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「悪いねぇ。なにが起こるかわからないから、君に目隠ししているんだ。窮屈だろうが、我慢してくれ」
(てっきり組織の人間の顔が見えないようにしているだけかと思ったのに、僕の目が光るなんて驚き――)
「君の能力は、ほかになにかあるのかな?」
交渉相手が近づき、僕の顎を掴んで上向かせた。
「素直に答えると思いますか?」
「私が君の立場なら、同じく答えないね。奥の手は、とっておくものだ」
「奥の手なんて、僕にはありません。赤い石がないと、なにもできないんです」
キッパリ言いきった僕の顎を掴む手に力が入り、痛いくらいに握られた。
「質問を変えよう。この魔石はどこで拾ったのかな?」
「拾ったんじゃないです。とある男の子から貰って」
「グラマラスな美女じゃなく?」
間髪おかずに返事をされたことで、3年前に出会った男の子が話した、あのときのことを思い出した。
『俺は人によって見え方が違うんだ。おまえの話しやすい相手が、ガキだったってことなんだ』
男の子のセリフがきっかけとなり、思い当たることを訊ねてみる。
「貴方は赤い石の持ち主について、ご存知でしょうか?」
「君と同じように、この石を使って人を殺しているところに、偶然遭遇してね。残念なことにメンバーが何人か殺されてしまった。そういった経緯があったから、いい感じで相手を痛めつけてしまって、魔石のことを詳しく聞き出すことができなくなってしまったんだ」
自分以外に赤い石を使って人殺しをしている人物がいた事実に、ひゅっと息を飲む。
「私たちと似た組織が、君らのような一般人に魔石を渡してその力を使わせ、なにか実験でもしていたのか? うーん、その男の子はいくつぐらいだった?」
「みた感じ5、6歳くらいです」
「子どもは惑わしやすい。親に言われて動いていたのか――」
ブツブツ喋っていると思ったら、いきなり視界が開けた。
「リーダー、危ないッスよ!」
左横からかけられた声に、リーダーと呼ばれた短い金髪の若い男が微笑み、僕を緑色の瞳で見下ろす。
「彼が嘘をついてるように見えなかった。だから、信じてみようと思ってね。私を殺せるならやってみてくれ」
「あの石がないと、なにもできません」
「わかった、信じるよ」
僕は綺麗な緑色の瞳から視線を外さずに告げた。こんなことで信じてもらえるかわからなかったが、最初のときよりは緊張感をといてくれたように思える。明るい口調で話してくれることは、こっちに敵意がない感じに聞こえる。
「だったらさ、私たちと一緒に世の中を変えるために、あの魔石を使ってみないか? 無差別に貧乏人を殺していくよりも、君が考える理想郷を作れるかもしれないよ?」
「理想郷……」
マリカと一緒に暮らすための、理想郷を作る――。
「私の組織としては、確実にターゲットを暗殺したい。そして君は、その武器を持っている。目指すところは同じなんだよ。こんなことをしなくてもいい世の中になったら、とても素晴らしとは思わないかい?」
「僕はちょっとした事情があって、あと300人ほど殺めなければならないんです」
「ちょっとした事情ね。人数的に、まるで願かけしてるみたい」
リーダーと呼ばれた人は驚くことなく、おどけたように口にした。
「君が私たちと手を組んでくれるのなら、始末しなきゃいけないターゲット及び、拷問にかけたあとに始末する人間をまわしてあげる。どうだい?」
「わかりました、お願いします」
小さく頭を下げると、椅子に固定されている縄を解いてくれた。
「私の名はロベルト、暗殺組織シャングリラのリーダーをやってる。よろしく」
言いながら右手を差し出す。椅子から立ち上がり、目の前の手を掴んでぎゅっと握りしめた。
「ハサンです。よろしくお願いします」
こうして暗殺組織シャングリラのメンバーとなり、言われるままにターゲットを殺しまくった。
(てっきり組織の人間の顔が見えないようにしているだけかと思ったのに、僕の目が光るなんて驚き――)
「君の能力は、ほかになにかあるのかな?」
交渉相手が近づき、僕の顎を掴んで上向かせた。
「素直に答えると思いますか?」
「私が君の立場なら、同じく答えないね。奥の手は、とっておくものだ」
「奥の手なんて、僕にはありません。赤い石がないと、なにもできないんです」
キッパリ言いきった僕の顎を掴む手に力が入り、痛いくらいに握られた。
「質問を変えよう。この魔石はどこで拾ったのかな?」
「拾ったんじゃないです。とある男の子から貰って」
「グラマラスな美女じゃなく?」
間髪おかずに返事をされたことで、3年前に出会った男の子が話した、あのときのことを思い出した。
『俺は人によって見え方が違うんだ。おまえの話しやすい相手が、ガキだったってことなんだ』
男の子のセリフがきっかけとなり、思い当たることを訊ねてみる。
「貴方は赤い石の持ち主について、ご存知でしょうか?」
「君と同じように、この石を使って人を殺しているところに、偶然遭遇してね。残念なことにメンバーが何人か殺されてしまった。そういった経緯があったから、いい感じで相手を痛めつけてしまって、魔石のことを詳しく聞き出すことができなくなってしまったんだ」
自分以外に赤い石を使って人殺しをしている人物がいた事実に、ひゅっと息を飲む。
「私たちと似た組織が、君らのような一般人に魔石を渡してその力を使わせ、なにか実験でもしていたのか? うーん、その男の子はいくつぐらいだった?」
「みた感じ5、6歳くらいです」
「子どもは惑わしやすい。親に言われて動いていたのか――」
ブツブツ喋っていると思ったら、いきなり視界が開けた。
「リーダー、危ないッスよ!」
左横からかけられた声に、リーダーと呼ばれた短い金髪の若い男が微笑み、僕を緑色の瞳で見下ろす。
「彼が嘘をついてるように見えなかった。だから、信じてみようと思ってね。私を殺せるならやってみてくれ」
「あの石がないと、なにもできません」
「わかった、信じるよ」
僕は綺麗な緑色の瞳から視線を外さずに告げた。こんなことで信じてもらえるかわからなかったが、最初のときよりは緊張感をといてくれたように思える。明るい口調で話してくれることは、こっちに敵意がない感じに聞こえる。
「だったらさ、私たちと一緒に世の中を変えるために、あの魔石を使ってみないか? 無差別に貧乏人を殺していくよりも、君が考える理想郷を作れるかもしれないよ?」
「理想郷……」
マリカと一緒に暮らすための、理想郷を作る――。
「私の組織としては、確実にターゲットを暗殺したい。そして君は、その武器を持っている。目指すところは同じなんだよ。こんなことをしなくてもいい世の中になったら、とても素晴らしとは思わないかい?」
「僕はちょっとした事情があって、あと300人ほど殺めなければならないんです」
「ちょっとした事情ね。人数的に、まるで願かけしてるみたい」
リーダーと呼ばれた人は驚くことなく、おどけたように口にした。
「君が私たちと手を組んでくれるのなら、始末しなきゃいけないターゲット及び、拷問にかけたあとに始末する人間をまわしてあげる。どうだい?」
「わかりました、お願いします」
小さく頭を下げると、椅子に固定されている縄を解いてくれた。
「私の名はロベルト、暗殺組織シャングリラのリーダーをやってる。よろしく」
言いながら右手を差し出す。椅子から立ち上がり、目の前の手を掴んでぎゅっと握りしめた。
「ハサンです。よろしくお願いします」
こうして暗殺組織シャングリラのメンバーとなり、言われるままにターゲットを殺しまくった。
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