ドS上司の意外な一面

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
29 / 83
act:意外な展開

しおりを挟む
***

 ヘロヘロになった体を引きずったまま、次の日を迎えてしまった。

 正直、よく眠れなかった。考えれば考える程、昨日のふたりのやり取りが意味不明だったから。

 資料室から部署に戻ったら鎌田先輩の姿は部署にはいなくて、予定表には出張→直帰と書かれてあった。小野寺先輩もどこかにでかけたのか、定時まで部署に戻ってこなかった。

「おはようございます……」

 恐るおそる部署に入る。そこには鎌田先輩の姿はなく、小野寺先輩がいつもの爽やかな笑顔でほほ笑んできた。

「おはよう!」

 その様子にウッと思いながら、自分の席に着く。

「昨日俺が去った後、どうなった?」

 何故だかワクワクした顔で、問いかけてくる。しかも机に頬杖付いたまま、こっちを楽しそうに見つめるまなざしに、嫌悪感しか沸かない。

 そのあまりな態度に目を合わせず、

「別に……。何もなかったですよ」

 素っ気なく答えたら、ずっこける格好をした小野寺先輩。

「はぁ? どうして何もないんだよ……おかしいだろ」

 なぁんて、のん気に言われても。

「この間の話、もしかして信じちゃった?」

 どこか楽し気に聞いてきた言葉の意味が分からず、小首を傾げる。

「引き出しのプレゼントが、元カノから貰ったモノだったって話」

 その台詞にあの時の事を思い出し、胸の奥がキリキリと痛んだ。

「ああ、別に。そんなの信じてませんけど」

「真実、知りたいと思わない?」

「……別に」

 聞きたくない話だったから顔を背けて仕事を始めようと書類を手にした私を見て、小野寺先輩はため息をついた。

「鎌田先輩といい山本さんといい、どうして素直になれないのかねぇ」

 呆れたような物言いをし、デスクをばしばし叩きはじめた。

「俺は君の恋愛、応援しているつもりなんだけどさ」

「じゃあ昨日のは、何だったんですか?」

 まったくもって、さっぱりワケが分からない。

「昨日の敵は、今日は味方って感じ!」

「はぁ!?」

「あのプレゼントは元カノから貰ったモノじゃなく、誰かにあげようとして隠されていたモノだと、俺は思うね」

 そう言うと小野寺先輩は席を立ち、部署の扉に向かう。

「もっと素直になって、よぉく考えてみなよ。鎌田先輩に疑問点を聞いてみれば、あっさり解決するって」

 疑問点……たくさんありすぎて、どこから聞いたらいいか正直分かりません。

「昨日は、いろいろとごめんね」

 手を合わせて謝るポーズをして、逃げるように出て行った。

 謝るくらいなら最初からするな! 

 そんなセリフを大声で叫びたくなるのを堪えるのに、必死になってしまったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

処理中です...