BL小説短編集

相沢蒼依

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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい

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***

 ローランドに話を聞こうと車で学校まで戻り、校内を捜しまわった。

(いつもなら先輩が影のように私についてきていたので、その存在を感じることができた。それなのに今は気配すら感じられないなんて、どうにも納得できません)

 しょんぼりしながら職員室に戻っても、その中に姿を見つけることができなかった。唯一居所を知っていそうな、学年主任に声をかけてみる。

「お仕事中すみません、バーンズ先生を捜しているのですが」

「彼は事後処理中で、ここにはいない」

 事後処理という言葉に、ベニーは引っかかりを覚えて眉根を寄せる。

 主のローランドが亡くなったあとの事後処理をして、別世界に転移した執事時代のことを思い出す。そして弘泰の見守り人からさきほど聞いた、『上のヤツらが混じって生活している』という事実を知ったからこそ、目の前の人物に、鋭い視線を注いだ。

「先輩はなにも悪いことをしておりません。それなのにどうして、事後処理をする必要があるのでしょうか?」

 ベニーのセリフで見つめていたパソコンの画面から目を離し、学年主任は睨むような視線を直接受ける。

「ベニー・ロレザス。ここでのおまえは、ただの保健医という身分。上の問題に口出しするのは許されない」

「ですが――」

「彼奴の事後処理次第で、逢える可能性はある。だが今は無理な話だ。こちらからはそれ以上、なにも答えられない。もう帰りなさい」

 機械的な返答が、ベニーの質問を受けつけないことを示していた。やりきれない思いを抱えた状態で頭を下げてから、職員室をあとにする。

 おぼつかない足取りで屋上に向かい、日が落ちた街並みを漫然と眺めた。

(なんで、こんなことになってしまったのでしょうか。私がなにも知らないばかりに、先輩が全部荷物を背負っていたなんて)

 後悔の念で押しつぶされそうになった瞬間、ポケットに入っていたスマホが震える。なんの気なしに画面を確認した。

「先輩っ!」

 LINEでメッセージが届けられた。

『明日朝7時半に学校の屋上に集合!最後の挨拶をさせてくれ』

 表示された短い文章を、ベニーは何度も読み返す。最後の挨拶という言葉を繰り返すたびに、胸が張り裂けそうになったのだった。
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