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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
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具合の悪いふりをした弘泰を連れて、学年主任に早退の提案をしたベニー。
「彼の家の様子を聞いてみたところ、母親は県外の病院に入院したご長男に付き添っているそうで、父親は仕事が遅く、いつもひとりきりで食事をしているとのことでした」
一旦会話を切り、傍に控えている弘泰を見てから、ふたたび言の葉を続ける。
「義理の兄弟とはいえ、面倒見のいいお兄さんの入院や、慣れないひとりきりの生活がたたったのでしょう。体調を崩しているようなので、私が自宅まで送っていき、生活しているご自宅を拝見したうえで、今後体調を崩さないような話を、父親にしてあげたいのですが」
事前に受けたアドバイスをもとにして、流暢に語りかけたベニーを、隣で演技している弘泰は、笑いを堪えるのがやっとだった。
「ロレザス先生が来てからというもの、保健室を使用する生徒が大勢いる状態なのを確認していますからね。それを緩和する意味でも、このまま年休をとって帰ってもかまいません」
「ありがとうございます。それではお先に失礼します」
弘泰と一緒に一礼して、職員室をあとにした。
「ベニーはやっぱりすごいですね」
弘泰は助手席に座り、流れる車窓を眺めつつ、運転するベニーに話しかけた。
「頭のいい君の考えをベースにして、学年主任に提案しただけです。たったひとりの生徒のために私が直接手を差し伸べることは、職務上いきすぎていると言われてもおかしくなかったのに、仮病を使ってやって来ていた生徒のお蔭で、学校を出ることができるとは、思ってもいませんでした」
隣でおかしそうに笑うと、束ねているベニーの長い髪が揺れる。車に入り込む日の光を浴びて、キラキラ瞬くそれに、弘泰の目が釘付けになった。
「どうしました?」
無言を貫く様子を不審に思ったベニーが問いかけた瞬間、やっと我に返る。
「うわっ、やっ…うー」
「弘泰?」
「だって……、これからベニーとそういうコトをするんだと思ったら、なんだか緊張してしまって」
弘泰はしどろもどろに答えた。
「そういうこととは、どんなことでしょうか?」
「わかっていて、そんな意地悪言うんですね」
「大事な生徒を乗せて運転しているんです。余計なことに頭を使えませんから」
艶のある笑みを浮かべている時点で、内容がわかっているのが見てとれた。
「どうせ余計なことですから、考えなくて結構です!」
顔を逸らして車窓を眺めた刹那、ベニーの左手が太ももの際どいところに置かれた。
「ちょっ!」
「考えなくてもいいのなら、内なる欲望にまかせてみてもいいでしょう?」
「なにを言って……」
具合の悪いふりをした弘泰を連れて、学年主任に早退の提案をしたベニー。
「彼の家の様子を聞いてみたところ、母親は県外の病院に入院したご長男に付き添っているそうで、父親は仕事が遅く、いつもひとりきりで食事をしているとのことでした」
一旦会話を切り、傍に控えている弘泰を見てから、ふたたび言の葉を続ける。
「義理の兄弟とはいえ、面倒見のいいお兄さんの入院や、慣れないひとりきりの生活がたたったのでしょう。体調を崩しているようなので、私が自宅まで送っていき、生活しているご自宅を拝見したうえで、今後体調を崩さないような話を、父親にしてあげたいのですが」
事前に受けたアドバイスをもとにして、流暢に語りかけたベニーを、隣で演技している弘泰は、笑いを堪えるのがやっとだった。
「ロレザス先生が来てからというもの、保健室を使用する生徒が大勢いる状態なのを確認していますからね。それを緩和する意味でも、このまま年休をとって帰ってもかまいません」
「ありがとうございます。それではお先に失礼します」
弘泰と一緒に一礼して、職員室をあとにした。
「ベニーはやっぱりすごいですね」
弘泰は助手席に座り、流れる車窓を眺めつつ、運転するベニーに話しかけた。
「頭のいい君の考えをベースにして、学年主任に提案しただけです。たったひとりの生徒のために私が直接手を差し伸べることは、職務上いきすぎていると言われてもおかしくなかったのに、仮病を使ってやって来ていた生徒のお蔭で、学校を出ることができるとは、思ってもいませんでした」
隣でおかしそうに笑うと、束ねているベニーの長い髪が揺れる。車に入り込む日の光を浴びて、キラキラ瞬くそれに、弘泰の目が釘付けになった。
「どうしました?」
無言を貫く様子を不審に思ったベニーが問いかけた瞬間、やっと我に返る。
「うわっ、やっ…うー」
「弘泰?」
「だって……、これからベニーとそういうコトをするんだと思ったら、なんだか緊張してしまって」
弘泰はしどろもどろに答えた。
「そういうこととは、どんなことでしょうか?」
「わかっていて、そんな意地悪言うんですね」
「大事な生徒を乗せて運転しているんです。余計なことに頭を使えませんから」
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「どうせ余計なことですから、考えなくて結構です!」
顔を逸らして車窓を眺めた刹那、ベニーの左手が太ももの際どいところに置かれた。
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「考えなくてもいいのなら、内なる欲望にまかせてみてもいいでしょう?」
「なにを言って……」
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