恋の撃鉄(ハンマー)―挨拶からはじまる恋―

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
10 / 26
ノンケの先輩を堕とすためのミッション♡

しおりを挟む
 心の中で親指を立てた俺を、新人はゾッとするような黒い笑みを浮かべて見つめる。

「先輩はとても優しい方ですから、僕の面倒を見ないなんてことをしませんよね?」

「え……?」

 新人は膝の上に置いたままのスマホに触れ、俺に注目させる感じで撫で擦った。

「先輩は僕の面倒を見る義務があること、お忘れなく♡ はい、お箸です!」

 普通に微笑んだ新人は、押しつけるように割り箸を手渡す。仕方なくそれを受け取り、注がれる視線を振り切るために顔を前に向けた。花園常務がお重の蓋を開けたのを確認後、同じように目の前に置かれたお重の蓋を開ける。

「あっ、いけない。すみません、お茶淹れてきますね」

「だったら俺が――」

 ローテーブルに箸を置いて腰を上げかけると、目の前にいらっしゃる花園常務が俺に声をかける。

「島田くん、こういうのも息子にやらせてくれ。本来なら食事の前に、気づかなければいけないことだろう?」

「あ、はい。そうですね」

 腰をおろしたタイミングで、新人が部屋を出て行った。その後も花園常務と他愛のない会話を続けている最中に、温かいお茶を持参した新人が戻ってきて、それなりに和んだ雰囲気で会食をすることができた。

(なんだかんだ言いつつも、花園常務が用意したうな重というエサに食いついた俺は、いいように利用される社員になり果ててしまった……)

 後片付けに勤しむ新人が追いかけてこないように、早足で部署に戻る。これ以上問題児と接触して、神経衰弱しないように施さなければならない。

「とは言え、合同プロジェクトが開始されたら、四六時中一緒にいることになるんだよな」

  ぽつりと呟いた瞬間あることに気づき、上着のポケットに入れっぱなしのスマホを取り出した。そして新人の面倒を見ている同期の林に、アプリで連絡してみる。

『ちょっと聞きたいことがあるんだけど、今日時間あるか?』

 最速で問題解決したかった俺は、今日という期限を勝手に指定して、新人の面倒を見ている林に訊ねた。昼休みが終わっていたのもあり、既読は着かなかったが、仕事をしながら連絡を待つ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

ふれて、とける。

花波橘果(はななみきっか)
BL
わけありイケメンバーテンダー×接触恐怖症の公務員。居場所探し系です。 【あらすじ】  軽い接触恐怖症がある比野和希(ひびのかずき)は、ある日、不良少年に襲われて倒れていたところを、通りかかったバーテンダー沢村慎一(さわむらしんいち)に助けられる。彼の店に連れていかれ、出された酒に酔って眠り込んでしまったことから、和希と慎一との間に不思議な縁が生まれ……。  慎一になら触られても怖くない。酒でもなんでも、少しずつ慣れていけばいいのだと言われ、ゆっくりと距離を縮めてゆく二人。  小さな縁をきっかけに、自分の居場所に出会うお話です。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

処理中です...