BL小説短編集

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
228 / 329
抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい

53

しおりを挟む
「んあっ! い、やだっ」

 大きな声をあげたと同時に白目を剥き、がっくりと顔を俯かせる。

「弘泰、どうしましたか?」

 俯いた顔を見ようとしたら、肩を掴む片手をいきなり叩かれた。抵抗を示すその行為で、慌てて両手を外す。

「ベニー、少しは抵抗すれよ、まったく!」

「すみません。弘泰に求められる悦びに、つい身をまかせてしまいました」

 小さく頭を下げて、謝罪を口にする。言葉遣いの違いに、マモルと交代したのがすぐにわかった。

「いい大人が、高校生に翻弄されるなって。俺が嫌がってるのが、わかってるくせにさ」

 おずおずと目の前を見ると、明堂の顔をしたマモルは、突き放した言い方をしたというのに、それに比例する態度をしていなかった。

 どこか嬉しげに瞳を細めながら、ベニーを見上げる。

「マモル?」

「おまえが弘泰に余計なことを言ったせいで、俺の仕事が激減しちゃっただろ。どう責任をとってくれるんだ?」

「責任と言われましても……」

(どういうことでしょうか。マモルの言葉と態度がちぐはぐで、何を考えているのか、さっぱりわかりません)

「弘泰の性格から、こういうことになるのを、予測していたんだろ。ベニーとしては、どう対処しようと考えていたんだ?」

 笑いながら額を人差し指で突っついて、顔を覗き込んで問いかける。明堂の目の中に映る自分の顔は、思いっきり困惑していた。

「話し合いでその……、対処しようとは思っていたのですが」

「話し合いって、どんな?」

「まずは、ねぎらってあげようと――」

 歯切れの悪いベニーの返答を聞いた明堂は、顎を引いて近づけていた距離を少しだけ遠ざけた。

「ねぎらうって、そんなことされる覚えはないって」

 まぶたを伏せて告げられるセリフを否定しなければと、明堂が自分を見ていないことがわかりつつも、首を横に振ってから丁寧に言葉を選んで語る。

「私と同じように、自殺できない躰に弘泰が転生した以上、どんなにつらいことがあっても、メンタルが強くなければ、やがて精神が崩壊していたと思うんです。それを君が自ら盾となって、防いでくれていたのですよ。ねぎらって当然のことかと思います」

 ベニーが今までのことを整理して説明したら、目の前にある笑顔がちょっとずつ崩れていった。

「だって俺がこの世で生きるためには、そうするしか手がなかった。弘泰の心のバランスがぐにゃぐにゃになっていくのを、見ていられなかったんだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...