226 / 329
抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
51
しおりを挟む
離れる前に、明堂をぎゅっと強く抱き締めてから腰を上げ、颯爽と扉に向かう。手早くプレートをひっくり返したのちに扉を閉めて、しっかり鍵をかけた。
「さてと、弘泰。聞きたいことがあります」
ふたたび腰かけて枕元に座ると、明堂がもそもそ起きだした。
「なんですか?」
気だるそうな雰囲気を醸していることに、ベニーとしては違和感を覚えたが、聞いてみたかったことを口にする。
「お兄さんの件について」
「あ……」
「病気療養のために休学したと先生から聞きましたが、詳しい情報が上からおりてこなくて。元気そうだった彼が、深刻な病とは考えにくいですし」
言い終えないうちに、明堂はベニーの片腕に縋りつき、顔を俯かせたまま説明をはじめる。
「ベニー先生に言われた言葉を、思いきって実践してみたんです」
そのときのことを思い出したのか、縋りつく手が僅かに震えだした。
「弘泰、腕を離してください。宥めようにもこれでは、君を抱きしめられません」
「ベニー先生……」
「ふたりきりのときは、ベニーと呼んでください。私は君のものなのですから、さあ」
飛び込みやすいように胸を広げると、迷うことなく明堂はベニーの躰に抱きついた。
「弘泰……」
苦しいくらいに自分を抱きしめる明堂の頭を、何度も何度も優しく撫でてやる。
「僕、ベニーに言われた『抗ってみませんか』って言葉に、思いきって従ってみたんです。なけなしの勇気を出しました」
「お兄さんが、君を襲ってきたときにですか?」
「はい。頭の中でマモルが代われって言ってきたけど、それを無視して兄さんに抵抗したんです」
ベニーは頭を撫でていた手で、明堂の躰を抱きしめ返した。
「今までできなかったことを、よくやりとげましたね」
「ベニー以外に、触れられたくなかったから。だって僕は、ベニーのものなんでしょう?」
「ええ、そうですよ」
「だったら、キスしてください。僕をこのまま奪って」
「弘泰聞いてください。君の中にいるマモルのことです」
腕の力を抜いて明堂の顔を見つめながら、説得を試みる。
熱情に動かされて自分を欲しがる彼を、うまくコントロールできる気は、正直なかった。でもここで感情に流され、欲情を満たす行為に及んでしまった場合、間違いなく明堂の中にいるマモルが、何かしでかす恐れがある。
それだけは阻止しなければと心を鬼にして、明堂に語りかけた。
「さてと、弘泰。聞きたいことがあります」
ふたたび腰かけて枕元に座ると、明堂がもそもそ起きだした。
「なんですか?」
気だるそうな雰囲気を醸していることに、ベニーとしては違和感を覚えたが、聞いてみたかったことを口にする。
「お兄さんの件について」
「あ……」
「病気療養のために休学したと先生から聞きましたが、詳しい情報が上からおりてこなくて。元気そうだった彼が、深刻な病とは考えにくいですし」
言い終えないうちに、明堂はベニーの片腕に縋りつき、顔を俯かせたまま説明をはじめる。
「ベニー先生に言われた言葉を、思いきって実践してみたんです」
そのときのことを思い出したのか、縋りつく手が僅かに震えだした。
「弘泰、腕を離してください。宥めようにもこれでは、君を抱きしめられません」
「ベニー先生……」
「ふたりきりのときは、ベニーと呼んでください。私は君のものなのですから、さあ」
飛び込みやすいように胸を広げると、迷うことなく明堂はベニーの躰に抱きついた。
「弘泰……」
苦しいくらいに自分を抱きしめる明堂の頭を、何度も何度も優しく撫でてやる。
「僕、ベニーに言われた『抗ってみませんか』って言葉に、思いきって従ってみたんです。なけなしの勇気を出しました」
「お兄さんが、君を襲ってきたときにですか?」
「はい。頭の中でマモルが代われって言ってきたけど、それを無視して兄さんに抵抗したんです」
ベニーは頭を撫でていた手で、明堂の躰を抱きしめ返した。
「今までできなかったことを、よくやりとげましたね」
「ベニー以外に、触れられたくなかったから。だって僕は、ベニーのものなんでしょう?」
「ええ、そうですよ」
「だったら、キスしてください。僕をこのまま奪って」
「弘泰聞いてください。君の中にいるマモルのことです」
腕の力を抜いて明堂の顔を見つめながら、説得を試みる。
熱情に動かされて自分を欲しがる彼を、うまくコントロールできる気は、正直なかった。でもここで感情に流され、欲情を満たす行為に及んでしまった場合、間違いなく明堂の中にいるマモルが、何かしでかす恐れがある。
それだけは阻止しなければと心を鬼にして、明堂に語りかけた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる