251 / 329
抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
76
しおりを挟む
「……そうですね。言うことをまったく聞かない赤子にウンザリして、簡単に人殺しをしそうな気がします」
「だがそれをしたら、俺の来世がなきものになる。俺はどうしても幸せになりたかった。だから絶対に弘泰には手をあげず、むしろ大事に育てた。本当の親のように、ここまで育てたんだ」
ベニーを睨みながら熱弁する弘泰の見守り人のセリフに、会話の糸口を見つけた。大事に育てていると豪語しているのに、おかしいと思わずにはいられない。
「しかし弘泰が学校で虐められていることや、兄の伊月に襲われているのを知っていたのでしょう? どうして助けなかったのですか?」
「本当になにも知らないんだな。おまえが弘泰と似たような状況になっても、おまえの見守り人は助けなかっただろう?」
「助けてくれませんでした」
確かにその通りだと思いながら、返事をするしかなかった。情報を与えられるばかりの現状に、ベニーは歯がゆさを覚える。
「命の危機にかかわる以外は、助けてはならない決まりになってる。手を貸してしまったら、弘泰の人生にペナルティが課せられる仕組みなんだ。だから知っていても、俺は助けられなかった」
「確かに人生にペナルティが課せられるのなら、自分が見守り人だった場合、当然目をつぶります」
ベニーはこれまでに知った情報から、見守り人のローランドとのやり取りを思い出してみる。孤児院でお腹をすかせてひもじい思いをしていたときや、男娼として躰を売り養父母の借金を返済していたときも、いっさい手を貸してはくれなかった。
でもあのとき――男娼の屋敷から逃げ出して行き倒れたところで、心配そうに眉根を寄せながら空色の瞳を細めて手を差し伸べてくれたタイミングは、命の危機だったのかと改めて思い知らされた。
『大丈夫かよ、おまえ生きてるのか?』
そう声をかけられて抱きしめられた瞬間、自分に寄せられた心のあたたかみを直に感じた。それなのに極限にお腹がすいていたせいで、すぐ傍にある空色の瞳を「美味しそう」なんていう言葉で表現したことは、ベニーにとって恥ずかしい思い出となっていた。
「だがそれをしたら、俺の来世がなきものになる。俺はどうしても幸せになりたかった。だから絶対に弘泰には手をあげず、むしろ大事に育てた。本当の親のように、ここまで育てたんだ」
ベニーを睨みながら熱弁する弘泰の見守り人のセリフに、会話の糸口を見つけた。大事に育てていると豪語しているのに、おかしいと思わずにはいられない。
「しかし弘泰が学校で虐められていることや、兄の伊月に襲われているのを知っていたのでしょう? どうして助けなかったのですか?」
「本当になにも知らないんだな。おまえが弘泰と似たような状況になっても、おまえの見守り人は助けなかっただろう?」
「助けてくれませんでした」
確かにその通りだと思いながら、返事をするしかなかった。情報を与えられるばかりの現状に、ベニーは歯がゆさを覚える。
「命の危機にかかわる以外は、助けてはならない決まりになってる。手を貸してしまったら、弘泰の人生にペナルティが課せられる仕組みなんだ。だから知っていても、俺は助けられなかった」
「確かに人生にペナルティが課せられるのなら、自分が見守り人だった場合、当然目をつぶります」
ベニーはこれまでに知った情報から、見守り人のローランドとのやり取りを思い出してみる。孤児院でお腹をすかせてひもじい思いをしていたときや、男娼として躰を売り養父母の借金を返済していたときも、いっさい手を貸してはくれなかった。
でもあのとき――男娼の屋敷から逃げ出して行き倒れたところで、心配そうに眉根を寄せながら空色の瞳を細めて手を差し伸べてくれたタイミングは、命の危機だったのかと改めて思い知らされた。
『大丈夫かよ、おまえ生きてるのか?』
そう声をかけられて抱きしめられた瞬間、自分に寄せられた心のあたたかみを直に感じた。それなのに極限にお腹がすいていたせいで、すぐ傍にある空色の瞳を「美味しそう」なんていう言葉で表現したことは、ベニーにとって恥ずかしい思い出となっていた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる