BL小説短編集

相沢蒼依

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抗えない想いを胸に秘めたまま、おまえの傍にずっといたい

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 俺と同じく全身が真っ黒なソイツは、何度か瞬きをしたあと、長いくちばしで攻撃を仕掛けてきた。突っつかれないように上手くかわして反対方向に逃げたが、黒いヤツは俺の動きを読み、飛んで先回りする。

(くそっ、腹が減って動きたくないのに! これじゃあ、ヤツの餌になっちまうだろ)

 俺は全身の毛を逆立てながら、攻撃を仕掛けてくるくちばしにパンチしてみたが、まったく効いていないらしく、ひょいと簡単にあしらわれた。

「こんなところでこんなヤツに殺られるくらいなら、あのまま大人しく、箱の中に閉じこもっておけば良かった……」

 観念して攻撃を止め、身体を縮こませた俺を見た黒いヤツは、喜ぶように目の前で大きく羽ばたいて、ギャーギャー喚きたてた。

「こらー!」

 すると遠くから誰かの怒鳴り声が聞こえるやいなや、黒いヤツに向かって手が伸ばされる。突き出される手を退けるように、黒いヤツはあっけなく飛び去って行った。

「クロネコちゃん、大丈夫? 怪我してない?」

 しゃがみ込んだ黒髪の人間は、心配そうな顔で俺を手の中におさめた。伝わってくる温もりのおかげで、ちょっとだけ安心できた。

「すごく小さいな。どこから来たの?」

 俺を手にしたまま立ち上がり、どこかに向かう。そして硬そうな箱を開けて中に入り、座ったと同時に黒髪の人間の膝の上に載せられた。

「ベニー、いきなりごめんなさい。このコがカラスに突っつかれてるのが、偶然目に留まったんです。この体の小ささは、生まれてそんなに日が経ってないですよね」

 俺を膝に乗せたまま説明する黒髪の人間の視線を追うと、横にいる髪色の綺麗な人間と目が合った。その瞬間に表現できない不安が胸の中にぶわっと廻った。それに抗わなくてはと、毛を逆立てながら唸ってみせた。

 さっき出逢った黒いヤツと対峙したときとは種類の違う不安に、身体が震えそうになる。

「クロネコちゃん、ベニーは優しい人だよ。怒らないで」

 黒髪の人間が宥めるように、俺の顎の下に触れて撫で続けたが、そんなことでは不安な気持ちは紛れることはなかった。目の前にいる髪色の綺麗な人間から、どうしても視線を外せない。

「弘泰、その猫、怪我はしていませんか?」

「ちょっと待ってください。どれどれ」

 黒髪の人間は、唸ったままでいる俺の身体を膝から抱き上げ、目の前に掲げた。

「私に貸していただけませんか?」

 俺が唸りながら怒っているというのに、顔の前に大きな手が差し出された。
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