32 / 126
冴木学の場合
27
しおりを挟む
♡♡♡
学くんと穏やかな?夜を迎えて、元気を分けてもらった数日後、いつものように午前中の業務を普通にこなし、お昼ご飯を食べた。
お化粧直しを終えてトイレから出ると、なぜか目の前に堀田課長が現れる。
(――もしかして、私がトイレから出てくるのを待っていた!?)
「小野寺さん、話があるんだ」
「なんでしょうか?」
出待ちされていたことに疑問を感じていると、深刻そうな表情で訊ねられる。
「ちょっと込み入った話になるから、そこのミーティングルームで話をしてもいい?」
周囲がガラス張りになっているところなので、ふたりきりになっても大丈夫だろうと判断。話を聞くために堀田課長のあとに続いて、ミーティングルームに入った。
「小野寺さんさ、離婚するとき、弁護士を使ったりしたのかな?」
突然なされた質問に、少しだけ面食いながら答える。
「いえ、そういうのは……」
「恥ずかしい話なんだけど昨日の夜、妻に迫ったら断られちゃってね。『アンタと結婚したのは、お金が目当てだったの。下手くそなくせに、手を出してこないでよ』なんて言われてしまってさ。僕を好きで結婚してくれたんじゃなかったことが、思った以上にショックだったんだ」
「そうですか……」
夫婦間のダークな話に、心がずんと重くなる。学くんに元気を分けてもらっていなかったら、もっと沈んでいたかもしれない。それくらい、あまり聞きたくない内容だった。
「妻が僕に気がないのに、このまま結婚生活を続けていくのが、どうにもつらくなって。それで小野寺さんに、相談してみようと思ったんだけど……」
肩を落としながら、しょんぼりする姿を目の当たりにして、なにかできることはないかと考えてみる。普段仕事でお世話になっていることもあるし、私が困ったときには、一番に手助けしてくれたのが堀田課長だったから、なおさら助けてあげなければと思った。
「私が離婚したときは、夫の浮気で離婚したんです。あのときは話し合いとか本当にできない状態で、一方的に慰謝料と離婚届を突きつけられた状態だったので、弁護士は使えませんでした。なので堀田課長が考えるような、離婚にはならないかと」
俯いて過去のことを口にした途端に、堀田課長は慌てふためいた。
「ごめん! ああ僕は自分のことばかり考えて、小野寺さんのことを考えてあげることができなかった。つらいことを思い出させてしまって、本当に悪かった」
「大丈夫です、もう終わったことなので」
ものすごく恐縮して済まなそうにされてしまい、今度はわたしが困る番。両手でまぁまぁというジェスチャーを駆使し、大丈夫なことをアピールした。
「本当にごめん、お詫びさせて。そうだな、部署のみんなも誘って、今度飲みに行こうか」
「はい……」
「プライベートなことを無理に聞いて、本当に悪かったね。たまにでいいから、僕の愚痴を聞いてもらえる?」
頭を深く下げられて頼まれてしまったら、断ることなんてできない。それに話を聞くぐらいなら、私にもできることだった。
「いいですよ。私はアドバイスなんてできないので愚痴くらい、いくらでも聞きます」
「優しいね、小野寺さんは。ありがとう」
このことがキッカケで、ときどき堀田課長の話を聞く羽目になってしまったのだった。
学くんと穏やかな?夜を迎えて、元気を分けてもらった数日後、いつものように午前中の業務を普通にこなし、お昼ご飯を食べた。
お化粧直しを終えてトイレから出ると、なぜか目の前に堀田課長が現れる。
(――もしかして、私がトイレから出てくるのを待っていた!?)
「小野寺さん、話があるんだ」
「なんでしょうか?」
出待ちされていたことに疑問を感じていると、深刻そうな表情で訊ねられる。
「ちょっと込み入った話になるから、そこのミーティングルームで話をしてもいい?」
周囲がガラス張りになっているところなので、ふたりきりになっても大丈夫だろうと判断。話を聞くために堀田課長のあとに続いて、ミーティングルームに入った。
「小野寺さんさ、離婚するとき、弁護士を使ったりしたのかな?」
突然なされた質問に、少しだけ面食いながら答える。
「いえ、そういうのは……」
「恥ずかしい話なんだけど昨日の夜、妻に迫ったら断られちゃってね。『アンタと結婚したのは、お金が目当てだったの。下手くそなくせに、手を出してこないでよ』なんて言われてしまってさ。僕を好きで結婚してくれたんじゃなかったことが、思った以上にショックだったんだ」
「そうですか……」
夫婦間のダークな話に、心がずんと重くなる。学くんに元気を分けてもらっていなかったら、もっと沈んでいたかもしれない。それくらい、あまり聞きたくない内容だった。
「妻が僕に気がないのに、このまま結婚生活を続けていくのが、どうにもつらくなって。それで小野寺さんに、相談してみようと思ったんだけど……」
肩を落としながら、しょんぼりする姿を目の当たりにして、なにかできることはないかと考えてみる。普段仕事でお世話になっていることもあるし、私が困ったときには、一番に手助けしてくれたのが堀田課長だったから、なおさら助けてあげなければと思った。
「私が離婚したときは、夫の浮気で離婚したんです。あのときは話し合いとか本当にできない状態で、一方的に慰謝料と離婚届を突きつけられた状態だったので、弁護士は使えませんでした。なので堀田課長が考えるような、離婚にはならないかと」
俯いて過去のことを口にした途端に、堀田課長は慌てふためいた。
「ごめん! ああ僕は自分のことばかり考えて、小野寺さんのことを考えてあげることができなかった。つらいことを思い出させてしまって、本当に悪かった」
「大丈夫です、もう終わったことなので」
ものすごく恐縮して済まなそうにされてしまい、今度はわたしが困る番。両手でまぁまぁというジェスチャーを駆使し、大丈夫なことをアピールした。
「本当にごめん、お詫びさせて。そうだな、部署のみんなも誘って、今度飲みに行こうか」
「はい……」
「プライベートなことを無理に聞いて、本当に悪かったね。たまにでいいから、僕の愚痴を聞いてもらえる?」
頭を深く下げられて頼まれてしまったら、断ることなんてできない。それに話を聞くぐらいなら、私にもできることだった。
「いいですよ。私はアドバイスなんてできないので愚痴くらい、いくらでも聞きます」
「優しいね、小野寺さんは。ありがとう」
このことがキッカケで、ときどき堀田課長の話を聞く羽目になってしまったのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説


練習なのに、とろけてしまいました
あさぎ
恋愛
ちょっとオタクな吉住瞳子(よしずみとうこ)は漫画やゲームが大好き。ある日、漫画動画を創作している友人から意外なお願いをされ引き受けると、なぜか会社のイケメン上司・小野田主任が現れびっくり。友人のお願いにうまく応えることができない瞳子を主任が手ずから教えこんでいく。
「だんだんいやらしくなってきたな」「お前の声、すごくそそられる……」主任の手が止まらない。まさかこんな練習になるなんて。瞳子はどこまでも甘く淫らにとかされていく
※※※〈本編12話+番外編1話〉※※※


鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
完結*三年も付き合った恋人に、家柄を理由に騙されて捨てられたのに、名家の婚約者のいる御曹司から溺愛されました。
恩田璃星
恋愛
清永凛(きよなが りん)は平日はごく普通のOL、土日のいずれかは交通整理の副業に励む働き者。
副業先の上司である夏目仁希(なつめ にき)から、会う度に嫌味を言われたって気にしたことなどなかった。
なぜなら、凛には付き合って三年になる恋人がいるからだ。
しかし、そろそろプロポーズされるかも?と期待していたある日、彼から一方的に別れを告げられてしまいー!?
それを機に、凛の運命は思いも寄らない方向に引っ張られていく。
果たして凛は、両親のように、愛の溢れる家庭を築けるのか!?
*この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
*不定期更新になることがあります。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる