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出逢い
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2018年2月3日(土)、週末のまとめ買いの買い物を終えてそのまま帰るところだった。
それなのに今日に限ってはペットショップのショーケースにいるワンコと目が合い、可愛いなと思ったのも束の間、前方を歩いていた相方が店の奥へズカズカ乗り込んでしまった。
いつもならスルーするはずなのに珍しいねと娘と会話し、その後を追いかけた。
目の前では相方がじっとミニチュアダックスを見つめていて、店員さんが話しかけ始める。
尚史の中ではミニチュアダックスといえば、凛々しい顔立ちのイメージなのに、ショーケースにいるそのコはまぶたの上にある白い毛が情けないくらいに垂れ下がっていて、しょんぼりした雰囲気を醸し出しているように見えた。
ブサ可愛いとはちょっと違うそのコを抱っこすることになり、娘が抱き方が分からないからと、いきなり尚史が抱っこすることになった。
(実家で猫を飼っていたことがあった経験が、こんなところで生かされるなんて驚きっすわー)
なんていう独り言を心の中で述べた後に手の消毒をしてから子犬を受け取り、しゃがみ込んでいた膝の上に載せてみる。
子犬って落ち着きのない生き物だと思ったのに、まるで借りてきた猫みたいにじっとしていて、久しぶりに感じる動物の温もりに、ほっこりねっこり癒された。
「こんな感じで抱っこしてみそ!」
言いながら娘の膝の上目がけて、強引に子犬を押しつけてみた。
相変わらずオドオドしている娘の態度を肌で感じて、子犬が不安になるかと思いきや、まったく動じる気配がない様子に、コイツは大物だなぁと思った。
その後、相方が抱っこしながら寿命など犬についての質問をして、店員さんと微笑ましい会話を繰り広げていた。
しゃがんだままでいた尚史と娘は、黙ってその会話を聞き続ける。
『いやぁ、抱っこが上手ですねぇ。そのまま連れて帰ってもらいたいなぁ』
等々わんこの気持ちを代弁する店員さんに、まんまと乗せられていく相方。
「……買っちゃう?」
「「ええっ!?」」←娘と合唱
『本当ですか? 子犬も喜びますよ!』
「あ、こっ今夜家族会議で決めます」
暫し、妙な間が4人を包み込んだ――。
「よし、買おう」
頭の中で必死こいて電卓を叩いている最中になされた相方の一言に、娘と一緒に凍りついた。
言い出したら聞かないことは長年の付き合いで分かっているので、しょうがなく賛成したのだった。
その後、ケージなど必要な物品も一緒に購入し、犬の保険にも入ったりと諸手続きをしてから、子犬と一緒に店を出た。
車内での話題は雌犬の名前を何にするかで、娘と一緒にスマホで調べつくした結果、『小春』と命名が決まった。北海道の春はまだまだ先なのに、我が家に可愛い春がやって来たと思ったのは、この時点で間違いだったのである。
そう――子犬のお世話がこんなにも大変だなんて思ってもいなかったから!
それなのに今日に限ってはペットショップのショーケースにいるワンコと目が合い、可愛いなと思ったのも束の間、前方を歩いていた相方が店の奥へズカズカ乗り込んでしまった。
いつもならスルーするはずなのに珍しいねと娘と会話し、その後を追いかけた。
目の前では相方がじっとミニチュアダックスを見つめていて、店員さんが話しかけ始める。
尚史の中ではミニチュアダックスといえば、凛々しい顔立ちのイメージなのに、ショーケースにいるそのコはまぶたの上にある白い毛が情けないくらいに垂れ下がっていて、しょんぼりした雰囲気を醸し出しているように見えた。
ブサ可愛いとはちょっと違うそのコを抱っこすることになり、娘が抱き方が分からないからと、いきなり尚史が抱っこすることになった。
(実家で猫を飼っていたことがあった経験が、こんなところで生かされるなんて驚きっすわー)
なんていう独り言を心の中で述べた後に手の消毒をしてから子犬を受け取り、しゃがみ込んでいた膝の上に載せてみる。
子犬って落ち着きのない生き物だと思ったのに、まるで借りてきた猫みたいにじっとしていて、久しぶりに感じる動物の温もりに、ほっこりねっこり癒された。
「こんな感じで抱っこしてみそ!」
言いながら娘の膝の上目がけて、強引に子犬を押しつけてみた。
相変わらずオドオドしている娘の態度を肌で感じて、子犬が不安になるかと思いきや、まったく動じる気配がない様子に、コイツは大物だなぁと思った。
その後、相方が抱っこしながら寿命など犬についての質問をして、店員さんと微笑ましい会話を繰り広げていた。
しゃがんだままでいた尚史と娘は、黙ってその会話を聞き続ける。
『いやぁ、抱っこが上手ですねぇ。そのまま連れて帰ってもらいたいなぁ』
等々わんこの気持ちを代弁する店員さんに、まんまと乗せられていく相方。
「……買っちゃう?」
「「ええっ!?」」←娘と合唱
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暫し、妙な間が4人を包み込んだ――。
「よし、買おう」
頭の中で必死こいて電卓を叩いている最中になされた相方の一言に、娘と一緒に凍りついた。
言い出したら聞かないことは長年の付き合いで分かっているので、しょうがなく賛成したのだった。
その後、ケージなど必要な物品も一緒に購入し、犬の保険にも入ったりと諸手続きをしてから、子犬と一緒に店を出た。
車内での話題は雌犬の名前を何にするかで、娘と一緒にスマホで調べつくした結果、『小春』と命名が決まった。北海道の春はまだまだ先なのに、我が家に可愛い春がやって来たと思ったのは、この時点で間違いだったのである。
そう――子犬のお世話がこんなにも大変だなんて思ってもいなかったから!
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