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魔女との遭遇
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『混合のワクチンをあと2回しなきゃならないので、暇を見つけて動物病院に行ってくださいね』
と購入したペットショップの店員さんに言われたので、病院に行く前の週に近所にある動物病院に電話をして予約をした。
裕次郎を飼っているときに何度も動物病院に行っている関係で、このシステムを知っていた。人間のように気軽においそれと行けないのがつらい( 一一)
ちなみに小春用に購入したキャリーケースは、柔らかい仕様にした。
裕次郎のときにプラスチック製品にしたせいで、中に入れるときにすっげぇ苦労したのだ。
まず部屋の中央にキャリーケースを置くなり、病院に行くことを察知して、狭いところに逃げ込まれる。その前に首根っこを素早く掴んでケースに入れるわけなんだが――四つ足を使って入り口付近に踏ん張って、絶対に入らないを全身でアピールしたのである。
「くそっ、こんにゃろ、入りやがれ!」
「にゃっふー! ぎょえー」
というやり取りがあり、手の空いてる家族(大抵妹だな)の助けを借りて、何とか中に押し込んだのであった。
普段、裕次郎の鳴き声を聞かないため、あまりの声の大きさにビビッて力が入らなかったのは、ここだけの話だったりする。
小さい動物や子供に対しての力加減って、本当に分からない(現在進行形)
そんな経緯があって裕次郎のときに苦労したので身構えていたものの、こっちの熱意をスルーする感じでほいほい自分からケースに入っていく後姿に、ありがとうと呟いた。
-10度の極寒の中をてくてく歩き、7分後に到着した。予約した時間まで20分も余裕があったけど、思いきって扉を開けて中に入る。
「こにちはー」という変な日本語を口走ってしまったのは、目に留まった人物の姿に驚いたせい。
獣医と思われる妙齢の女性がいたんだ。背中まで伸ばした髪を、一つに束ねているのはいい。だがその髪色が、ラブライブ!に出てくる園田 海未やToLOVEるに出てくる西連寺 春菜に近い感じの真っ青だったのである。
『2.5次元までなら許せるけど、これはちょっと! 魔女としか言えない』
心の中にいるもう一人の自分が叫んでも、その衝撃が伝わるわけがなく、帰りたいけれど引き返せないもどかしさを抱えながら、静々と中に入った。
「予約していた者ですが――」
「あ、ワクチンの予約をした方ね。ワンちゃんをここに出してください」
助手と思しき妙齢の女性に告げられたので、腰の高さよりもちょっとだけ高いところにある診察台にキャリーケースを置き、チャック式になっている扉を手早く開けた。
自分が知っている動物病院との違いに、緊張しまくった尚史の雰囲気を感じ取ったのか、小春はケースの奥のほうで体を縮こませていた。
これが家ならキャリーケースをひっくり返して出すところだが、そんな手荒な真似をして魔女に叱られたらおっかないので、わしっと喉首を掴み、強引な形でその場に引きずり出しちゃった。
本当は前足を掴もうとしたの。でもするりと逃げられてしまったので、可哀そうだけど仕方なく首を掴んじゃったというわけ。
(裕次郎なら出した瞬間におしっこチビっていたけど、コイツはどうするのかなぁ)
なぁんてことを考えつつ、助手のおばちゃんに小春を手渡した。
「ちょっといい? 名前は?」
これから何をされるんだろうと小春を見つめていたところに魔女から質問され、小春の名前を告げた。
「それで、患畜の名前は?」
「ヒッ! すんませんっ、さっきのが患畜の名前ですぅ」
心の中でスライディング土下座をした自分。結構恥ずかしかった。
その後、自分の名前を告げて魔女にペコペコ頭を下げてから、診察台に視線を移した。
そこにはいつの間にか小さな体重計が置かれていて、小春を乗せようとしている瞬間だった。
これと同じような体重計の上に薄い布が敷かれていて、その上でびちょちょちょ~と結構激しくお漏らしをした小春。
「すんませんっ、精密機械の上で何ということを!」
オーマイガーと頭を抱えた尚史を尻目に、出しきった快感を示しているのか、小春は体重計の上で前足をクロスさせて大人しく立っていた。
気を取り直して助手のおばちゃんがおしっこをふき取り、ふたたび計測したら1.5キロの重さがあった。
現在実家で飼っている雑種猫の杏(♂)が5.5キロと聞いていたので、小さいなぁとしみじみ思ったときだった。
「餌、どこのメーカーのものをあげてるの?」
傍にやってきた魔女に訊ねられたのだが、餌付けしているのが娘だったため、さーっぱりそんなもんは分からないぞとビビりながら「覚えていないっす」と素直に答えた。
「やっぱりね。このコ、どこで買ったの?」
小春を手早く触診しながら他にもいろいろ矢継ぎ早に質問され、その日一日のライフが瞬く間になくなっていった。
「何か聞きたいことある?」
と聞かれても頭の中が真っ白けで、何も浮かんできやしない!
しかも触診されている小春もビビっているのか、おしっこを少量チビっていた。もしかしたら飼い主の気持ちを悟って、代わりにチビっていたのかもしれない。
魔女はアホな飼い主とチビりまくりの子犬を診てから、これからおこなう注射やマダニ対策などの年間スケジュールを丁寧に書きだしてくれた。ついでにこの餌は良さげだからと子犬用の餌の試供品と一緒に、猫の餌までたくさん出してくれたのだった。
犬は選り好みせずに何でも食べるからということで、猫の餌までいただいてしまった。
全然関係ないけど長男がはいはいし始めた頃、裕次郎の餌のカリカリを美味しそうに食べていた。しかも同じ姿勢で動く裕次郎を追いかけまわし、障子を破ってくぐったことは、今でも熱く語り継がれている思い出だったりする。
しっかり食べて運動にいそしんだお蔭で、長男の身長は現在175センチを超える勢いがある。どこまで大きくなるのやら( ゚Д゚)
『混合のワクチンをあと2回しなきゃならないので、暇を見つけて動物病院に行ってくださいね』
と購入したペットショップの店員さんに言われたので、病院に行く前の週に近所にある動物病院に電話をして予約をした。
裕次郎を飼っているときに何度も動物病院に行っている関係で、このシステムを知っていた。人間のように気軽においそれと行けないのがつらい( 一一)
ちなみに小春用に購入したキャリーケースは、柔らかい仕様にした。
裕次郎のときにプラスチック製品にしたせいで、中に入れるときにすっげぇ苦労したのだ。
まず部屋の中央にキャリーケースを置くなり、病院に行くことを察知して、狭いところに逃げ込まれる。その前に首根っこを素早く掴んでケースに入れるわけなんだが――四つ足を使って入り口付近に踏ん張って、絶対に入らないを全身でアピールしたのである。
「くそっ、こんにゃろ、入りやがれ!」
「にゃっふー! ぎょえー」
というやり取りがあり、手の空いてる家族(大抵妹だな)の助けを借りて、何とか中に押し込んだのであった。
普段、裕次郎の鳴き声を聞かないため、あまりの声の大きさにビビッて力が入らなかったのは、ここだけの話だったりする。
小さい動物や子供に対しての力加減って、本当に分からない(現在進行形)
そんな経緯があって裕次郎のときに苦労したので身構えていたものの、こっちの熱意をスルーする感じでほいほい自分からケースに入っていく後姿に、ありがとうと呟いた。
-10度の極寒の中をてくてく歩き、7分後に到着した。予約した時間まで20分も余裕があったけど、思いきって扉を開けて中に入る。
「こにちはー」という変な日本語を口走ってしまったのは、目に留まった人物の姿に驚いたせい。
獣医と思われる妙齢の女性がいたんだ。背中まで伸ばした髪を、一つに束ねているのはいい。だがその髪色が、ラブライブ!に出てくる園田 海未やToLOVEるに出てくる西連寺 春菜に近い感じの真っ青だったのである。
『2.5次元までなら許せるけど、これはちょっと! 魔女としか言えない』
心の中にいるもう一人の自分が叫んでも、その衝撃が伝わるわけがなく、帰りたいけれど引き返せないもどかしさを抱えながら、静々と中に入った。
「予約していた者ですが――」
「あ、ワクチンの予約をした方ね。ワンちゃんをここに出してください」
助手と思しき妙齢の女性に告げられたので、腰の高さよりもちょっとだけ高いところにある診察台にキャリーケースを置き、チャック式になっている扉を手早く開けた。
自分が知っている動物病院との違いに、緊張しまくった尚史の雰囲気を感じ取ったのか、小春はケースの奥のほうで体を縮こませていた。
これが家ならキャリーケースをひっくり返して出すところだが、そんな手荒な真似をして魔女に叱られたらおっかないので、わしっと喉首を掴み、強引な形でその場に引きずり出しちゃった。
本当は前足を掴もうとしたの。でもするりと逃げられてしまったので、可哀そうだけど仕方なく首を掴んじゃったというわけ。
(裕次郎なら出した瞬間におしっこチビっていたけど、コイツはどうするのかなぁ)
なぁんてことを考えつつ、助手のおばちゃんに小春を手渡した。
「ちょっといい? 名前は?」
これから何をされるんだろうと小春を見つめていたところに魔女から質問され、小春の名前を告げた。
「それで、患畜の名前は?」
「ヒッ! すんませんっ、さっきのが患畜の名前ですぅ」
心の中でスライディング土下座をした自分。結構恥ずかしかった。
その後、自分の名前を告げて魔女にペコペコ頭を下げてから、診察台に視線を移した。
そこにはいつの間にか小さな体重計が置かれていて、小春を乗せようとしている瞬間だった。
これと同じような体重計の上に薄い布が敷かれていて、その上でびちょちょちょ~と結構激しくお漏らしをした小春。
「すんませんっ、精密機械の上で何ということを!」
オーマイガーと頭を抱えた尚史を尻目に、出しきった快感を示しているのか、小春は体重計の上で前足をクロスさせて大人しく立っていた。
気を取り直して助手のおばちゃんがおしっこをふき取り、ふたたび計測したら1.5キロの重さがあった。
現在実家で飼っている雑種猫の杏(♂)が5.5キロと聞いていたので、小さいなぁとしみじみ思ったときだった。
「餌、どこのメーカーのものをあげてるの?」
傍にやってきた魔女に訊ねられたのだが、餌付けしているのが娘だったため、さーっぱりそんなもんは分からないぞとビビりながら「覚えていないっす」と素直に答えた。
「やっぱりね。このコ、どこで買ったの?」
小春を手早く触診しながら他にもいろいろ矢継ぎ早に質問され、その日一日のライフが瞬く間になくなっていった。
「何か聞きたいことある?」
と聞かれても頭の中が真っ白けで、何も浮かんできやしない!
しかも触診されている小春もビビっているのか、おしっこを少量チビっていた。もしかしたら飼い主の気持ちを悟って、代わりにチビっていたのかもしれない。
魔女はアホな飼い主とチビりまくりの子犬を診てから、これからおこなう注射やマダニ対策などの年間スケジュールを丁寧に書きだしてくれた。ついでにこの餌は良さげだからと子犬用の餌の試供品と一緒に、猫の餌までたくさん出してくれたのだった。
犬は選り好みせずに何でも食べるからということで、猫の餌までいただいてしまった。
全然関係ないけど長男がはいはいし始めた頃、裕次郎の餌のカリカリを美味しそうに食べていた。しかも同じ姿勢で動く裕次郎を追いかけまわし、障子を破ってくぐったことは、今でも熱く語り継がれている思い出だったりする。
しっかり食べて運動にいそしんだお蔭で、長男の身長は現在175センチを超える勢いがある。どこまで大きくなるのやら( ゚Д゚)
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