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番外編
デキちゃったかもしれない!?
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『大事な話があるので、時間があるときにウチに来て』というLINEを美羽姉からもらったので、なんとか仕事をやりくりし、その日のうちにマンションに顔を出した。
いつもどおり出迎えられて、部屋に通されたのだが、どことなく素っ気なさを感じて、後ろから美羽姉の体をぎゅっと抱きしめる。鼻に香るいい匂いに、下半身が反応しそうになった。
「美羽姉、仕事が忙しくて、なかなか逢えなかったことを怒ってる?」
こめかみにキスを落としながら顔を覗き込むと、美羽姉は顔を動かさずに、横目で俺を見た。冷やかさを漂わせるまなざしを向けられたことで、自分がなにかやらかしたのかもしれないことを思いつき、頭の中で原因になりそうな出来事を、必死になって思い出す。
「学くん、アレがこないの」
「あれ? とは?」
「察してよ」
睨みながら告げられたせいで、すぐになにを指すのかがわかり、頭の中で考えていたことが空中分解して、一気に真っ白になった。
「ま、まままマジでしゅか?」
俺のマヌケな問いかけに、美羽姉は黙ったまま頷いた。
「ああ、どうしよう。俺と美羽姉の子どもが現実化する……。嬉しすぎて吐血しそうだ」
「はい?」
「実は俺、もう子どもの名前を考えててさ。男の子でも女の子でも使えそうなものなんだけど『美咲』ってよくね? 美羽姉の名前の一文字と花にちなんだものを入れたいなって考えたら、咲くっていう文字を思いついたんだ」
まくしたてて一気に喋る俺を、ポカンとしたまま眺める美羽姉の顔がアホっぽい。そんな顔も案外かわいいなと思いつつ、話を続ける。
「俺たちの子どもなら、まず間違いなく絶対にかわいいに決まってる。んもぅ写真撮りまくる。毎日撮って成長記録を残して、抱っこしておんぶして散歩に行って!」
「ちょっと学くん!」
「一人目が美咲だから、二人目と三人目と四人目はどうしようか。産み分けなんてできないわけだし、とりあえず10人分の名前を考えておけば――」
「ストップ! どんだけ私に子どもを産ませるつもりなの!?」
今度は俺がキョトンとする番。興奮して顔を紅潮させた美羽姉を、ちゃんと見つめてから。
「授かったら授かった分だけ、産んでもらいたい。仕事をかけ持ちしてでも、全力で頑張ってみせるよ」
そう言うと、美羽姉は力なくその場にしゃがみ込み、頭を両手で抱える。困惑する意味がわからないまま、俺はふたたび語った。
「父親になったら、娘が嫁ぐときに泣いちゃうかもしれない。というか、彼氏ができた時点で敵意を剥き出しに、口撃してしまうかも! 『俺の娘を泣かすことをしたら殴ってやる!』みたいな感じでさ」
「だったら、私のお父さんに口撃されてください」
「へっ?」
「結婚前の娘を孕ませた彼氏を目の前にしたときの、父親の気持ちを考えてみて」
美羽姉に言われたことで、ざーっと青ざめるしかない。
「マジでヤバみしか感じない……」
「それは彼氏側の気持ちでしょ。父親の気分に、さっきなっていたじゃない」
「考えたくない。結婚前の俺の娘に、なんてことしてくれたんだって、ボコボコにされること、間違いなしじゃないか!」
両頬に手を当てて、ひーっと怯えてみせたら、美羽姉は立ち上がり、大きなため息を吐いた。
「私は前回の結婚で、それをやっているから、お父さんの態度を知っているの」
「ですねぇ、はい……」
俺は体を小さくしながら腰をおろし、その場に正座して背筋を伸ばした。
「学くん、今どんな気持ち?」
「やってしまいました、ごめんなさい、授かりものなので許してください。みたいな感じ」
美羽姉を見上げながら両手を合わせたら、なぜか頭を撫でられた。
「?」
「安心して。私の生活サイクルが不安定になったせいで、生理不順になっただけなの」
「ホントに?」
「ひとり暮らしして、本格的に働きはじめたり、学くんと朝までいたしたりする関係で、体内時計が狂ったみたいなのよね」
(そっか。美羽姉の生活サイクルを乱す原因を作っていたんだ。気をつけなければ!)
「私としては前回のように、結婚前に妊娠したくないっていう気持ちなの。お互いの家に挨拶に行って、結婚しますって報告したいし、結婚式も挙げたい」
「うん、わかった」
「だからこれからは、3回が限度ということでよろしくね!」
ニッコリ微笑みながら告げられた回数に、唖然とするしかない。
「ざ・ん゛・が・い゛ぃ、だけ……」
「回数が増える分だけ、妊娠する確率があがるんだから、しょうがないでしょ?」
俺はふたたび両手を合わせて、潤みきった涙目で美羽姉を見上げる。
「5回とは言わない。せめて4回で手を打ちません?」
こうして俺なりに交渉したのだが、頑固な美羽姉を説き伏せることが当然できないし、なにより彼女の体を第一に考えた結果、3回で手を打つことにした。
(回数制限がある分だけ、内容が濃くなることを、美羽姉は知らないしな。とりあえず気をつけながら、愛のあるエッチをしよう!)
そう心に誓ったのだった♡
いつもどおり出迎えられて、部屋に通されたのだが、どことなく素っ気なさを感じて、後ろから美羽姉の体をぎゅっと抱きしめる。鼻に香るいい匂いに、下半身が反応しそうになった。
「美羽姉、仕事が忙しくて、なかなか逢えなかったことを怒ってる?」
こめかみにキスを落としながら顔を覗き込むと、美羽姉は顔を動かさずに、横目で俺を見た。冷やかさを漂わせるまなざしを向けられたことで、自分がなにかやらかしたのかもしれないことを思いつき、頭の中で原因になりそうな出来事を、必死になって思い出す。
「学くん、アレがこないの」
「あれ? とは?」
「察してよ」
睨みながら告げられたせいで、すぐになにを指すのかがわかり、頭の中で考えていたことが空中分解して、一気に真っ白になった。
「ま、まままマジでしゅか?」
俺のマヌケな問いかけに、美羽姉は黙ったまま頷いた。
「ああ、どうしよう。俺と美羽姉の子どもが現実化する……。嬉しすぎて吐血しそうだ」
「はい?」
「実は俺、もう子どもの名前を考えててさ。男の子でも女の子でも使えそうなものなんだけど『美咲』ってよくね? 美羽姉の名前の一文字と花にちなんだものを入れたいなって考えたら、咲くっていう文字を思いついたんだ」
まくしたてて一気に喋る俺を、ポカンとしたまま眺める美羽姉の顔がアホっぽい。そんな顔も案外かわいいなと思いつつ、話を続ける。
「俺たちの子どもなら、まず間違いなく絶対にかわいいに決まってる。んもぅ写真撮りまくる。毎日撮って成長記録を残して、抱っこしておんぶして散歩に行って!」
「ちょっと学くん!」
「一人目が美咲だから、二人目と三人目と四人目はどうしようか。産み分けなんてできないわけだし、とりあえず10人分の名前を考えておけば――」
「ストップ! どんだけ私に子どもを産ませるつもりなの!?」
今度は俺がキョトンとする番。興奮して顔を紅潮させた美羽姉を、ちゃんと見つめてから。
「授かったら授かった分だけ、産んでもらいたい。仕事をかけ持ちしてでも、全力で頑張ってみせるよ」
そう言うと、美羽姉は力なくその場にしゃがみ込み、頭を両手で抱える。困惑する意味がわからないまま、俺はふたたび語った。
「父親になったら、娘が嫁ぐときに泣いちゃうかもしれない。というか、彼氏ができた時点で敵意を剥き出しに、口撃してしまうかも! 『俺の娘を泣かすことをしたら殴ってやる!』みたいな感じでさ」
「だったら、私のお父さんに口撃されてください」
「へっ?」
「結婚前の娘を孕ませた彼氏を目の前にしたときの、父親の気持ちを考えてみて」
美羽姉に言われたことで、ざーっと青ざめるしかない。
「マジでヤバみしか感じない……」
「それは彼氏側の気持ちでしょ。父親の気分に、さっきなっていたじゃない」
「考えたくない。結婚前の俺の娘に、なんてことしてくれたんだって、ボコボコにされること、間違いなしじゃないか!」
両頬に手を当てて、ひーっと怯えてみせたら、美羽姉は立ち上がり、大きなため息を吐いた。
「私は前回の結婚で、それをやっているから、お父さんの態度を知っているの」
「ですねぇ、はい……」
俺は体を小さくしながら腰をおろし、その場に正座して背筋を伸ばした。
「学くん、今どんな気持ち?」
「やってしまいました、ごめんなさい、授かりものなので許してください。みたいな感じ」
美羽姉を見上げながら両手を合わせたら、なぜか頭を撫でられた。
「?」
「安心して。私の生活サイクルが不安定になったせいで、生理不順になっただけなの」
「ホントに?」
「ひとり暮らしして、本格的に働きはじめたり、学くんと朝までいたしたりする関係で、体内時計が狂ったみたいなのよね」
(そっか。美羽姉の生活サイクルを乱す原因を作っていたんだ。気をつけなければ!)
「私としては前回のように、結婚前に妊娠したくないっていう気持ちなの。お互いの家に挨拶に行って、結婚しますって報告したいし、結婚式も挙げたい」
「うん、わかった」
「だからこれからは、3回が限度ということでよろしくね!」
ニッコリ微笑みながら告げられた回数に、唖然とするしかない。
「ざ・ん゛・が・い゛ぃ、だけ……」
「回数が増える分だけ、妊娠する確率があがるんだから、しょうがないでしょ?」
俺はふたたび両手を合わせて、潤みきった涙目で美羽姉を見上げる。
「5回とは言わない。せめて4回で手を打ちません?」
こうして俺なりに交渉したのだが、頑固な美羽姉を説き伏せることが当然できないし、なにより彼女の体を第一に考えた結果、3回で手を打つことにした。
(回数制限がある分だけ、内容が濃くなることを、美羽姉は知らないしな。とりあえず気をつけながら、愛のあるエッチをしよう!)
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