BL小説短編集

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
279 / 329
抗えない想いを胸に秘めたまま、おまえの傍にずっといたい

13

しおりを挟む
 青年が突如会話に割り込むと、女性が掴んでいた耳たぶをさらに引っ張った。

「痛いって! 八つ当たりしないでくれよ」

 耳たぶを引っ張る手を自ら外せば痛みから解放されるというのに、それをせずに青年はむくれたまま女性を睨む。反抗的な態度を目の当たりにしたせいか、女性は声を荒げるように口を開いた。

「大人の話し合いに、いきなり割り込まない」

「僕だって大人だろ!」

「私たちの生きてる時間の長さは、キースの何倍もあるんです。それに比べたら、子ども扱いされて当然でしょう?」

 ベニーの後ろから目の前の様子を窺うと、女性はセリフの同意を促すように、笑いながらこちらに視線を飛ばした。

 すべてを包み込むような、慈愛に満ちた微笑――俺から見ても素敵だなと思わせる女性の笑みに、ベニーは少し困った表情を浮かべて返事する。

「彼としては、子ども扱いされたくないのでしょう。職場で窺う様子からは、一生懸命に背伸びしているように見えます」

 ベニーが肩を竦めた動きで乗っている俺の身体がぐらりと揺れたが、いつも通りバランスをとってやり過ごした。

「キース、そうなの?」

「そんなのしてないって。ロレザス先生、余計なことを言わないでください」

 夜目でもわかるくらいに、顔を真っ赤に染めた青年。隣でそれを見た女性は不思議そうに首を傾げたが、ベニーはどこか嬉しそうに瞳を細めながら微笑んだ。

(今の話の中で、笑えるところがあるとは思えないのに……)

 目を瞬かせてきょとんとする俺の頭を撫ではじめたベニーは、先ほど青年が弓で射って獲物が落ちた場所に、空いてる手で指をさした。

「早い者勝ちということで、さっきのアレを君に提供します。それともう二度と、食事の邪魔をしないでいただきたいです。探すのに苦労するのが、わかっているでしょう?」

 いつも以上に俺を優しく撫でるベニーの顔を、青年は黙ったまま穴があくほどじいっと見つめた。

「…………」

「キース、ロレザス先生にちゃんと返事をしなさい!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...