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告白

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「あの忍ママ、せっかく店に来たんだから、なにか言う前にオーダーしてくれると、店としてはありがたいんだが」

「……どうすっかな、じゃあハイボールで」

 いつもは甲高いおねぇ声を出す忍ママが、めちゃくちゃダンディな声を出したことに、ギョッとしてしまい、持っていたグラスを落としそうになった。

「わっ、あぶなっ!」

「おいおい、智之しっかりしよろ。昼間の俺は、いつもコレなんだからよぉ」

「昼間の忍ママって、いったい……?」

「日サロの店長してんだよ、これでも。昼と夜をかけもちして、毎日働いてんだって。すげぇだろ!」

 ガハハハッと低い声で大笑いされても、同調して笑うことができない。言い知れぬ迫力があるし、なにより昼間の姿になったことで、これからなにをされるのか――それがまったく予測できなかった。

「ただちにハイボールをお作りしますね。少々お待ちください」

 作り笑いをしながらその場を離れ、オーダーされたハイボールを作るために、両手を洗いはじめると、カウンター席に腰かけていた忍ママがおもむろに立ち上がり、いきなり聖哉に近づいた。

(――嫌な予感しかしないぞ、これは。変なことを言いませんように!)

 手際よくハイボールを作りつつ、視線は目の前のふたりをロックオン!

「ピアノ、上手だな」

 赤いドレスを着たフルメイクの大男が、横から声をかけたからだろう。聖哉はピアノを奏でていた手をとめて、忍ママを仰ぎ見る。その顔は思ったよりも、衝撃を受けていない様子だった。

「ぁ、ありがとうございます……」

「俺はこの繁華街の奥に、店を構えてる者だ。ここの店の雰囲気はどうだ?」

 一応自己紹介らしきことをきちんとしてから、聖哉とコンタクトをとろうとするところは、さすがだと言える。

「そうですね、すごく居心地がいいバーだと思います。お客様も上手にお酒を嗜む方が多いので、変に絡まれることもありませんし」

「俺の店はゲイバーのせいか、上品なお客様は全然いなくてな。まぁオーナーの俺がこんなだし!」

 ふたたび豪快に笑うと、聖哉の肩をバシバシ叩く。スキンヘッドでフルメイクのオッサンに絡まれているというのに、聖哉は平然としたまま、唇にほほ笑みを湛えた。

「あのよ、ちょっといいか?」

 キョドらない姿を見るなり、忍ママは聖哉の耳元でなにかを囁きかける。すると途端に困った表情に変化するなり、頬を赤く染めて口を開いた。

「お客様は、石崎さんとは同業者だから……」

 そう言って聖哉が俺に視線を飛ばしたことで、ヘルプすることが決定した。オーダーされたハイボールを片手にカウンターから出て、ふたりに近づく。

「忍ママ、これ飲んだら帰ってください。自分の店の準備もしなきゃでしょう?」

 これ以上、余計なことを言わないように、俺なりに先手を打った。
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