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白熱する選挙戦に、この想いを込めて――
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「ぷっ! 面白そうなヤツが来るんだね。どんな男なのか、ちょっと楽しみかもしれない」
なんて、のん気な顔をして言い放った。俺の心配する気持ちが、全然分かっていない言葉に、どうにも落胆を隠せなかったんだ。
それがあったせいで昨日、あんな風にしつこく何度も抱いてしまった――
しかもまだ気持ちの切り替えが上手くいかない中で、問題の選挙プランナーと顔を合わせることになるなんてな。
軽くため息をつき、渋々扉へと視線を飛ばしてみた。
「四国から直接ここに来たものですから、身なりがなっていなくてすみません」
足元にリュックサックとアタッシュケースを置き、顔を上げながら姿勢を正す姿に、事務所にいた者たちは皆、彼に視線を向けざるおえない。
見境なく相手に手を出すと聞いていたから、どれくらいチャラチャラした男なんだろうかと想像していたのだが、その期待を見事に打ち砕かれてしまった。
身なりがなっていないと言っていたのに、体のラインに合っている仕立ての良さそうなスーツに、グレーのカラーシャツといういで立ちは、自分の方が身なりがなっていないと思わされる。
それだけじゃなく暗めの茶髪に銀縁のメガネからは、真面目そうな印象を受けるだけじゃなく、隙を見せないきちんとした姿勢や物言いも、好青年という感じだ。
出来過ぎた彼を陥れるべく、誰かがデマでも流しているんじゃないか!?
「はじめまして!! この度、革新党の要請を受けてこちらに参りました、二階堂 はじめと申します」
ぺこりと一礼をしてから足元のカバンをそのままに、上座にいる稜の元へと靴音を立てて歩いていく。突然現れた好青年に、誰も声をかけられず、何が起こるんだろうと見守るしかなかった。
「二階堂さん、はじめまして。これから――」
にこやかに微笑み、挨拶をした稜に向かって首を振る。
「お話の前に二、三聞きたいことがあります。答えていただきたい。その返答によってはこのお話を、なかったことに致しますので」
(何を考えているんだ、この男は)
「稜……」
どうにも心配になり駆け寄ろうとしたら、真顔になった稜が無言のまま、左手を突き出して俺の動きを止める。
そんな手の動きから、二階堂は視線を移してこっちを見、どこか蔑むような眼差しを飛ばしてきた。
「ああ……貴方は、彼の恋人でしたっけ? 部外者はこの件について、立ち入らないでいただきたい」
「部外者じゃない、俺はちゃんとし」
「相田さんっ、大丈夫だから。俺がきちんと、答えればいいだけの話でしょ!」
苛立ちを含んだ稜の台詞に、心配した気持ちに冷水を浴びせられてしまったせいで、口を引き結ぶしかない。
なんて、のん気な顔をして言い放った。俺の心配する気持ちが、全然分かっていない言葉に、どうにも落胆を隠せなかったんだ。
それがあったせいで昨日、あんな風にしつこく何度も抱いてしまった――
しかもまだ気持ちの切り替えが上手くいかない中で、問題の選挙プランナーと顔を合わせることになるなんてな。
軽くため息をつき、渋々扉へと視線を飛ばしてみた。
「四国から直接ここに来たものですから、身なりがなっていなくてすみません」
足元にリュックサックとアタッシュケースを置き、顔を上げながら姿勢を正す姿に、事務所にいた者たちは皆、彼に視線を向けざるおえない。
見境なく相手に手を出すと聞いていたから、どれくらいチャラチャラした男なんだろうかと想像していたのだが、その期待を見事に打ち砕かれてしまった。
身なりがなっていないと言っていたのに、体のラインに合っている仕立ての良さそうなスーツに、グレーのカラーシャツといういで立ちは、自分の方が身なりがなっていないと思わされる。
それだけじゃなく暗めの茶髪に銀縁のメガネからは、真面目そうな印象を受けるだけじゃなく、隙を見せないきちんとした姿勢や物言いも、好青年という感じだ。
出来過ぎた彼を陥れるべく、誰かがデマでも流しているんじゃないか!?
「はじめまして!! この度、革新党の要請を受けてこちらに参りました、二階堂 はじめと申します」
ぺこりと一礼をしてから足元のカバンをそのままに、上座にいる稜の元へと靴音を立てて歩いていく。突然現れた好青年に、誰も声をかけられず、何が起こるんだろうと見守るしかなかった。
「二階堂さん、はじめまして。これから――」
にこやかに微笑み、挨拶をした稜に向かって首を振る。
「お話の前に二、三聞きたいことがあります。答えていただきたい。その返答によってはこのお話を、なかったことに致しますので」
(何を考えているんだ、この男は)
「稜……」
どうにも心配になり駆け寄ろうとしたら、真顔になった稜が無言のまま、左手を突き出して俺の動きを止める。
そんな手の動きから、二階堂は視線を移してこっちを見、どこか蔑むような眼差しを飛ばしてきた。
「ああ……貴方は、彼の恋人でしたっけ? 部外者はこの件について、立ち入らないでいただきたい」
「部外者じゃない、俺はちゃんとし」
「相田さんっ、大丈夫だから。俺がきちんと、答えればいいだけの話でしょ!」
苛立ちを含んだ稜の台詞に、心配した気持ちに冷水を浴びせられてしまったせいで、口を引き結ぶしかない。
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