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恋愛クライシス 一ノ瀬成臣の場合
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「そんなことわかってる。でも彼女は旦那さんとうまくいってないみたいで、俺を好きになったって……。今は離婚の話し合いをしてるみたいなんだ」
するとアキラはおもしろくなさそうに、チッと舌打ちした。
「順番が逆になってること、成臣は気づいていないのか? おかしいとどうして思わない?」
目の前にある忌々しそうな顔が、自分のしてることが悪いものだというのを示している気がした。
「おかしい? どこが?」
どこがおかしいのかさっぱりわからず、首を傾げながら訊ねるしかない。
「10も年上で既婚者なら、なおさらだろ。きちんと段取りをつけるべきだって」
アキラが段取りと言ったところで、テーブルを拳で殴った。苛立ちまかせに殴った音が店内に響き渡り、ほかの客の視線を集める。
「段取り……?」
「常識的な話だ。相手がおまえを本気で好きなら、きちんと離婚してから付き合う。自分の身を綺麗にして、しがらみをなくした状態にするのが順番さ。成臣と付き合いながら、旦那と別れるための話し合い? ながらでだらだら付き合わされることを、なぜ疑問に思わないんだ!」
目の前にある厳つい顔がさらに険しくなり、告げられたセリフが胸に突き刺さる。
「成臣、目を覚ませ。絶対におかしいぞ。本当にその人妻は、旦那と離婚の話し合いをしてるのか?」
「してると思う。離婚の話を切り出したときに平手打ちされて、ウチに来たことがあったし」
俺の返答に、ちょっとだけ眉根を寄せて考えたアキラ。小さな瞳を細めながら、自分の頬を撫で擦る。
「平手打ちなら、俺が俺にすることができるけどな。つまり、誤魔化せるってことだ」
撫で擦っていた頬を軽く叩いて、みずから目の前で実践されても、俺としてはなにも言うことができなかった。
「…………」
「俺もおまえも、著名人のスクープを追いかけてるから、不倫の行く末だってわかってるだろ。わかってるのに、どうしてイバラの道に突き進むんだ」
「それは好きだから……」
「恋に目がくらみやがって。バカ成臣!」
アキラからほかにもくどくど注意を受けたけど、幸恵さんとの付き合いをやめるという気持ちにはなれなかった。反対されればされた分だけ、意地になったところがある。
それに彼女から与えられる心地いい想いをどうしても手放したくなくて、嫌なことを見ないようにしながら、幸恵さんと不倫を続けた。
するとアキラはおもしろくなさそうに、チッと舌打ちした。
「順番が逆になってること、成臣は気づいていないのか? おかしいとどうして思わない?」
目の前にある忌々しそうな顔が、自分のしてることが悪いものだというのを示している気がした。
「おかしい? どこが?」
どこがおかしいのかさっぱりわからず、首を傾げながら訊ねるしかない。
「10も年上で既婚者なら、なおさらだろ。きちんと段取りをつけるべきだって」
アキラが段取りと言ったところで、テーブルを拳で殴った。苛立ちまかせに殴った音が店内に響き渡り、ほかの客の視線を集める。
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目の前にある厳つい顔がさらに険しくなり、告げられたセリフが胸に突き刺さる。
「成臣、目を覚ませ。絶対におかしいぞ。本当にその人妻は、旦那と離婚の話し合いをしてるのか?」
「してると思う。離婚の話を切り出したときに平手打ちされて、ウチに来たことがあったし」
俺の返答に、ちょっとだけ眉根を寄せて考えたアキラ。小さな瞳を細めながら、自分の頬を撫で擦る。
「平手打ちなら、俺が俺にすることができるけどな。つまり、誤魔化せるってことだ」
撫で擦っていた頬を軽く叩いて、みずから目の前で実践されても、俺としてはなにも言うことができなかった。
「…………」
「俺もおまえも、著名人のスクープを追いかけてるから、不倫の行く末だってわかってるだろ。わかってるのに、どうしてイバラの道に突き進むんだ」
「それは好きだから……」
「恋に目がくらみやがって。バカ成臣!」
アキラからほかにもくどくど注意を受けたけど、幸恵さんとの付き合いをやめるという気持ちにはなれなかった。反対されればされた分だけ、意地になったところがある。
それに彼女から与えられる心地いい想いをどうしても手放したくなくて、嫌なことを見ないようにしながら、幸恵さんと不倫を続けた。
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