101 / 126
番外編
文藝冬秋編集長 伊達誠一
しおりを挟む
俺は文藝冬秋編集長の伊達誠一。もとはライバル社の雑誌フォーカス ショットの副編集長をしていた。文藝社のとある人物から編集長として働いてみないかとお誘いを受け、現在に至る。
『伊達くんがフォーカス ショットでできなかったことを、ウチで好き勝手にやってかまわないから!』
ヘッドハンティング時、そう言われた理由は明白。週間雑誌で常にトップの位置を走り続けるライバル社の風を入れて、底辺に居座る文藝冬秋をレベルアップさせるためだった。
「なんなんだ、この編集部は――」
編集長として就任した当初は、編集部の景色が動物園にしか見えなかった。
やる気のない副編集長はナマケモノだったし、ムダにやる気があっても、していることが限りなくブラックに近い取材ばかりして、見事に空回りする臥龍岡全と、カメラマンの一ノ瀬成臣はハブとマングース。彼らが編集部で目立ちすぎているせいで、ほかのメンバーはおとなしい草食動物になっているし、新人のライターやカメラマンはヒヨコにしか見えない。
頭を抱えながら、動物園をマトモな編集部にすべく、まずはやる気のないナマケモノ副編集長から手をつけた。仕事でポカをやらかすようにうまいこと仕向けて、降格異動させる。空いたポストにハブの臥龍岡を居座らせて、攻撃とい名のトラブルを他所で起こさないように、編集部の椅子に固定させた。
ハブと共に、ハードな仕事をしたせいで疲れきっている、マングースの一ノ瀬に、グラビアモデルの撮影をするように命令したのはよかった。もともと腕のいいカメラマンだったし、彼を起用してから雑誌の売り上げが伸びたのがその証拠だった。だがしかし!
『昨日は一ノ瀬さんと、熱い夜を過ごしたんですよぉ。これって雑誌で、ずっと私を使ってくれるってことですよね?』
なぁんてことを言い出すグラビアモデルが多数いて、さらなる問題に発展する結果になってしまった。しかもだ!
たまたま臥龍岡副編集長のデスクの後ろを通ったときに目に留まった、パソコンの画面に映し出された盗撮しているらしき社内の風景に、愕然とするしかなかった。
「おい、臥龍岡はどこにいる?」
慌てふためきながら副編集長を捜したところ、一ノ瀬と白鳥の三人で話し合いをしているとのことだった。これがのちに雑誌の売り上げにつながる、上條春菜の事件になるとは、このとき思いもしなかった。
結局、社内の盗撮をとめることができなくなったのである。しかも社内に蔓延る汚職まで偶然暴いてしまうことになり、臥龍岡副編集長の株は、自動的に上がっていったのだった。
『伊達くんがフォーカス ショットでできなかったことを、ウチで好き勝手にやってかまわないから!』
ヘッドハンティング時、そう言われた理由は明白。週間雑誌で常にトップの位置を走り続けるライバル社の風を入れて、底辺に居座る文藝冬秋をレベルアップさせるためだった。
「なんなんだ、この編集部は――」
編集長として就任した当初は、編集部の景色が動物園にしか見えなかった。
やる気のない副編集長はナマケモノだったし、ムダにやる気があっても、していることが限りなくブラックに近い取材ばかりして、見事に空回りする臥龍岡全と、カメラマンの一ノ瀬成臣はハブとマングース。彼らが編集部で目立ちすぎているせいで、ほかのメンバーはおとなしい草食動物になっているし、新人のライターやカメラマンはヒヨコにしか見えない。
頭を抱えながら、動物園をマトモな編集部にすべく、まずはやる気のないナマケモノ副編集長から手をつけた。仕事でポカをやらかすようにうまいこと仕向けて、降格異動させる。空いたポストにハブの臥龍岡を居座らせて、攻撃とい名のトラブルを他所で起こさないように、編集部の椅子に固定させた。
ハブと共に、ハードな仕事をしたせいで疲れきっている、マングースの一ノ瀬に、グラビアモデルの撮影をするように命令したのはよかった。もともと腕のいいカメラマンだったし、彼を起用してから雑誌の売り上げが伸びたのがその証拠だった。だがしかし!
『昨日は一ノ瀬さんと、熱い夜を過ごしたんですよぉ。これって雑誌で、ずっと私を使ってくれるってことですよね?』
なぁんてことを言い出すグラビアモデルが多数いて、さらなる問題に発展する結果になってしまった。しかもだ!
たまたま臥龍岡副編集長のデスクの後ろを通ったときに目に留まった、パソコンの画面に映し出された盗撮しているらしき社内の風景に、愕然とするしかなかった。
「おい、臥龍岡はどこにいる?」
慌てふためきながら副編集長を捜したところ、一ノ瀬と白鳥の三人で話し合いをしているとのことだった。これがのちに雑誌の売り上げにつながる、上條春菜の事件になるとは、このとき思いもしなかった。
結局、社内の盗撮をとめることができなくなったのである。しかも社内に蔓延る汚職まで偶然暴いてしまうことになり、臥龍岡副編集長の株は、自動的に上がっていったのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる