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危愛
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「昨日は、ビックリしちゃいました」
今川部長に、お弁当を手渡しながら言った。あんな告白されるとは、思ってなかったから。
チラリと横目で今川部長の顔を見ると、耳まで赤くなってるし。何だか、すっごく可愛い。
「今日は、いつもの弁当ですよ」
照れながら言うトコも可愛い。何だかこっちまで、変にドキドキしちゃう。
「私のは、昨日のお返事仕様です」
「……えっ?」
いそいそ開けてみる今川部長が、あの時の私みたいに固まった。
「こりゃ何と言えばいいのか……。食べるのが勿体無いですね」
ハムやゆで卵、にんじん等々ハート型に出来るモノをあちこちに散らばせつつ勿論、海苔文字で気持ちを書いてみた。
『大スキ』
「遠慮なく食べて下さい。私昨日、嬉し泣きしながら完食しました。とっても美味しかったです」
お弁当の文字を見た時の感動は、今でも忘れられない。
「こんなおじさんの、どこが良かったんでしょう?」
ぽつりと呟くように言う今川部長に、私はクスッと笑って答える。
「今川部長が私自身を、まっすぐに見てくれたからです。体やバックグラウンド抜きで、私を叱ったり誉めたりしてくれたから」
だからそんな今川部長を、大好きになった。
「今川部長こそ、こんな私のどこをスキになったんですか?」
じっと私の顔を見てふっと微笑むと、胸の谷間の少しだけ上を、右手人差し指でトンと押す。その仕草に、一瞬ドキッとした。
「朝比奈さんのココにある、純粋でキレイなトコに惹かれました」
その言葉に思わず、プッと吹き出しちゃった。
「今川部長、私、計算高い女ですよ。めっちゃ腹黒だし」
アバタもエクボな状態なのかな?
「きっと腹黒だから、心が真っ白なんですよ」
誉められてるんだか、けなされてるんだか分からない事を言ってくれる。
――どうしよう、スゴく照れるんですけど。
照れ隠しに今川部長が作ってくれた美味しそうなお弁当を、ぱくぱくと口に運んで食べた。うん、今日も美味しい。
「あの今川部長、提案があるんですけど」
「何でしょう?」
私のお弁当を、同じように美味しそうに頬張りながら聞いてくる。
「ふたりきりの時は、下の名前で呼び合いませんか?」
「……照れますね、それ――」
むむっと、悩むような顔をする今川部長。
「私の事、名前で呼んでみて下さい」
ドキドキして顔が見られない。お弁当に入ってる肉じゃがのにんじんを、箸で意味なくいじる。
「れ、蓮っ……」
「真人さん……」
何となくお弁当から視線を隣にうつすと、こっちを見てる今川部長の視線と絡んだ。すっごく頬を赤らめて、嬉しそうにしてる顔が私の笑いを誘う。
「真人さんって、何か堅い感じがしますね」
「そうですか? 気になりませんが」
今川部長の持つ可愛らしいトコを、何とか引き出したい。
「まさと、まさ、まぁくん、まー……まっと……」
――あっ!?
「マットがいい! これにします」
「マットですか? 不思議なあだ名ですね」
何となく苦笑いしてるのは、気のせい?
「マットが作ってくれたお弁当、とても美味しいです」
「れ、蓮が作ってくれたのも、美味しいですよ」
ぎこちない会話が今のふたりの初々しさを表していて、自然と笑みがこぼれる。幸せ過ぎて怖いよ――
私が伝えた事で始まった恋に陰りがさそうとしている事なんて、このときは知るよしもなかった。
今川部長に、お弁当を手渡しながら言った。あんな告白されるとは、思ってなかったから。
チラリと横目で今川部長の顔を見ると、耳まで赤くなってるし。何だか、すっごく可愛い。
「今日は、いつもの弁当ですよ」
照れながら言うトコも可愛い。何だかこっちまで、変にドキドキしちゃう。
「私のは、昨日のお返事仕様です」
「……えっ?」
いそいそ開けてみる今川部長が、あの時の私みたいに固まった。
「こりゃ何と言えばいいのか……。食べるのが勿体無いですね」
ハムやゆで卵、にんじん等々ハート型に出来るモノをあちこちに散らばせつつ勿論、海苔文字で気持ちを書いてみた。
『大スキ』
「遠慮なく食べて下さい。私昨日、嬉し泣きしながら完食しました。とっても美味しかったです」
お弁当の文字を見た時の感動は、今でも忘れられない。
「こんなおじさんの、どこが良かったんでしょう?」
ぽつりと呟くように言う今川部長に、私はクスッと笑って答える。
「今川部長が私自身を、まっすぐに見てくれたからです。体やバックグラウンド抜きで、私を叱ったり誉めたりしてくれたから」
だからそんな今川部長を、大好きになった。
「今川部長こそ、こんな私のどこをスキになったんですか?」
じっと私の顔を見てふっと微笑むと、胸の谷間の少しだけ上を、右手人差し指でトンと押す。その仕草に、一瞬ドキッとした。
「朝比奈さんのココにある、純粋でキレイなトコに惹かれました」
その言葉に思わず、プッと吹き出しちゃった。
「今川部長、私、計算高い女ですよ。めっちゃ腹黒だし」
アバタもエクボな状態なのかな?
「きっと腹黒だから、心が真っ白なんですよ」
誉められてるんだか、けなされてるんだか分からない事を言ってくれる。
――どうしよう、スゴく照れるんですけど。
照れ隠しに今川部長が作ってくれた美味しそうなお弁当を、ぱくぱくと口に運んで食べた。うん、今日も美味しい。
「あの今川部長、提案があるんですけど」
「何でしょう?」
私のお弁当を、同じように美味しそうに頬張りながら聞いてくる。
「ふたりきりの時は、下の名前で呼び合いませんか?」
「……照れますね、それ――」
むむっと、悩むような顔をする今川部長。
「私の事、名前で呼んでみて下さい」
ドキドキして顔が見られない。お弁当に入ってる肉じゃがのにんじんを、箸で意味なくいじる。
「れ、蓮っ……」
「真人さん……」
何となくお弁当から視線を隣にうつすと、こっちを見てる今川部長の視線と絡んだ。すっごく頬を赤らめて、嬉しそうにしてる顔が私の笑いを誘う。
「真人さんって、何か堅い感じがしますね」
「そうですか? 気になりませんが」
今川部長の持つ可愛らしいトコを、何とか引き出したい。
「まさと、まさ、まぁくん、まー……まっと……」
――あっ!?
「マットがいい! これにします」
「マットですか? 不思議なあだ名ですね」
何となく苦笑いしてるのは、気のせい?
「マットが作ってくれたお弁当、とても美味しいです」
「れ、蓮が作ってくれたのも、美味しいですよ」
ぎこちない会話が今のふたりの初々しさを表していて、自然と笑みがこぼれる。幸せ過ぎて怖いよ――
私が伝えた事で始まった恋に陰りがさそうとしている事なんて、このときは知るよしもなかった。
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