上 下
42 / 126
冴木学の場合

37

しおりを挟む
「綺麗、サイズもぴったりだよ。ありがとう!」

 顔の横に左手を掲げながら告げると、目の前で照れた顔して一瞥し、がっくりと俯いてしまう。

「学くん、どうしたの?」

「俺があげた指輪を嵌めた美羽の姿を見たら、なんていうか、込みあげるものがあって……」

「込みあげるもの?」

「だって、こんな日がくるとは思わなかったからさ。ときどき夢を見てる気分になる。どうにかなりそうなくらいのしあわせを感じつつも、その一方で不安に苛まれる。いつかは壊れてしまうんじゃないかって」

 いつもは優しく抱きしめる学くんの両腕が、私の体を痛いくらいに抱きしめた。

「学、バツイチの私ですが――」

 夢じゃないことを示すために、身動ぎして自分よりも大きな体に縋りつきながら、形のいい耳元に顔を寄せた。横目で私を見る学くんの面持ちは、なにを言うんだろうという不思議そうなものだった。

 そんな彼の期待に応えるべく、大きな声で告げてあげる。

「どうか私と最期まで添い遂げてくだしゃい!」

「美羽姉っ!」

 学くんの真似をして告白すると、真っ赤な顔でむくれた。そんな彼の左手を掴んで、薬指に口づけを落とす。

「私も学くんを、見える形で縛りつけたいな。誰にも捕られないように」

「大丈夫。捕られないように、うまいことさっさと逃げる」

「わかってないなぁ。学くんが髪を切ったことで、目鼻立ちがハッキリした分だけ、男前度があがってるんだよ。ナンパしてくださいって、アピールしてるみたい」

「アピールなんて、してるつもりはない」

「顔面凶器なんだよ?」

 笑いながら、目の前にある首筋にちゅっとしてあげる。皮膚に触れた唇が、学くんの体温があがったのを認識した。

「顔面凶器って、なんかもっといい表現なかったのかよ……」

「ふふっ、『美羽専用』ってプリントされた首輪でもつけてみる?」

 却下されることがわかってるセリフを言ってみたら、学くんは私の右手を掴み、自身の下半身に導く。

「ここにはすでに、見えないプリントがされてます」

「へぇそうなんだ」

 まじまじとそれを見つめて、大きくなってるところをてのひらで撫でなでしたら。

「頑張った俺に、ご褒美がほしいなぁ。みたいな?」

「わかった。それじゃあ晩ごはん作ってあげるね」

 体に巻きついてる学くんの両腕をぐいっと押し除けて、腰をあげかけたら、勢いよく引き戻される。そのままベッドの上に、うつ伏せで寝転がってしまった。私が逃げないようにするためか、学くんは素早く跨って、後ろから抱きしめる。

「俺のほしいものがわかってるくせに、わざとそうやってイジワルするんだもんなぁ。美羽姉って、本当に厄介な恋人だよ」

「嫌い?」

「焦らされても好き、すっごく好き。だからさ、ね? 頭痛治ってからでいいから、ちょうだい?」

 すりりと私の頭に頬擦りしながらも、お尻に下半身を擦りつける恋人に、なんて言おうか迷ってしまう。きちんと私の体調に配慮して交渉するところなんて、本当にできすぎだと思うから。

「学くん、愛してる」

 学くんの匂いがするシーツに触れる頬が、なんだかくすぐったい。まるで学くんと顔を寄せ合っているみたいな感じだった。

「俺も美羽を愛してる。その想いはずっと変わらない」

「だったらその愛で、今すぐ私を溺れさせて。いっぱい愛してほしい」

 私のおねだりに、学くんは体を移動させて横たわり、顔を寄せて口づけする。

「美羽が怖い思いをしたのを忘れるくらいに、俺で溺れさせてあげる……」

 艶っぽい声で囁かれた言葉どおり、その日の夜は学くんのすべてを使って見事に喘がされた上に、深く溺れたのだった。

(作者より)

 普通の作者なら、ここで終わります。愛でたし愛でたしのシーンですから。
駄菓子かし! じゃなくてだがしかし、相沢は鉄槌作者とか制裁作者と呼ばれているので、このままでは終わりません。

 ほら、お尻ペンペンしなきゃならない奴らが、いるじゃあないですか! なので悦んでソイツらを鉄槌すべく、お話が進みます。

♪今から一緒にぃ、これから一緒にぃ、殴りに行こうか!♪ という感じで読んでもらえたら嬉しいです。制裁シーンのページで、Pコメントにてヤジを飛ばしてもらえると、鉄槌に見えないパワーが加えられますよwww お楽しみに!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

雨音。―私を避けていた義弟が突然、部屋にやってきました―

入海月子
恋愛
雨で引きこもっていた瑞希の部屋に、突然、義弟の伶がやってきた。 伶のことが好きだった瑞希だが、高校のときから彼に避けられるようになって、それがつらくて家を出たのに、今になって、なぜ?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

完結*三年も付き合った恋人に、家柄を理由に騙されて捨てられたのに、名家の婚約者のいる御曹司から溺愛されました。

恩田璃星
恋愛
清永凛(きよなが りん)は平日はごく普通のOL、土日のいずれかは交通整理の副業に励む働き者。 副業先の上司である夏目仁希(なつめ にき)から、会う度に嫌味を言われたって気にしたことなどなかった。 なぜなら、凛には付き合って三年になる恋人がいるからだ。 しかし、そろそろプロポーズされるかも?と期待していたある日、彼から一方的に別れを告げられてしまいー!? それを機に、凛の運命は思いも寄らない方向に引っ張られていく。 果たして凛は、両親のように、愛の溢れる家庭を築けるのか!? *この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 *不定期更新になることがあります。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...