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act:意外な一面
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――どうしよう……。さっきのどうしようとは、明らかに質が違うレベルだった。
ことの始まりはさっきお互い素直になり、自分の気持ちを告白した後のこと。胸の中にいる私を見た鎌田先輩が、
「何て顔をしているんです」
なんていう文句を言った。
嬉し泣きで、グチャグチャな顔のハズなんだけどな?
その言葉に小首を傾げて、不思議そうにしていたら。
「お陰で俺の理性が、どこかに飛んでしまいました。どうしてくれるんですか?」
そう言って、甘いキスを何度もしてくる。その舌遣いにトロけそうになりながらも、必死に両足を踏みしめた。挙句の果てに――
「ラチがあかない、責任を取ってもらいます」
どこかホクホクした顔で言われたのちに、鎌田先輩のマンションへ見事に拉致られたのである。
どうしよう……。下着が上下バラバラです。可愛らしさのカケラもございません。しかも鎌田先輩ってば私へ告るのに一年以上の年月を費やした人なのに、さっさと自分のマンションに連れ込むって、どんだけ手が早いんですか。
だけど実際は嬉しい――しかもさっきのキス。頭の芯が痺れそうな激しくもあり妖しくもありで、どうしていいか分からなかった。この先を考えると……。
現在エレベーターに、ふたりで乗っています。ここに来るまで、会話はまったくありません。でも拉致られている最中、私の肩を抱いた鎌田先輩の手が微かに震えているのを、ちょっぴり感じたくらいです、はい。
ポーン
軽やかな音が鳴り、エレベーターの扉が開く。
どうしよう……ここまで来て、無駄にあがいてしまう自分がいる。
おどおどしている私の目の前で素早く鍵を開けて、ご自宅の中へと促してくれた。
(うわぁぁ! 鎌田先輩の家だ。ふかふかの絨毯が足の裏に気持ちいい! 家の香り鎌田先輩とおんなじ匂いがする!)
違うトコに興奮していると手にしていたプレゼントをさっと奪い取られ、どこかにポイされた。どこへいったか分からない理由は、家に入ってから電気をつけていないから。
「鎌田先輩、明かりをつけないんですか?」
私としては、当たり前のことを聞いたつもりだったのに――
「明かりをつけて、スルほうがいいのですか?」
なんて逆に質問されて困惑した。絶対いつものように片側の口角を上げて、笑っているに違いない!
困り果ててしまって答えないでいると、いきなり髪の毛を掴まれて、うなじにキスをされてしまい――
「ひゃっ」
「色気のない声。外してしまいましたね」
変な声をあげた私の頭を宥めるように撫でてくれた。
いつもは厳しい鎌田先輩の意外な一面を目の当たりにして、どうしたらいいか分からなくなっていた。しかも外したって、一体何を探しているの!?
次は何をされるんだろうと警戒していたら、後ろから優しく抱きしめられた。左手で鎖骨から首のラインを触り、右手でしっかりスーツのボタンを外している鎌田先輩の大きな手を見下す。
――仕事振りが器用だと、コッチも器用なのかな?
しかも暗闇の中だから感覚が妙に研ぎ澄まされて、耳元にかかる吐息がくすぐったいことこの上なかった。
いつの間にかスーツのボタンを全て外し終え、ブラウスの上から鎌田先輩の指先を感じた。ウエストラインから、徐々に上がってくる細長い指……。思わずその手をぎゅっと握り締めた。
「どうしました?」
「こっ、心の準備がまだできませんっ!」
私を自分の方に振り向かせると眉根を寄せ、困った顔をしている鎌田先輩と目が合った。
「それは厄介ですね。俺もどうしたらいいか分からないんですが――」
なぁんて言うから真面目に聞いてみる。
「そんな顔をされたら、手加減ができなくなります」
目を細めて私をじっと見つめてから、手早くその場に押し倒される。見事に心の準備が、スルーされた瞬間だった。
――どうしよう……。さっきのどうしようとは、明らかに質が違うレベルだった。
ことの始まりはさっきお互い素直になり、自分の気持ちを告白した後のこと。胸の中にいる私を見た鎌田先輩が、
「何て顔をしているんです」
なんていう文句を言った。
嬉し泣きで、グチャグチャな顔のハズなんだけどな?
その言葉に小首を傾げて、不思議そうにしていたら。
「お陰で俺の理性が、どこかに飛んでしまいました。どうしてくれるんですか?」
そう言って、甘いキスを何度もしてくる。その舌遣いにトロけそうになりながらも、必死に両足を踏みしめた。挙句の果てに――
「ラチがあかない、責任を取ってもらいます」
どこかホクホクした顔で言われたのちに、鎌田先輩のマンションへ見事に拉致られたのである。
どうしよう……。下着が上下バラバラです。可愛らしさのカケラもございません。しかも鎌田先輩ってば私へ告るのに一年以上の年月を費やした人なのに、さっさと自分のマンションに連れ込むって、どんだけ手が早いんですか。
だけど実際は嬉しい――しかもさっきのキス。頭の芯が痺れそうな激しくもあり妖しくもありで、どうしていいか分からなかった。この先を考えると……。
現在エレベーターに、ふたりで乗っています。ここに来るまで、会話はまったくありません。でも拉致られている最中、私の肩を抱いた鎌田先輩の手が微かに震えているのを、ちょっぴり感じたくらいです、はい。
ポーン
軽やかな音が鳴り、エレベーターの扉が開く。
どうしよう……ここまで来て、無駄にあがいてしまう自分がいる。
おどおどしている私の目の前で素早く鍵を開けて、ご自宅の中へと促してくれた。
(うわぁぁ! 鎌田先輩の家だ。ふかふかの絨毯が足の裏に気持ちいい! 家の香り鎌田先輩とおんなじ匂いがする!)
違うトコに興奮していると手にしていたプレゼントをさっと奪い取られ、どこかにポイされた。どこへいったか分からない理由は、家に入ってから電気をつけていないから。
「鎌田先輩、明かりをつけないんですか?」
私としては、当たり前のことを聞いたつもりだったのに――
「明かりをつけて、スルほうがいいのですか?」
なんて逆に質問されて困惑した。絶対いつものように片側の口角を上げて、笑っているに違いない!
困り果ててしまって答えないでいると、いきなり髪の毛を掴まれて、うなじにキスをされてしまい――
「ひゃっ」
「色気のない声。外してしまいましたね」
変な声をあげた私の頭を宥めるように撫でてくれた。
いつもは厳しい鎌田先輩の意外な一面を目の当たりにして、どうしたらいいか分からなくなっていた。しかも外したって、一体何を探しているの!?
次は何をされるんだろうと警戒していたら、後ろから優しく抱きしめられた。左手で鎖骨から首のラインを触り、右手でしっかりスーツのボタンを外している鎌田先輩の大きな手を見下す。
――仕事振りが器用だと、コッチも器用なのかな?
しかも暗闇の中だから感覚が妙に研ぎ澄まされて、耳元にかかる吐息がくすぐったいことこの上なかった。
いつの間にかスーツのボタンを全て外し終え、ブラウスの上から鎌田先輩の指先を感じた。ウエストラインから、徐々に上がってくる細長い指……。思わずその手をぎゅっと握り締めた。
「どうしました?」
「こっ、心の準備がまだできませんっ!」
私を自分の方に振り向かせると眉根を寄せ、困った顔をしている鎌田先輩と目が合った。
「それは厄介ですね。俺もどうしたらいいか分からないんですが――」
なぁんて言うから真面目に聞いてみる。
「そんな顔をされたら、手加減ができなくなります」
目を細めて私をじっと見つめてから、手早くその場に押し倒される。見事に心の準備が、スルーされた瞬間だった。
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