282 / 329
抗えない想いを胸に秘めたまま、おまえの傍にずっといたい
16
しおりを挟む
「に゛ゃにゃあぁー! うるにゃあぁあっ!」(なにやってんだよ! 猫の俺におまえを守らせるとか信じられねぇ! いつもの銛を出して戦いやがれ)
そんな気持ちを込めて鳴き叫んでやった。
「先輩、煩いですよ」
「相変わらず口数の多いヤツだな」
深いため息をついたベニーがやっと振り返り、黒ずくめの男と対峙する。闇に紛れるような漆黒の服に身を包んだ男は、てのひらから音もなく炎を灯し、辺りをほんのりと明るく照らした。
不思議だった。はじめて見た小さく燃え盛る炎を見てるだけで、恐怖心が身体を支配し、震えが止まらなくなる。
「学年主任、先輩が怖がっているのでやめていただけませんか?」
ベニーの後頭部に隠れながら身を縮こませていたら、大きな手が背中を撫で擦る。落ち着かせるためにやっていることはわかるが、黒ずくめの男が照らす炎がどうにも怖くて、落ち着くことができなかった。
「最期は笑って消されていたのに、やはり恐怖していたんだな。好きなヤツの前では、格好つけたがりだったのか」
「…………いい加減にしてください」
俺の背中を撫でていた手が離れた瞬間、光り輝く銀色の銛が握られる。ベニーの重心が下がったことで、銛が投てきされることを悟った。
「そんな軟弱な武器で、俺と戦えると思ってるのか?」
「隙くらい作る時間があると思いまして」
「隙を作る? どうやって?」
俺が気づいたときには、黒ずくめの男はすぐ傍にいた。驚きのあまり目を見開いて固まったまま動けずにいると、俺に顔を近づけてわざわざ瞳を合わせるなり、にっこりと微笑む。
「ベニー・ロレザス。反撃はどうした?」
「くっ……」
ベニーが攻撃しないことを不審に思い、視線を下げて銛を持っている手元を見たら、男が身につけている黒手袋がベニーの手首に触れていた。手首を掴んでいるんじゃなく、ただ触れているだけだというのに、ベニーはぴくりとも腕を動かすことがなかった。
「おい。俺から目を離すなんて、随分と余裕があるな」
黒ずくめの男の声になぜだか身体が反応して、自然と頭を上向かせられる。目の前にある男の瞳は黒目の部分は赤くなっていて白目がなく、底なし沼のような見えない嫌な黒い色をしていた。見たことのない異様な瞳に見つめられるだけで、息が止まりそうになる。
「先輩には手を出さないでください。お願いします……」
懇願するベニーの声が震えていた。黒ずくめの男に抗うために、力を出しきってしまったからか。それとも恐怖心から震えているのかはわからない。
「出すわけないだろう。これからも働いてもらうのだから」
「ということは、これからも狩りに先輩を連れて行けという命令でしょうか?」
「あのふたりがくっつくか、まだハッキリしない。念には念を入れる」
そんな気持ちを込めて鳴き叫んでやった。
「先輩、煩いですよ」
「相変わらず口数の多いヤツだな」
深いため息をついたベニーがやっと振り返り、黒ずくめの男と対峙する。闇に紛れるような漆黒の服に身を包んだ男は、てのひらから音もなく炎を灯し、辺りをほんのりと明るく照らした。
不思議だった。はじめて見た小さく燃え盛る炎を見てるだけで、恐怖心が身体を支配し、震えが止まらなくなる。
「学年主任、先輩が怖がっているのでやめていただけませんか?」
ベニーの後頭部に隠れながら身を縮こませていたら、大きな手が背中を撫で擦る。落ち着かせるためにやっていることはわかるが、黒ずくめの男が照らす炎がどうにも怖くて、落ち着くことができなかった。
「最期は笑って消されていたのに、やはり恐怖していたんだな。好きなヤツの前では、格好つけたがりだったのか」
「…………いい加減にしてください」
俺の背中を撫でていた手が離れた瞬間、光り輝く銀色の銛が握られる。ベニーの重心が下がったことで、銛が投てきされることを悟った。
「そんな軟弱な武器で、俺と戦えると思ってるのか?」
「隙くらい作る時間があると思いまして」
「隙を作る? どうやって?」
俺が気づいたときには、黒ずくめの男はすぐ傍にいた。驚きのあまり目を見開いて固まったまま動けずにいると、俺に顔を近づけてわざわざ瞳を合わせるなり、にっこりと微笑む。
「ベニー・ロレザス。反撃はどうした?」
「くっ……」
ベニーが攻撃しないことを不審に思い、視線を下げて銛を持っている手元を見たら、男が身につけている黒手袋がベニーの手首に触れていた。手首を掴んでいるんじゃなく、ただ触れているだけだというのに、ベニーはぴくりとも腕を動かすことがなかった。
「おい。俺から目を離すなんて、随分と余裕があるな」
黒ずくめの男の声になぜだか身体が反応して、自然と頭を上向かせられる。目の前にある男の瞳は黒目の部分は赤くなっていて白目がなく、底なし沼のような見えない嫌な黒い色をしていた。見たことのない異様な瞳に見つめられるだけで、息が止まりそうになる。
「先輩には手を出さないでください。お願いします……」
懇願するベニーの声が震えていた。黒ずくめの男に抗うために、力を出しきってしまったからか。それとも恐怖心から震えているのかはわからない。
「出すわけないだろう。これからも働いてもらうのだから」
「ということは、これからも狩りに先輩を連れて行けという命令でしょうか?」
「あのふたりがくっつくか、まだハッキリしない。念には念を入れる」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる