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第2章:魅惑的な先輩――
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AOグループ――大手の不動産会社として、全国的に名の知れた会社の傘下に入っている地元の企業に、無事就職した新入社員が、それぞれの部署に配属された。
「今日からこちらでお世話になります、有坂 卓巳(ありさか たくみ)と申します。精一杯頑張りますので、ヨロシクお願いします!」
配属先である会計課のフロアの中央に立ち、緊張感を漂わせながら挨拶を終えた新入社員をあたたかく出迎えるべく、20名強の先輩社員が盛大に拍手をした。ひと足先に挨拶を終えた有坂が丁寧に深く頭を下げてから、隣にいる同期の女子社員青山も、同じような挨拶を口にする。
大勢を前にして、緊張する新人ふたりの傍に佇んでいた大平課長が、にこやかな笑顔を浮かべた。
「これから宜しくね。それから君たち新人の指導をしてくれるのは、三年先輩の兵藤くんだから」
大平課長が、それまで立っていた場所のすぐ横にあるデスクにいた青年の腕を音もなく掴み上げ、新人たちの目の前へと突き出した。
「うぉぇっ!? お、俺が新人の指導っ!?」
誰が指導をするのか決めていなかったのか、それまで和やかに自分たちを見ていた兵藤と呼ばれた先輩が、ひどく慌てふためいた様子で、大平課長の顔を見つめる。見つめるというよりも、明らかに目が怒っているように、有坂の目には映った。たとえるなら、めんどくさい新人を押し付けるなという感じだった。
「青山さんは僕のような中年親父よりも、兵藤くんのようなイケメンに仕事を教えてもらったほうが、気合いが入って覚えやすいでしょ?」
にっこりと柔らかく微笑んで、スーツの上からでも分かる、丸く突き出ているお腹を撫で擦りながら、これでもかと中年オヤジぶりをアピールする姿に、訊ねられた青山の口元があからさまに引きつった。
「えっとぉ……」
口ごもりながら困った表情を浮かべて、隣にいる有坂に視線を飛ばす。すると大平課長も導かれるように、青山の隣を見た。ふたりの視線を受けて、有坂の緊張感がじわじわと高まった。
「どうだろうか。有坂くんとしてもカッコイイ兵藤くんの仕草とか間近で見てさ、イケメン度を上げたりしたくない?」
「そう、ですね……。間近で見てカッコよくなれるのなら、なりたいかも? です……」
(それってすでに、仕事と関係ない話になっているような気が――)
大平課長の隣にいる兵藤を恐るおそる見ると、何言ってんだテメェという顔をしていた。先ほどよりも目が怒っていたので、その視線から逃れるべく、急いで俯いてやり過ごす。
「今日からこちらでお世話になります、有坂 卓巳(ありさか たくみ)と申します。精一杯頑張りますので、ヨロシクお願いします!」
配属先である会計課のフロアの中央に立ち、緊張感を漂わせながら挨拶を終えた新入社員をあたたかく出迎えるべく、20名強の先輩社員が盛大に拍手をした。ひと足先に挨拶を終えた有坂が丁寧に深く頭を下げてから、隣にいる同期の女子社員青山も、同じような挨拶を口にする。
大勢を前にして、緊張する新人ふたりの傍に佇んでいた大平課長が、にこやかな笑顔を浮かべた。
「これから宜しくね。それから君たち新人の指導をしてくれるのは、三年先輩の兵藤くんだから」
大平課長が、それまで立っていた場所のすぐ横にあるデスクにいた青年の腕を音もなく掴み上げ、新人たちの目の前へと突き出した。
「うぉぇっ!? お、俺が新人の指導っ!?」
誰が指導をするのか決めていなかったのか、それまで和やかに自分たちを見ていた兵藤と呼ばれた先輩が、ひどく慌てふためいた様子で、大平課長の顔を見つめる。見つめるというよりも、明らかに目が怒っているように、有坂の目には映った。たとえるなら、めんどくさい新人を押し付けるなという感じだった。
「青山さんは僕のような中年親父よりも、兵藤くんのようなイケメンに仕事を教えてもらったほうが、気合いが入って覚えやすいでしょ?」
にっこりと柔らかく微笑んで、スーツの上からでも分かる、丸く突き出ているお腹を撫で擦りながら、これでもかと中年オヤジぶりをアピールする姿に、訊ねられた青山の口元があからさまに引きつった。
「えっとぉ……」
口ごもりながら困った表情を浮かべて、隣にいる有坂に視線を飛ばす。すると大平課長も導かれるように、青山の隣を見た。ふたりの視線を受けて、有坂の緊張感がじわじわと高まった。
「どうだろうか。有坂くんとしてもカッコイイ兵藤くんの仕草とか間近で見てさ、イケメン度を上げたりしたくない?」
「そう、ですね……。間近で見てカッコよくなれるのなら、なりたいかも? です……」
(それってすでに、仕事と関係ない話になっているような気が――)
大平課長の隣にいる兵藤を恐るおそる見ると、何言ってんだテメェという顔をしていた。先ほどよりも目が怒っていたので、その視線から逃れるべく、急いで俯いてやり過ごす。
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