BL小説短編集

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
238 / 329
抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい

63

しおりを挟む
 自分の心をあたたかく包み込む笑顔を目の当たりにして、なにか言葉を発しようとしても、うまく声にならず、ベニーの目尻に涙が滲んでいった。

「ベニーは意外と泣き虫なんですね。これじゃあつらいことがあっても、僕は泣くことができないじゃないですか」

「もっ申し訳ございません。告げたいことがあるのに、うまく言葉にできず……」

「そんなベニーを僕は支えたいです。とはいえ高校生でまだまだだから、たくさん迷惑かけちゃうかもしれないですけど」

 クスクス笑いながら、目の前にある顔を両手で包み込み、そっとくちびるを重ねた。その衝撃で弘泰の頬に、ベニーのあたたかい涙が零れ落ちる。

「ベニー、もう泣く必要はないんですよ」

「弘泰……」

「貴方がここまで、僕を追いかけてくれた。だから恋が実ったんです」

「そうです。抗うことのできない恋に堕とすために、私は弘泰を追いかけました」

 やっと涙を拭い、笑みを浮かべたベニーを見上げた弘泰は、せがむように白衣の襟を掴んだ。

「だったら徹底的に堕とすために、僕を抱いてください」

 ベニーは顔を寄せた弘泰の腕を掴み、手荒に外した。いつもは丁寧に扱ってくれるのに、らしくない行為のせいで、弘泰はショックを隠せない。外された両手を見つめるので、精いっぱいだった。

「大切な弘泰を抱くのに、こんな場所ではダメです。落ち着かないですし……」

「僕らの出逢いの場所なのに?」

「そうなんですが……。不測の事態に陥ったときの対処方法が、まったく思いつきません」

「不測の事態?」

 唇を尖らせて語尾をあげながら問いかける弘泰を、弱り切った表情でベニーは眺めた。

「弘泰に跨ってる姿を誰かに見られたりしたら、私は警察行きですからね」

 言いながらわざわざ両手首をくっつけて、捕まったときの格好をしてみせるベニーに、弘泰は声をあげて笑った。落ち込んだのを悟って、わざわざ笑いをとってくれたことが嬉しくてならない。

「それじゃあ、そんなことにならないアイディアを僕が考えますので、ノってくれますか?」

 弘泰はしたり顔をしながら、上目遣いでベニーを見つめる。

「弘泰、君はマモルの性格を、いい意味で受け継いでしまったようですね。このままでは、徹底的に翻弄されそうです……」

 未来を予言したベニーのセリフが当たるかどうかは、後ほどわかるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...