いらっしゃいませ!」
「おはようございます。支店長代理の佐々木の妻ですが、忘れ物を届けに来ました!」
斎藤ちゃんに言われた笑顔をちゃんと浮かべて、ハキハキ喋った。笑顔を保とうとして、説明したあとも呼吸をするのを忘れるくらいに、愛想良くしまくった。
「佐々木代理の奥様っ! いつもお世話になってます」
受付の綺麗な女のコが、慌てた感じでペコペコ頭を下げたのを見て、やっと我に返る。
「ひっ! あっ、そんな…こちらこそ、いつもお世話になってまする!」
ここで呼吸をやっとしたせいで、なんかもうぐたぐたな挨拶になったのが、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「佐々木代理に忘れ物をお渡ししましょうか?」
「すみません。重要な書類なので、本人に直接渡したいのですが」
思いきって自分で渡したいことを告げた理由は、誰が敵かわからないから。
ここよりも田舎の支店で、ただの正社員だった俊哉さんが支店長代理に抜擢されたことを、よく思わない一派がいることを、事前に聞いていた。隙があれば、足を引っ張られかねない状況ゆえに、俊哉さんだけじゃなく、私もしっかりしなければならない。
「かしこまりました。ではこちらでお待ちください」
私のワガママに嫌な顔をひとつもせずに、にこやかに対応してくれた受付のコが案内してくれたのは、立派な応接室だった。
「佐々木代理をお呼びしますので、もう少々お待ちください」
「ありがとうございました。お手数をおかけします!」
言いながら頭を深く下げたこのときの私のライフは、半分以下に急降下していた。
(慣れないことをしているせいで、愛想笑いが引きつり笑いになってる気がする。俊哉さんの奥さんとして、もう少ししっかりしなきゃダメだな)
受付のコが出て行ったので、傍にあるソファの隅っこにかけさせてもらう。体に感じる疲労感を認識していると、ノックの音が応接室に響いた。慌てて背筋を伸ばし、「どうぞ!」と元気よく返事をしたら。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
若い男性社員がいそいそと、目の前のテーブルにお茶を置いていく。
「すみません。ただ忘れ物を届けに来ただけなのに、お茶を出していただいて」
「そんなことないっす。佐々木代理には、めちゃくちゃお世話になっておりまして」
なんとなく体育会系の雰囲気を醸す若い男性社員と喋っていたら、ふたたびノックの音がした。
「失礼します。茶菓子を――、ってどうして宮内がここにいるんだよ?」
「そういうおまえこそ、どうしてここに来た? 急ぎの仕事があったハズだろ」
「ごめんなさいね、お仕事中なのに。早く戻ってください……」
言い争いに発展する前に、話に割り込んでやった。顔を見合わせるふたりを他所に、またまたノックの音が……。
「失礼しまぁす。あれれ、どうして先輩を差し置いて、君たちがこんなところで油を売ってるのかなぁ?」
彼らの先輩という人が現れて、応接室がカオスになったのは言うまでもない!
私はこれから、どうしたらいいのでしょうか?
名古屋の支店とはいえ、私が以前働いていたところよりもうんと大きい建物を見上げた途端に、気負いそうになった。
(俊哉さんはこんな大きい場所で、支店長代理として頑張ってるんだなぁ。そりゃ疲れるよ。ここで働くたくさんの人たちが路頭に迷わないように、お仕事してるんだから)
そんな俊哉さんの隣に並んでも大丈夫な奥様を演じるために、気合いをしっかり入れ直してから、まっすぐ受付に向かった。
「いらっしゃいませ!」
「おはようございます。支店長代理の佐々木の妻ですが、忘れ物を届けに来ました!」
斎藤ちゃんに言われた笑顔をちゃんと浮かべて、ハキハキ喋った。笑顔を保とうとして、説明したあとも呼吸をするのを忘れるくらいに、愛想良くしまくった。
「佐々木代理の奥様っ! いつもお世話になってます」
受付の綺麗な女のコが、慌てた感じでペコペコ頭を下げたのを見て、やっと我に返る。
「ひっ! あっ、そんな…こちらこそ、いつもお世話になってまする!」
ここで呼吸をやっとしたせいで、なんかもうぐたぐたな挨拶になったのが、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「佐々木代理に忘れ物をお渡ししましょうか?」
「すみません。重要な書類なので、本人に直接渡したいのですが」
思いきって自分で渡したいことを告げた理由は、誰が敵かわからないから。
ここよりも田舎の支店で、ただの正社員だった俊哉さんが支店長代理に抜擢されたことを、よく思わない一派がいることを、事前に聞いていた。隙があれば、足を引っ張られかねない状況ゆえに、俊哉さんだけじゃなく、私もしっかりしなければならない。
「かしこまりました。ではこちらでお待ちください」
私のワガママに嫌な顔をひとつもせずに、にこやかに対応してくれた受付のコが案内してくれたのは、立派な応接室だった。
「佐々木代理をお呼びしますので、もう少々お待ちください」
「ありがとうございました。お手数をおかけします!」
言いながら頭を深く下げたこのときの私のライフは、半分以下に急降下していた。
(慣れないことをしているせいで、愛想笑いが引きつり笑いになってる気がする。俊哉さんの奥さんとして、もう少ししっかりしなきゃダメだな)
受付のコが出て行ったので、傍にあるソファの隅っこにかけさせてもらう。体に感じる疲労感を認識していると、ノックの音が応接室に響いた。慌てて背筋を伸ばし、「どうぞ!」と元気よく返事をしたら。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
若い男性社員がいそいそと、目の前のテーブルにお茶を置いていく。
「すみません。ただ忘れ物を届けに来ただけなのに、お茶を出していただいて」
「そんなことないっす。佐々木代理には、めちゃくちゃお世話になっておりまして」
なんとなく体育会系の雰囲気を醸す若い男性社員と喋っていたら、ふたたびノックの音がした。
「失礼します。茶菓子を――、ってどうして宮内がここにいるんだよ?」
「そういうおまえこそ、どうしてここに来た? 急ぎの仕事があったハズだろ」
「ごめんなさいね、お仕事中なのに。早く戻ってください……」
言い争いに発展する前に、話に割り込んでやった。顔を見合わせるふたりを他所に、またまたノックの音が……。
「失礼しまぁす。あれれ、どうして先輩を差し置いて、君たちがこんなところで油を売ってるのかなぁ?」
彼らの先輩という人が現れて、応接室がカオスになったのは言うまでもない!
私はこれから、どうしたらいいのでしょうか?
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