232 / 329
抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
57
しおりを挟む
「絶対に忘れません。ローランド様と同じようにマモル、君個人のことをしっかり覚えておきます。それくらい、大切な存在なのですから」
「自分自身の躰がない、ちっぽけな俺みたいなのを、ベニーは忘れずにいられるのか?」
自身の秘めた想いを込めたというのに、つっけんどんな物言いでマモルは訊ねた。
「ちっぽけなんて存在ではありません。君のおこなった功績は、私の中で生き続けるのです。弘泰への愛の形で――」
「ベニー……」
ベニーに縋りつくマモルが、おずおずと顔を上げた。剣のない眼差しに見つめられるお蔭で、今まで疑問に思っていたことが、躊躇することなく訊ねられそうだった。
「私たちはしてはいけない自殺という行為で、こうして生まれ変わったわけですが、君はどのようにして、肉体と魂を繋げているのでしょう?」
「え? それってどうして」
「ちなみに私は、死んだばかりの魂を捕らえて食し、この身に補ていしてます。この道具を使って、魂を狩るんです」
言いながら魂を捕らえる際に使う、光り輝く銀の銛(もり)を、右手に浮かびあがらせた。
「銛の柄についてる赤い紐って、髪の毛を縛ってるのと同じものなのか?」
「ええ。切っても問題なさそうだったので、使っております」
「俺はこうして、エネルギーを補給してる」
マモルは歯茎がでるくらいに唇を開き、伸びきった犬歯を見せる。
「吸血ですか……」
「狙った相手の目を見つめて、動かないように催眠を施し、酩酊状態にしてから、首筋に噛みつく。噛んだあともすぐに皮膚が再生されて、痕が全然残らない」
マモルはわかりやすい説明しながら、ベニーの首元に顔を寄せて、はぐっと噛みつく。
「んっ!」
痛みは感じなかったものの、肌をなぞる舌の動きや血をすすって喉を鳴らす音が、すぐ傍で鮮明に聞こえ、ベニーは妙な気持ちになってしまった。
「やっぱりな」
牙を抜くなり告げられた言葉を不思議に思いながら、噛まれたところを撫でてみる。吸血された痕跡だけじゃなく、肌を舐められた湿り気すら、まったく感じさせなかった。
「マモル?」
言葉の意味がわかりかねて名前を呼ぶと、至極つまらなそうな表情を見せた。
「血を吸うと躰の気だるさがなくなって、パワーが漲る感じになるんだけど、ベニーを血を吸ってもなにも感じない」
「ということは君や私と同じく、蘇った人間の血を吸っても、無意味なんですね」
「自分自身の躰がない、ちっぽけな俺みたいなのを、ベニーは忘れずにいられるのか?」
自身の秘めた想いを込めたというのに、つっけんどんな物言いでマモルは訊ねた。
「ちっぽけなんて存在ではありません。君のおこなった功績は、私の中で生き続けるのです。弘泰への愛の形で――」
「ベニー……」
ベニーに縋りつくマモルが、おずおずと顔を上げた。剣のない眼差しに見つめられるお蔭で、今まで疑問に思っていたことが、躊躇することなく訊ねられそうだった。
「私たちはしてはいけない自殺という行為で、こうして生まれ変わったわけですが、君はどのようにして、肉体と魂を繋げているのでしょう?」
「え? それってどうして」
「ちなみに私は、死んだばかりの魂を捕らえて食し、この身に補ていしてます。この道具を使って、魂を狩るんです」
言いながら魂を捕らえる際に使う、光り輝く銀の銛(もり)を、右手に浮かびあがらせた。
「銛の柄についてる赤い紐って、髪の毛を縛ってるのと同じものなのか?」
「ええ。切っても問題なさそうだったので、使っております」
「俺はこうして、エネルギーを補給してる」
マモルは歯茎がでるくらいに唇を開き、伸びきった犬歯を見せる。
「吸血ですか……」
「狙った相手の目を見つめて、動かないように催眠を施し、酩酊状態にしてから、首筋に噛みつく。噛んだあともすぐに皮膚が再生されて、痕が全然残らない」
マモルはわかりやすい説明しながら、ベニーの首元に顔を寄せて、はぐっと噛みつく。
「んっ!」
痛みは感じなかったものの、肌をなぞる舌の動きや血をすすって喉を鳴らす音が、すぐ傍で鮮明に聞こえ、ベニーは妙な気持ちになってしまった。
「やっぱりな」
牙を抜くなり告げられた言葉を不思議に思いながら、噛まれたところを撫でてみる。吸血された痕跡だけじゃなく、肌を舐められた湿り気すら、まったく感じさせなかった。
「マモル?」
言葉の意味がわかりかねて名前を呼ぶと、至極つまらなそうな表情を見せた。
「血を吸うと躰の気だるさがなくなって、パワーが漲る感じになるんだけど、ベニーを血を吸ってもなにも感じない」
「ということは君や私と同じく、蘇った人間の血を吸っても、無意味なんですね」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる