FF~フォルテシモ~

相沢蒼依

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未来へ

今川目線2

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***

「仲直りと同時に結婚って、何だか山田くんらしい」

「これでもう、離れることができませんからね」

 お互い交換した弁当に舌鼓をうつ。蓮は嬉しそうにぱくぱくとご飯を頬張りながら、ニッコリと微笑んできた。

「これで気兼ねなく、旅行に行けるねマット」

 これでもかと嬉しそうに告げてくる。

「勿論、会長の許可をとってからですよ」

「分かってるって。ねぇどこに行く? 海・山の自然に行くか、それとも遊園地とかアスレチックなトコにしようか――」

 楽しそうに悩む蓮を見てるだけで、自然と微笑んでしまう。

「マットの足腰を考えると、そうだなぁ。あまり、ハードじゃない遊びにしないとね」

「そんなに気を遣わなくても大丈夫ですよ」

 ――ホント、変なトコに気が利く。

「だってマットって、よく転ぶじゃない。だからなるべく負担がかからない遊びを昼間にまわして、夜は……」

 ひとりほくそ笑む蓮、やれやれ――

「そうですね、夜は生で――」

「ちょっ……ちょっと何、すっごいこと言ってんのマット!」

 俺の言葉を遮り、あたふたと慌てふためく。

「なんでそんなに、顔を赤くしてるんです?」

「だ、だって爆弾発言したじゃない。これが、騒がずにいられようか!」

 机をバンバン叩いて興奮している姿に、まったく理解ができずハテナ顔な俺。

「夜は是非とも、生で乾杯したいなぁと思ったんですが?」

「は!?」

「そんなに生ビール好きとは知りませんでした」

 俺がそう言うと、ますます蓮の顔が真っ赤になる。

「紛らわしいこと、言わないでほしい……」

 蓮の様子に首を傾げた。話がまったく見えません。

「私がどんだけ夜に期待してるか、マット分かる?」

「さぁ……」

 期待度は、目に見えないモノですからね。分かってほしいというほうが、無理な気がします。

「ここで襲われたとき身体にマットの腰が押し付けられた瞬間、そりゃあもうビックリしたんだから」

「そうですか」

「マットって、んもぅアレなんだから」

 そう言って俺の背中を、バシバシ叩きまくる。しかもかなり痛いです。

「ご期待を裏切るようで悪いんですが、コレと勘違いしてませんかね」

 ズボンのポケットからiPhoneの最新機種と会議を録音するレコーダーを、すっと取り出した←おじさんは新しモノ好き

「うっ……。そんなモノを、そんなトコに入れてるとは……」

 やれやれ、おじさんは誤魔化して揉み消すのが得意なんですよ。確かあのときは投げ捨てた上着に、これらを入れていたハズなんだ。

「やっぱり、マットは紛らわしい」

 悔しそうに言って、また弁当を頬張る蓮。夜はサプライズがなきゃ、間が持ちませんからね。

 何とかやり過ごすことができて、心の中でホッとしたのだった。
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