BL小説短編集

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
317 / 329
シェイクのリズムに恋の音色を奏でて❤

24

しおりを挟む
***

 普段はしない俺からの声かけに、聖哉はなにかを察したのか、珍しく空いてるカウンター席に座って、美味しそうに俺が作ったノンアルカクテルを口にする。

 その様子を一人分空いた席から、サオリさんがじーっと眺めていた。

「石崎さん、今夜のカクテルはこの間作ってくれたオレンジベースのものと、少しだけ味が違うんですね。酸味が強いけど、そこまで酸っぱくないのに、爽やかさを感じます」

「おっ、よく気づいたのな。隠し味にミントが入ってるんだ」

「わかりますよ、そりゃ。毎晩飲んでるし」

 嬉しそうに言いながら、カクテルグラスを意味なく回す聖哉。傍から見たら、照れているように見える。

「聖哉、ノンアルなのに、なんで頬を赤らめてるんだ?」

 まったく顔色を変えていなかったが、わざとそうなるように指摘してみる。

「へっ?」

「ほら、頬が熱い」

 話しかけながら、ふっくらした頬に触れた途端に、ぶわっと体温が上がったのが指先に伝わった。作戦成功である。

「誰のせいですか、もう!」

「悪かったって、怒るなよ。次の休憩のときは新作を試させてやるから、機嫌直してくれ」

 その後もテンポよく聖哉と会話を続けていたら、サオリさんが腰をあげてカウンター席から降り立つ。

「智之さん帰るわ。お勘定お願い」

 俺たちの会話の邪魔をするようにいきなり割り込み、お金を置いてさっさと店を出て行く後ろ姿に一応「ありがとうございました」と付け加え、聖哉は無言で見送った。

「……彼女、また来るでしょうか?」

 サオリさんが出て行ってから、一息つくように、ノンアルカクテルに口をつけた聖哉がポツリと零す。

「わからない。昨日のアレを見て今夜来るとは、思いもしなかったし」

「僕も驚きました。まるで、確かめに来た感じでしたよね?」

 ため息をつきつつ、眉根を寄せる聖哉の面持ちを目の当たりにして、内心ドキッとした。

(本人わかっていないようだが、随分と色っぽい顔をしてる)

「ああ。正直、公衆の面前で仲の良さを見せつけるのは、結構気を遣うからな。さじ加減が難しい」

「ほかのお客様の目もありますしね。当然ですよ、それは」

 胸のドキドキを悟られないように平静を装うと、聖哉はグラスに残ったカクテルを一気飲みし、両手首をぶらぶら揺らしながら椅子から降りる。

「面倒なことに巻き込んで、ホント悪いな」

「使える者はピアニストでも、じゃんじゃん使ってください。それがお店のためになるなら、僕は嬉しいです」

 聖哉は満面の笑みで答えてくれたのだが、俺としては心中複雑だった。

 恋人として付き合いたい気持ちの俺と、今の関係を維持したい聖哉。相容れない俺たちの想いは、いったいどこに向かうのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

処理中です...