73 / 126
恋愛クライシス 一ノ瀬成臣の場合
20
しおりを挟む
♡♡♡
(動きやすい服装で当日逢おう)という指定を受けたので、メガネからコンタクトレンズに変更し、パンツルックにぺたんこ靴のいでたちで家を出る。
成臣くんの行きたい場所で、動きやすい服装をしなければならないってことは、アスレチック施設かなと、駅前にて考えにふけっているところに現れた、重低音のエンジン音を響かせた見慣れない一台の大型バイク。
「え゛?」
「よっ、待たせたな」
大型バイクから降り立ち、ヘルメットを外した成臣くんのめちゃくちゃカッコイイことこの上ない! 思わず変な声が出そうになった。
(大好きな人が白馬に跨ってやってきたんじゃなく、大型バイクで目の前に現れて、動揺しない女がいる? 臥龍岡先輩どうしよう! 好きって気持ちが、絶対に駄々漏れしちゃう!)
「なっ成臣くん、ば、バイクの免許もってたんだ、ぁ?」
問いかける声が、ところどころ震えてしまった。
「ああ、たまに遠出して写真撮影してたから」
真顔で言いながら、私をじっと見下ろす。
成臣くんの視線がどうにも気恥ずかしくて、俯いてやり過ごすしかなかった。だって自分の気持ちを、なんとかして隠さなければならない。
(――私たちはただの友達、ただの友達の関係なんだから!)
「とりあえずこれ着て」
心の中で友達を連呼する私に、成臣くんは着ていた革ジャンを手早く脱ぎ、私の肩に羽織らせる。
「成臣くんは大丈夫なの?」
恐るおそる訊ねつつ、成臣くんのぬくもりを感じる革ジャンに袖を通した。やっぱり男性ものはすごく大きい。ギリギリ指先が出る感じの萌え袖になる。体に伝わってくる成臣くんのぬくもりがじんわりあったかくて、にやけそうになった。
「俺は平気。走ってる途中で千草ちゃんが転げ落ちて、怪我したら困るから。それとこれ」
私が革ジャンを着たのをちゃんと確認してから、大きなヘルメットをズボッと被せられる。見た目よりそこまで重くないものの、それなりに閉塞感があった。
「千草ちゃん、そのままじっとしてて」
きちんと顎紐をとめてくれるときに、成臣くんの顔がものすごく近くにあって、そりゃあもう心臓が否応なしに高鳴る。
「これでよし。じゃあ次は、この出っ張りに片足をかけて跨って」
成臣くんに言われたとおりにバイクの出っ張りに足をかけながら、高さのあるシートに両手をついてなんとか跨った。
「ぷっ……」
「な、なに?」
ヘルメット越しだったけど、私の様子をまじまじと眺める成臣くんが、おかしそうに吹き出した声を、ハッキリ聞いた。
「俺を難なくベッドに押し倒したり、暴れる春菜を押さえつけてた千草ちゃんと、今の千草ちゃんが全然違うなって」
「だだだ、だってはじめてバイクに乗るのよ。戸惑うに決まってる」
バイクに跨る以上に、大好きな成臣くんが私に世話を焼いてくれることが戸惑いの原因だったりするけど、それは口に出してはいけない。
「革ジャン着てる姿、小さいコみたいでかわいい。とりあえず俺の腰に捕まってたら落ちないから」
クスクス笑った成臣くんもバイクに颯爽と跨り、エンジンをかける。いつ走り出すかわからないので、慌てて目の前にある腰にぎゅっと抱きついた。
(うっ、嬉しい! 大好きな成臣くんに思う存分に抱きつけるとか、なんのご褒美なんだろ!)
私は知らなかった。サイドミラーにニヤけた私の顔がバッチリ映っていることに。ちゃっかりそれを見た成臣くんが、嬉しそうに笑いながら、バイクを運転していたことも――。
(動きやすい服装で当日逢おう)という指定を受けたので、メガネからコンタクトレンズに変更し、パンツルックにぺたんこ靴のいでたちで家を出る。
成臣くんの行きたい場所で、動きやすい服装をしなければならないってことは、アスレチック施設かなと、駅前にて考えにふけっているところに現れた、重低音のエンジン音を響かせた見慣れない一台の大型バイク。
「え゛?」
「よっ、待たせたな」
大型バイクから降り立ち、ヘルメットを外した成臣くんのめちゃくちゃカッコイイことこの上ない! 思わず変な声が出そうになった。
(大好きな人が白馬に跨ってやってきたんじゃなく、大型バイクで目の前に現れて、動揺しない女がいる? 臥龍岡先輩どうしよう! 好きって気持ちが、絶対に駄々漏れしちゃう!)
「なっ成臣くん、ば、バイクの免許もってたんだ、ぁ?」
問いかける声が、ところどころ震えてしまった。
「ああ、たまに遠出して写真撮影してたから」
真顔で言いながら、私をじっと見下ろす。
成臣くんの視線がどうにも気恥ずかしくて、俯いてやり過ごすしかなかった。だって自分の気持ちを、なんとかして隠さなければならない。
(――私たちはただの友達、ただの友達の関係なんだから!)
「とりあえずこれ着て」
心の中で友達を連呼する私に、成臣くんは着ていた革ジャンを手早く脱ぎ、私の肩に羽織らせる。
「成臣くんは大丈夫なの?」
恐るおそる訊ねつつ、成臣くんのぬくもりを感じる革ジャンに袖を通した。やっぱり男性ものはすごく大きい。ギリギリ指先が出る感じの萌え袖になる。体に伝わってくる成臣くんのぬくもりがじんわりあったかくて、にやけそうになった。
「俺は平気。走ってる途中で千草ちゃんが転げ落ちて、怪我したら困るから。それとこれ」
私が革ジャンを着たのをちゃんと確認してから、大きなヘルメットをズボッと被せられる。見た目よりそこまで重くないものの、それなりに閉塞感があった。
「千草ちゃん、そのままじっとしてて」
きちんと顎紐をとめてくれるときに、成臣くんの顔がものすごく近くにあって、そりゃあもう心臓が否応なしに高鳴る。
「これでよし。じゃあ次は、この出っ張りに片足をかけて跨って」
成臣くんに言われたとおりにバイクの出っ張りに足をかけながら、高さのあるシートに両手をついてなんとか跨った。
「ぷっ……」
「な、なに?」
ヘルメット越しだったけど、私の様子をまじまじと眺める成臣くんが、おかしそうに吹き出した声を、ハッキリ聞いた。
「俺を難なくベッドに押し倒したり、暴れる春菜を押さえつけてた千草ちゃんと、今の千草ちゃんが全然違うなって」
「だだだ、だってはじめてバイクに乗るのよ。戸惑うに決まってる」
バイクに跨る以上に、大好きな成臣くんが私に世話を焼いてくれることが戸惑いの原因だったりするけど、それは口に出してはいけない。
「革ジャン着てる姿、小さいコみたいでかわいい。とりあえず俺の腰に捕まってたら落ちないから」
クスクス笑った成臣くんもバイクに颯爽と跨り、エンジンをかける。いつ走り出すかわからないので、慌てて目の前にある腰にぎゅっと抱きついた。
(うっ、嬉しい! 大好きな成臣くんに思う存分に抱きつけるとか、なんのご褒美なんだろ!)
私は知らなかった。サイドミラーにニヤけた私の顔がバッチリ映っていることに。ちゃっかりそれを見た成臣くんが、嬉しそうに笑いながら、バイクを運転していたことも――。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
ささゆき細雪
恋愛
樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。
だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。
あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは……
幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!?
これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。
※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。
「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる