FF~フォルテシモ~

相沢蒼依

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未来へ

今川目線3

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***

 3ヶ月後、山田くんの結婚式は教会で行われた。内容は親しい友人や知人ばかりの質素な物だったが、あたたかい雰囲気が溢れる会場に参列者全員が笑顔になっている。

 これも一重に山田くんの人柄なんだろうなぁと思いながら、幸せそうなふたりを遠くから眺めていた。

「私、絶対にブーケGETするから!」

 鼻息を荒くして戦場? に赴く蓮。山田くんの奥さんが後ろを向きながら、チラッとこっちを見たような感じが――何だろう?

 そして花嫁から投げられたブーケは女の子集団がいる方向じゃなく俺の隣にいた、鎌田さんの手元に何故か着地した。

 呆気にとられる鎌田さん、次の瞬間サッとブーケは奪われる。

「男が貰ってもしょうがないモノなのよ。私が貰ってあげる」

 蓮の見事な早業であった。

「何か、悔しそうな顔をしてるのは気のせいかしら? もしかして、山田と結婚したかったとか?」

 鎌田さんの視線が、ぐさぐさと俺に刺さる。ああ、レーザービーム……。

「――スミマセン」

 小さい声で、謝罪するしかない。

「マット、いちいちこんな奴に気を遣う必要はないんだから。無神経なドS星人なんだし」

「無神経は、オマエの専売特許だろ」

 ああ、バトルが始まった。めでたい教会で、わざわざやり合わなくてもいいのに。

「次は、今川さん達なんですね」

 鎌田さんの彼女が、タイミングよく声をかけてくれる。

「はぁ、実はぼちぼちプロポーズしようかと……」

 蓮には聞こえないように(バトルしてるから大丈夫か)こっそり彼女に言った。

「お式のときは是非、鎌田先輩と一緒にお祝いしたいです!」

「それは有り難うございます……。でも、あんな風に揉めなきゃいいんですけどね」
 
 ――今から頭がイタイ。

「私もあそこまで言い争いしたことないから、実際は羨ましいな」

 呑気に彼女が言ってくれる。

 まぁ嫉妬するレベルとか、そういう次元の話じゃないなコレは……。

 言い合うふたりをスルーして、山田くん夫妻に目を移した。

 俺もあんな風に、幸せになれるんだろうか。

 教会から移動して、個人経営のレストランで立食パーティー。アットホームな感じが良かったなぁ、料理もすっごく美味しかったし。

 結婚式からの帰り道、今までのことをぼんやりと思い出しながら、ブーケを嬉しそうに持ってる蓮の横顔を見つめる。

 ドレスアップしているから何だか花嫁に見えるせいで、妙にドキドキした。

「……朝比奈 蓮さん」

 立ち止まって、そっと優しく話しかける。

「こんなおじさんで後先短い俺ですが、残りの人生をどうか一緒に過ごしてくれませんか?」

「マット……」

 にこやかに笑みを浮かべて、右手を差し出した。

「俺の隣でいつも楽しそうに笑っている君じゃないと、老い先を過ごせません」

 いつも何を言い出すか心配だけど、それさえも楽しくて堪らない。

「愛しています、蓮」

「マット……」

 差し出した俺の手を取らず、何故か体に抱きついてきた。予測のできない行動も、楽しみのひとつですね。

「こんな私で良ければ、お嫁にもらって下さい」

 大きな瞳に涙を浮かべながら言ってくれた君を、ぎゅっと優しく抱き締める。

「幸せにします――」

 頷く君に、ちゅっとキスをした。それは重なり合う唇が指切りのようだ。

「結婚するとなるとこれは大勢に、幸せな私達をこれでもかと見せつけなきゃだよね」

 腰に手を当てて、張り切った蓮。大勢っていうのは、正直緊張します。

「マット、花婿なんだから日頃からもっと、ビシッとしててよね」

 やはり、難題を押し付けてくる。これは式場選びは、難航しそうな予感――そして半年後、思いもよらぬトコである人物と出会うことになる。
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