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第5章:生意気な後輩
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ドラックストアに着くまでの間、有坂と一言も会話がなかったけれど、会社を出たときよりも友好関係が築けている気がした。隣にいる有坂の表情が、どこか穏やかに見えるから。
「兵藤さん、どこのメーカーのものを買ったんですか?」
いろんなメーカーの洗顔フォームが売られているところに到着した途端に、有坂から質問が飛んできた。
「えっとな、これを買ったんだ。どの肌のものを買えばいいか分からんかったから、とりあえず普通肌用を選んでみたんやけど」
購入した商品に指を差しながら有坂を見たら、いきなり兵藤の前髪を片手で上げてから、やわやわと顔に触れてきた。
「な、なんや?」
「普通肌のものを使って、この肌の状態ということは……。大丈夫だと思います」
額や鼻の頭を触って何かを確認したり、他にもまじまじと顔を凝視するせいで、頬が自然と熱くなった。
「……どうしてそこで顔を赤くさせるんですか。俺、変なことしてませんよ」
有坂は慌てた様子で兵藤から手を離し、距離をとって視線を彷徨わせた。
「だって、こないな風にじっと見つめられたら、恥ずかしくなるに決まっとるやろう」
「それは、肌の状態を確かめるのに仕方なく!! ちゃんと見なきゃ確認できないんですから、こっちが困るような、そんな態度をしないでくださぃ……」
文句を言った有坂の頬も、どんどん赤くなる。
(洗顔フォームを売っとる場所で男がふたり、何で顔を赤くしとるのやら)
「済まん……。深い意味がないのに、あのぅ」
「深い意味?」
「ややっ、気にせぇへんでくれ。あのさ有坂が使うてる洗顔フォームって、どれになるんや? いつも肌の調子が良さそうやな」
ぽろっと告げた言葉に反応し、有坂が猜疑心を含んだ眼差しで見てきたので、慌てて話題を変えるしかなかった。
「俺のはですね、一番端にあるこれなんです。同じ普通肌のものなのに、メーカーで違いが出るものなんですね」
有坂は兵藤が買ったものと自分が使っているものを手に取り、裏側に記載されている成分表を比べ始める。唐突な話題転換作戦が功を奏して、兵藤は胸を撫で下ろした。
「とりあえず今、使うてるのを全部使い切ってから、有坂が使うとる物にチェンジして使い比べてみようっと。これ、買いに行ってくる」
真剣に見比べている後輩の横顔に告げて、レジに向かうことにした。
「ここで待っていますね」
兵藤の背中に向かって明言された口調は、いつもとは違う柔らかいものだったので、レジに向かう足が自然と早いものになった。
会社でもこんな感じで有坂と話が盛り上がることができたら、変な苦労をせずに済むのになと、思わずにはいられなかった。
ドラックストアに着くまでの間、有坂と一言も会話がなかったけれど、会社を出たときよりも友好関係が築けている気がした。隣にいる有坂の表情が、どこか穏やかに見えるから。
「兵藤さん、どこのメーカーのものを買ったんですか?」
いろんなメーカーの洗顔フォームが売られているところに到着した途端に、有坂から質問が飛んできた。
「えっとな、これを買ったんだ。どの肌のものを買えばいいか分からんかったから、とりあえず普通肌用を選んでみたんやけど」
購入した商品に指を差しながら有坂を見たら、いきなり兵藤の前髪を片手で上げてから、やわやわと顔に触れてきた。
「な、なんや?」
「普通肌のものを使って、この肌の状態ということは……。大丈夫だと思います」
額や鼻の頭を触って何かを確認したり、他にもまじまじと顔を凝視するせいで、頬が自然と熱くなった。
「……どうしてそこで顔を赤くさせるんですか。俺、変なことしてませんよ」
有坂は慌てた様子で兵藤から手を離し、距離をとって視線を彷徨わせた。
「だって、こないな風にじっと見つめられたら、恥ずかしくなるに決まっとるやろう」
「それは、肌の状態を確かめるのに仕方なく!! ちゃんと見なきゃ確認できないんですから、こっちが困るような、そんな態度をしないでくださぃ……」
文句を言った有坂の頬も、どんどん赤くなる。
(洗顔フォームを売っとる場所で男がふたり、何で顔を赤くしとるのやら)
「済まん……。深い意味がないのに、あのぅ」
「深い意味?」
「ややっ、気にせぇへんでくれ。あのさ有坂が使うてる洗顔フォームって、どれになるんや? いつも肌の調子が良さそうやな」
ぽろっと告げた言葉に反応し、有坂が猜疑心を含んだ眼差しで見てきたので、慌てて話題を変えるしかなかった。
「俺のはですね、一番端にあるこれなんです。同じ普通肌のものなのに、メーカーで違いが出るものなんですね」
有坂は兵藤が買ったものと自分が使っているものを手に取り、裏側に記載されている成分表を比べ始める。唐突な話題転換作戦が功を奏して、兵藤は胸を撫で下ろした。
「とりあえず今、使うてるのを全部使い切ってから、有坂が使うとる物にチェンジして使い比べてみようっと。これ、買いに行ってくる」
真剣に見比べている後輩の横顔に告げて、レジに向かうことにした。
「ここで待っていますね」
兵藤の背中に向かって明言された口調は、いつもとは違う柔らかいものだったので、レジに向かう足が自然と早いものになった。
会社でもこんな感じで有坂と話が盛り上がることができたら、変な苦労をせずに済むのになと、思わずにはいられなかった。
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