恋のマッチアップ

相沢蒼依

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恋のマッチアップ番外編 膠着状態2

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 大好きな笹良の苛立っている感じが、端的に交わされる会話が進むごとに伝わってきたからこそ、俺なりに気を遣って場を和ませようとした。自分の素直な気持ちのすべてを吐露した俺を心配して、手首を掴んだ笹良の行為が嬉しかった。

 触れられたところから伝わる笹良の熱で、どうにかなりそうだったのに、ほどなくしてあっけなく外されてしまった手首を、意気消沈しながら掴んだ。そこから感じとれるものは、もちろんなにもなく――。

「笹良……」

 勝手にしろと捨て台詞を吐かれながら顔を背けられた時点で、目の前が真っ暗になる。

 もうひとりの俺が慌てふためきながら笹良の背中に指をさし、「追いかけて謝り倒せ!」と喚いていたが、体育館の床に根をおろしたように両足がピクリとも動かなかった。

(笹良は悪くないのに、自分の非を認めたくなくて、アイツのせいにした)

「ごめんな、笹良……」

 妄想にとらわれるのは、それだけプレイに集中していない証拠だ。エロい格好で俺を誘う笹良の魔の手をかいくぐり、きっちりゴールを決めなければならない。

「これって笹良のイップスよりも、超難題じゃね?」

 ひとりごとを呟いて、頭を抱えながらしゃがみ込む。そのタイミングで、集合を促す笛の音が響いた。ふらついて立ち上がり、集まってるメンバーの最後尾に群れる。

 視界の先に、大好きな笹良の後頭部が目に留まった。

 周りのヤツと違い、柔らかそうな髪質をしていて、艶のあるその黒髪からいい匂いがこちらに漂う気がしたので、穴が開く勢いでじっと観察してみる。

 生真面目な笹良とは反比例した、寝癖のついただらしない襟足の髪。ちょっと動くと揺らめくその様子に、可愛い!の言葉を連呼したくなる。

(ボールばかり目で追っていたけど、笹良の背中を追いかけたら、襟足がひょこひょこ動くさまが見られるんだろうな♡)

 そう考えついて、反射的にゾッとした。自分の思考に、ヤバみを感じずにはいられない。

 そのことによりバスケ以上に、笹良のことが好きになってしまったのを、思いっきり自覚したのだけれど――。

 俺は目をつぶり、困難な自分のイップスについての攻略を考えた。これ以上笹良に嫌われないようにしなければと、必死になってあらゆる手を思考する。
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