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番外編

文藝冬秋編集長 伊達誠一4

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 告白されたことよりも、その理由が謎すぎて、必死に考えを巡らせる。すると彼女が俺の目の前に、一枚の名刺を差し出した。それに視線を走らせた刹那、驚きのあまり「あっ!」という大きな声が出てしまう。

「これは俺がフォーカス ショットで、平社員だったときの名刺じゃないか」

「私、M高等学校の生徒だったときに、伊達さんに渡された名刺です」

「M高等学校って、えっと……。あ、体罰を隠して生徒を厳しく指導していた暴力学校!」

 学校名を聞き、顎に手を当てつつ考えること数秒で導き出せたのは、苦労を背負いながらも、取材に力を入れたネタだったから。

 余計なことを言わないように、かん口令を教師から敷かれていた生徒たち。彼らに真実を聞き出すために名刺を配って、いつでも連絡がもらえるように対処した。

『君たちが受けている体罰は、正しい指導なんかじゃない!』

 そのひとことを告げながら、足繁く通っているうちに、重たくなっていた生徒の口から、いろんな証言を得ることができた。

 それを前後編で記事にして、フォーカス ショットで掲載したことにより、学校側の体罰が世に晒される結果となり、教育委員会が動くことになって、問題を起こした教師数名が学校を去ることになったのだった。

「あのときの伊達さんの熱心な取材を目の当たりにして、私も心を動かされたんです。雑誌にまとめられた記事に感動して、何度も目を通しました」

「そうだったのか、あのときの生徒さんだったとはな」

 当時の出来事が雲母編集長との出逢いのキッカケになるとは、夢にも思わなかった。

「私もフォーカス ショットで働くために、まずは大学で学び、就活は新朝社を目指したんですけど、あえなく撃沈してしまいました」

「まぁあそこは激戦だから、しょうがないところはある」

「それでもここで雇ってもらうことになり、臥龍岡先輩にすべてを打ち明けたら、ものすごい指導がなされました」

「ちょっと待て」

 迷うことなく彼女の顔の前にてのひらを見せて、すぐに話をとめた。

「そのとき俺は、まだフォーカス ショットで働いてるのに、どうして臥龍岡が雲母編集長を厳しく指導することをしたんだ?」

「ここで頑張って、仕事の成果を出しまくったら、向こうからヘッドハンティングされる可能性があるからって」

 雲母編集長は持っていたファイル類を胸の中に抱きしめて、嬉しそうにほほ笑む。

 どんなしごきで彼女を鍛えたのかは知らないが、ここで編集長になるくらい有能な人材に育てるために、すごいことをされたのだろう。

「だが雲母編集長がヘッドハンティングされる前に、俺がここにやって来てしまったと……」

「そうなんです! まさに運命のお導きだと思いません?」

「思いません、ただの偶然でしょうねぇ」

 速攻で反論したというのに、それすらも嬉しそうに笑いかけられてしまった。

「臥龍岡先輩は運命だって、連呼してましたよ」

「それは雲母編集長のヤル気をあげるために、適当なことをほざいたまでです。ヤツの口車に乗るとは、おいたわしや」
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