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シェイクのリズムに恋の音色を奏でて❤
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店内に響く柔らかいピアノの音色と、カクテルをシェークする音が合わさり、絶妙な雰囲気を醸した。ピアノひとつで、こんなに店の様子がグレードアップするなんて、想像以上だった。
「ちょっとマスター、いつからピアノを弾く人を雇ったの? お店、めちゃくちゃいい感じ!」
「ほんとほんと。しかもピアニストの彼、結構イケメンじゃない。女性受けを狙って、彼を雇ったりして?」
彼女たち絵里さんと華代さんは、俺が修行先のバーのお客様だった。新しく店を構えることを知ったら応援すると言って、ずっとここに通ってくれている、とても熱心な太客。俺の作るカクテルを気に入ったのも、追いかけてきてくれた理由のひとつだそうだ。
「絵里さんと華代さんが最近仕事が忙しくて、店に顔を出してくれなかったから、寂しくなって彼を雇ってしまったんです」
するとショートカットで快活な絵里さんが、頬杖をつきながら、ダルそうに答える。
「しょうがないでしょ。疲れきってるせいで貴重な休みが、寝て過ごす日になっちゃうんだもん」
「看護師は体力勝負だもんね。私は彼氏とウフフだけど♡」
絵里さんとはタイプが真逆の華代さんは普通のOLで、私生活は充実しているらしく、彼氏の話をよく聞いたし、店にも一緒に顔を出していた。
「ハナ、今回の彼氏は街コンでゲットしたんだっけ?」
「絵里も一緒に、参加したらよかったのに。優良物件結構いたよ」
「今はなんか、恋愛するモードじゃないんだよね。周りがさ、不倫だの略奪愛だの嫌な感じのトラブルを、延々と見せつけられてるせいで。ちょっと聞いてくれる?」
ゲンナリするような会話が目の前で繰り広げられても、BGMで流れるジャズピアノが耳に優しく聞こえるおかげで、俺の気分を損ねることはなかった。
(――やっぱり、聖哉のピアノはすげぇな。癒し効果ありまくりだろ)
熱心に会話を続けるふたりから離れ、洗い物に手をつけ始めたタイミングだった。ボックス席でパソコンを広げていた中年男性が不意に立ち上がり、聖哉のもとに近づく。
洗い物をしながら、彼らの様子を目の端に捉えた。ちょっかいだそうものなら、すぐに割って入らなければならない。
「素敵な演奏だね」
中年男性はピアノを弾いている聖哉に、平然と話しかけた。演奏する手を止めずに淡々とした口調で「ありがとうございます」と返事をする聖哉を見つめてから、カウンターにいる俺に視線を飛ばす。
「マスター、私の驕りで、素敵な演奏を奏でる彼に、なにか作ってあげてくれないかい?」
中年男性のセリフで、聖哉はやっと演奏する両手をとめた。表情が困惑に満ち溢れていて、どうしたらいいのかわからないのが伝わってくる。
店内に響く柔らかいピアノの音色と、カクテルをシェークする音が合わさり、絶妙な雰囲気を醸した。ピアノひとつで、こんなに店の様子がグレードアップするなんて、想像以上だった。
「ちょっとマスター、いつからピアノを弾く人を雇ったの? お店、めちゃくちゃいい感じ!」
「ほんとほんと。しかもピアニストの彼、結構イケメンじゃない。女性受けを狙って、彼を雇ったりして?」
彼女たち絵里さんと華代さんは、俺が修行先のバーのお客様だった。新しく店を構えることを知ったら応援すると言って、ずっとここに通ってくれている、とても熱心な太客。俺の作るカクテルを気に入ったのも、追いかけてきてくれた理由のひとつだそうだ。
「絵里さんと華代さんが最近仕事が忙しくて、店に顔を出してくれなかったから、寂しくなって彼を雇ってしまったんです」
するとショートカットで快活な絵里さんが、頬杖をつきながら、ダルそうに答える。
「しょうがないでしょ。疲れきってるせいで貴重な休みが、寝て過ごす日になっちゃうんだもん」
「看護師は体力勝負だもんね。私は彼氏とウフフだけど♡」
絵里さんとはタイプが真逆の華代さんは普通のOLで、私生活は充実しているらしく、彼氏の話をよく聞いたし、店にも一緒に顔を出していた。
「ハナ、今回の彼氏は街コンでゲットしたんだっけ?」
「絵里も一緒に、参加したらよかったのに。優良物件結構いたよ」
「今はなんか、恋愛するモードじゃないんだよね。周りがさ、不倫だの略奪愛だの嫌な感じのトラブルを、延々と見せつけられてるせいで。ちょっと聞いてくれる?」
ゲンナリするような会話が目の前で繰り広げられても、BGMで流れるジャズピアノが耳に優しく聞こえるおかげで、俺の気分を損ねることはなかった。
(――やっぱり、聖哉のピアノはすげぇな。癒し効果ありまくりだろ)
熱心に会話を続けるふたりから離れ、洗い物に手をつけ始めたタイミングだった。ボックス席でパソコンを広げていた中年男性が不意に立ち上がり、聖哉のもとに近づく。
洗い物をしながら、彼らの様子を目の端に捉えた。ちょっかいだそうものなら、すぐに割って入らなければならない。
「素敵な演奏だね」
中年男性はピアノを弾いている聖哉に、平然と話しかけた。演奏する手を止めずに淡々とした口調で「ありがとうございます」と返事をする聖哉を見つめてから、カウンターにいる俺に視線を飛ばす。
「マスター、私の驕りで、素敵な演奏を奏でる彼に、なにか作ってあげてくれないかい?」
中年男性のセリフで、聖哉はやっと演奏する両手をとめた。表情が困惑に満ち溢れていて、どうしたらいいのかわからないのが伝わってくる。
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