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第3章:恋人キブン
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。.:*・゚ .。.:*・゚ 。.:*・゚ .。.:*・゚
その後、ケンジさんとは本当の恋人のように時間を過ごした。
仕事が終わってから待ち合わせして、食事をしたり、休みの日は映画を見たり、テーマパークではしゃいだり。あっという間の二週間が過ぎ去ることで、彼との契約があと少しで終わることに、言い知れぬ寂しさを覚える。
(――今夜、残りの25万円をもらった時点で、ケンジさんとは逢えなくなっちゃうんだなぁ)
待ち合わせに指定された街中のファーストフード店の前に佇んでいると、スマホがLINEを知らせる。ポケットから取り出して、メッセージを読んでみると――。
『21時ジャストに、目の前にあるビルを見てほしい!』
というのわけのわからないケンジさんから指示が、スマホに表記されていた。
「目の前のビル?」
時刻は20時59分なので、見過ごすことはなかったものの、なにが起こるのかさっぱりわからなかった。なので目の前にある時計台がついているビルを眺めてみても、時計の部分がライトアップされているのと、大型ビジョンに映し出されている広告は、ネットでよく見るものが放映されていた。
ぼんやりとその広告を眺めていると、やがて時計台が21時を知らせる鐘を鳴らす。すると大型ビジョンに映っていた広告が変なところでブチ切られ、ぱっと画面が切り替わった。
真っ白い背景を背に、大きなバラの花束を持ったケンジさんが、大型ビジョンに映し出される。
「ええっ!?」
思わず変な声をあげてしまい、慌てて口元を押さえる。
『綾香ちゃん、とはその……きっかけが複雑すぎて、いろんな事情が絡んだせいで、なかなか素直な気持ちを伝えることができなかったんだけど。あー……』
視線を右往左往して落ち着かない様子が彼らしくて、思わず笑ってしまった。
『うー、いっ一緒に過ごした時間は、とても短いものだった。だけど短くても濃度っていうか、限られた時間を一緒に過ごすことができたから、愛しさがつのっていったというか。うん、それで俺は決心がついたんだ。契約が満了しても、俺は綾香ちゃんと付き合いたい。俺は綾香ちゃんを愛してます!』
カメラに真っ直ぐ顔を向けて、真剣なまなざしで告げられたセリフに、道行く若い人は「ヒューヒュー!」なんて囃し立てたり、指を差してクスクス笑ったカップルが目の前を通過していく。
大型ビジョン越しに見つめ合った私たちの視線は、不意に途切れた。ブチ切られた広告がはじまったせいで。
「どっ、どうすればいいの? ケンジさん……」
持っているスマホで連絡しようとしかけた刹那、ガサッという音が耳に聞こえた。横を見ると大型ビジョンで映し出された様相のケンジさんがそこにいて、バラの花束で顔を隠して現れる。
「ケンジさんっ!」
「綾香ちゃん、近づかないで。そのまま返事をきかせてほしい」
駆け寄ろうとした私をとめた、ケンジさんの言葉。相変わらず顔を隠されているので、どんな表情なのかまったくわからない。
その後、ケンジさんとは本当の恋人のように時間を過ごした。
仕事が終わってから待ち合わせして、食事をしたり、休みの日は映画を見たり、テーマパークではしゃいだり。あっという間の二週間が過ぎ去ることで、彼との契約があと少しで終わることに、言い知れぬ寂しさを覚える。
(――今夜、残りの25万円をもらった時点で、ケンジさんとは逢えなくなっちゃうんだなぁ)
待ち合わせに指定された街中のファーストフード店の前に佇んでいると、スマホがLINEを知らせる。ポケットから取り出して、メッセージを読んでみると――。
『21時ジャストに、目の前にあるビルを見てほしい!』
というのわけのわからないケンジさんから指示が、スマホに表記されていた。
「目の前のビル?」
時刻は20時59分なので、見過ごすことはなかったものの、なにが起こるのかさっぱりわからなかった。なので目の前にある時計台がついているビルを眺めてみても、時計の部分がライトアップされているのと、大型ビジョンに映し出されている広告は、ネットでよく見るものが放映されていた。
ぼんやりとその広告を眺めていると、やがて時計台が21時を知らせる鐘を鳴らす。すると大型ビジョンに映っていた広告が変なところでブチ切られ、ぱっと画面が切り替わった。
真っ白い背景を背に、大きなバラの花束を持ったケンジさんが、大型ビジョンに映し出される。
「ええっ!?」
思わず変な声をあげてしまい、慌てて口元を押さえる。
『綾香ちゃん、とはその……きっかけが複雑すぎて、いろんな事情が絡んだせいで、なかなか素直な気持ちを伝えることができなかったんだけど。あー……』
視線を右往左往して落ち着かない様子が彼らしくて、思わず笑ってしまった。
『うー、いっ一緒に過ごした時間は、とても短いものだった。だけど短くても濃度っていうか、限られた時間を一緒に過ごすことができたから、愛しさがつのっていったというか。うん、それで俺は決心がついたんだ。契約が満了しても、俺は綾香ちゃんと付き合いたい。俺は綾香ちゃんを愛してます!』
カメラに真っ直ぐ顔を向けて、真剣なまなざしで告げられたセリフに、道行く若い人は「ヒューヒュー!」なんて囃し立てたり、指を差してクスクス笑ったカップルが目の前を通過していく。
大型ビジョン越しに見つめ合った私たちの視線は、不意に途切れた。ブチ切られた広告がはじまったせいで。
「どっ、どうすればいいの? ケンジさん……」
持っているスマホで連絡しようとしかけた刹那、ガサッという音が耳に聞こえた。横を見ると大型ビジョンで映し出された様相のケンジさんがそこにいて、バラの花束で顔を隠して現れる。
「ケンジさんっ!」
「綾香ちゃん、近づかないで。そのまま返事をきかせてほしい」
駆け寄ろうとした私をとめた、ケンジさんの言葉。相変わらず顔を隠されているので、どんな表情なのかまったくわからない。
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