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課外授業:気になる教師
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いつもより足早に帰宅し、三木先生から借りた本をさんが冊をカバンに入れてから、自宅を出発した。その中に、写真が挟まってた『古事記』も入っている。
写真についてツッコミを入れるべきか考えてる最中に、ボロアパートに到着。呼び鈴を押そうと右手を伸ばした瞬間、音もなく突然扉が開いた。
「わっ……!!」
ビックリして声が出せずにいる私に、してやったりな顔をする三木先生。
「何て顔してるんだ、面白すぎるぞお前」
「いや、だって、いきなり扉が開いたら、ビックリするでしょうよ!」
「いやいや、お前のその顔の方がビックリもんだぞ。張ってて良かったー。早く中に入れ」
張ってて良かったって、わざわざ扉の前に張り付いていたの!?
予想がつかない三木先生の行動に困惑しつつお邪魔しますと挨拶して、この間と同じように中に入った。
「……あの、この間お借りした本、本棚に戻しておきますか?」
「おー、そうしてもらえると助かる。作者順に並んでるから、よろしくな」
笑いながら台所に立つと、ヤカンを火にかけた。
まずは下の段にあった、『古事記』を元あったように逆さまに差し込む。
――こうやって置いてあったんだから、何かあるのかもしれないな――
複雑な心境を抱えながら残りの本を戻そうと背表紙を見て、何とか作者を探した。一冊は自分の目の高さのところだったので、難なく戻せたのだけれど……
あと一冊が背伸びをして、入るか入らないかの微妙な位置にあった。自分で戻すと言ったんだから、絶対にやり遂げるもんね。
本棚に片手をつき、うんと背伸びをして、高い棚に本を持つ手を、めいっぱい伸ばした瞬間――
「あぶねーな、何やってんだ」
いつの間にか三木先生が背後にいて手に持っていた本を、ひょいっと奪う。そして入れたい位置にさくっと戻し、私の頭を撫でてくれた。
「戻してくれてありがとな、助かったよ」
そう言って何事もなかったように、台所に戻って行く。ありがとうを言わなきゃならないのは自分なのに、先に言われてしまった。
すっかりタイミングを失い、どうしていいか分からず、おずおずとテーブルの前に座るしかない。
目の前にはノートパソコンと、私の創作ノートが置いてあった。
ぼんやりしてると、鼻に香ってくる独特なコーヒーの匂い。
「この香りって、前に飲んだコーヒー?」
「ああ、飲むだろ? 砂糖は、この間の甘さで大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
三木先生が淹れてくれた美味しいコーヒーがまた飲めると思ったら、元気よく答えてしまった。
数分後、自分の前に真っ白いマグカップに注がれたコーヒーが置かれる。美味しそうなその香りに思わず顔を寄せると、クスクス笑い出した。
「余程気に入ったんだな。待ってる最中も、早く寄越せって顔していたし」
「だって、コーヒーがこんなに美味しいって思わなかったから。さっそく戴きます……」
見つめられるのが何だか恥ずかしくなり、慌ててマグカップを手にして、コーヒーをすすった。鼻に抜けるバニラの香りと、ほんのり甘いコーヒーが落ち着かない気持ちを瞬く間に癒していく。
そんな私を見ながら三木先生も同じように、コーヒーを飲んだ。
「お前がノートに書いた小説、どうしてあれを書こうと思ったんだ? 普段の姿を見てるだけに、ちょっと驚いたぞ」
「あー、うん……」
唐突に聞かれ、返答に困ってしまう。
いつもより足早に帰宅し、三木先生から借りた本をさんが冊をカバンに入れてから、自宅を出発した。その中に、写真が挟まってた『古事記』も入っている。
写真についてツッコミを入れるべきか考えてる最中に、ボロアパートに到着。呼び鈴を押そうと右手を伸ばした瞬間、音もなく突然扉が開いた。
「わっ……!!」
ビックリして声が出せずにいる私に、してやったりな顔をする三木先生。
「何て顔してるんだ、面白すぎるぞお前」
「いや、だって、いきなり扉が開いたら、ビックリするでしょうよ!」
「いやいや、お前のその顔の方がビックリもんだぞ。張ってて良かったー。早く中に入れ」
張ってて良かったって、わざわざ扉の前に張り付いていたの!?
予想がつかない三木先生の行動に困惑しつつお邪魔しますと挨拶して、この間と同じように中に入った。
「……あの、この間お借りした本、本棚に戻しておきますか?」
「おー、そうしてもらえると助かる。作者順に並んでるから、よろしくな」
笑いながら台所に立つと、ヤカンを火にかけた。
まずは下の段にあった、『古事記』を元あったように逆さまに差し込む。
――こうやって置いてあったんだから、何かあるのかもしれないな――
複雑な心境を抱えながら残りの本を戻そうと背表紙を見て、何とか作者を探した。一冊は自分の目の高さのところだったので、難なく戻せたのだけれど……
あと一冊が背伸びをして、入るか入らないかの微妙な位置にあった。自分で戻すと言ったんだから、絶対にやり遂げるもんね。
本棚に片手をつき、うんと背伸びをして、高い棚に本を持つ手を、めいっぱい伸ばした瞬間――
「あぶねーな、何やってんだ」
いつの間にか三木先生が背後にいて手に持っていた本を、ひょいっと奪う。そして入れたい位置にさくっと戻し、私の頭を撫でてくれた。
「戻してくれてありがとな、助かったよ」
そう言って何事もなかったように、台所に戻って行く。ありがとうを言わなきゃならないのは自分なのに、先に言われてしまった。
すっかりタイミングを失い、どうしていいか分からず、おずおずとテーブルの前に座るしかない。
目の前にはノートパソコンと、私の創作ノートが置いてあった。
ぼんやりしてると、鼻に香ってくる独特なコーヒーの匂い。
「この香りって、前に飲んだコーヒー?」
「ああ、飲むだろ? 砂糖は、この間の甘さで大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
三木先生が淹れてくれた美味しいコーヒーがまた飲めると思ったら、元気よく答えてしまった。
数分後、自分の前に真っ白いマグカップに注がれたコーヒーが置かれる。美味しそうなその香りに思わず顔を寄せると、クスクス笑い出した。
「余程気に入ったんだな。待ってる最中も、早く寄越せって顔していたし」
「だって、コーヒーがこんなに美味しいって思わなかったから。さっそく戴きます……」
見つめられるのが何だか恥ずかしくなり、慌ててマグカップを手にして、コーヒーをすすった。鼻に抜けるバニラの香りと、ほんのり甘いコーヒーが落ち着かない気持ちを瞬く間に癒していく。
そんな私を見ながら三木先生も同じように、コーヒーを飲んだ。
「お前がノートに書いた小説、どうしてあれを書こうと思ったんだ? 普段の姿を見てるだけに、ちょっと驚いたぞ」
「あー、うん……」
唐突に聞かれ、返答に困ってしまう。
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