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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
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「何回もヤってるのに、抵抗するなって」
『弘泰、代わってやる。落ちろ』
同時に、外と中から声が聞こえた。いつもならその声に耳を傾けて、伊月にはされるがままの状態でマモルと交代していたが。
「嫌だっ! 僕は負けないっ!」
なんとか力任せに暴れて、伊月の手を振り解きながら布団から頭を出しつつ、ベッドから下りようとした。その瞬間に、胸ぐらを掴まれて引き留められる。一瞬躊躇したが、掴まれてることを無視して、ベッドから逃げ出した。
ビリビリッ!
ワイシャツのボタンが派手に弾け飛び、床に転がった。その転がる様子が、自由を手に入れた自分のように見えてしまった。縛りつけられていたところから見事に抜け出し、好きな場所に飛んでいけることを喜ばずにはいられない。
「弘泰っ!」
伊月の掴んだ手によって破かれた明堂のワイシャツを見たからか、見る間に力が抜け落ち、震えるてのひらが、恐るおそる引いていった。その後、信じられないものを見る目で弟を凝視する。
「もうこれ以上、僕に触らないでください」
「今更なんだよ、それは」
「今更なんかじゃない。僕はずっと我慢してきた。兄さんにされるのも、学校でいじめられるのも、もうたくさんっ!」
爆発した感情が声になって出た。すると、下から声かけがなされる。
「どうしたの? ふたりとも、なにかあった?」
この機を逃してなるかと、明堂は踵を返して部屋を飛び出し、一気に階段を駆け下りた。リビングから顔を覗かせて、二階の様子を窺っていた母親はその姿に驚き、慌てて傍にやって来た。
「弘泰、どうしてそんな恰好……。伊月と喧嘩でもした?」
自分の連れ子である伊月が、手をあげたと思ったんだろう。心配そうな面持ちで、明堂をぎゅっと抱きしめた。
「兄さんが僕を襲いました。それが嫌で抵抗したら、こんな格好に……」
「襲ったって、それは――」
「ずっと、性的な暴行を受けていたんです」
「弘泰っ!」
階段の最上段で、母親と明堂のやり取りを見ていた伊月が、愕然としながら叫ぶ。
「伊月、貴方なんてことをしてくれたの……」
「弘泰の自作自演だよ。俺はそんなことしてないって」
首を横に振りながら階段を下りた伊月は、縋るような眼差しでふたりに近づいた。
(母さんとしては、実の息子が旦那の連れ子に手を出していたなんて事実、認めたくないだろうな)
母親に抱かれながら俯き、いろいろ考えていて、それが目に入った。
ベニーが自分につけた、胸元のキスマーク。
『弘泰が寂しくならないように、私も痕を残しておきます』
楕円の形をしたベニーからのキスマークを見ているうちに、明堂の頭の中が閃く。
「兄さんは嘘をついてます。これがその証拠です。こんなもの、自作自演でつけることはできません!」
嘘をつかれるのなら、自分も嘘をついて真実にしてやろうと、堂々と嘘八百を並べたてた。
破れたワイシャツを自ら脱ぎ捨てて、ベニーにつけられた痕を母親に見せつける。
「俺はそんなもの、つけた記憶はない!」
「母さん、僕を信じて。僕は兄さんにイヤらしいことをされて、ずっと苦しんでいたんです」
怒りに躰を震わせる伊月と、半裸になって涙ながらに訴えた明堂。母親のジャッジは、伊月に平手打ちしたことで、あっけなく決着がついてしまった。
『弘泰、代わってやる。落ちろ』
同時に、外と中から声が聞こえた。いつもならその声に耳を傾けて、伊月にはされるがままの状態でマモルと交代していたが。
「嫌だっ! 僕は負けないっ!」
なんとか力任せに暴れて、伊月の手を振り解きながら布団から頭を出しつつ、ベッドから下りようとした。その瞬間に、胸ぐらを掴まれて引き留められる。一瞬躊躇したが、掴まれてることを無視して、ベッドから逃げ出した。
ビリビリッ!
ワイシャツのボタンが派手に弾け飛び、床に転がった。その転がる様子が、自由を手に入れた自分のように見えてしまった。縛りつけられていたところから見事に抜け出し、好きな場所に飛んでいけることを喜ばずにはいられない。
「弘泰っ!」
伊月の掴んだ手によって破かれた明堂のワイシャツを見たからか、見る間に力が抜け落ち、震えるてのひらが、恐るおそる引いていった。その後、信じられないものを見る目で弟を凝視する。
「もうこれ以上、僕に触らないでください」
「今更なんだよ、それは」
「今更なんかじゃない。僕はずっと我慢してきた。兄さんにされるのも、学校でいじめられるのも、もうたくさんっ!」
爆発した感情が声になって出た。すると、下から声かけがなされる。
「どうしたの? ふたりとも、なにかあった?」
この機を逃してなるかと、明堂は踵を返して部屋を飛び出し、一気に階段を駆け下りた。リビングから顔を覗かせて、二階の様子を窺っていた母親はその姿に驚き、慌てて傍にやって来た。
「弘泰、どうしてそんな恰好……。伊月と喧嘩でもした?」
自分の連れ子である伊月が、手をあげたと思ったんだろう。心配そうな面持ちで、明堂をぎゅっと抱きしめた。
「兄さんが僕を襲いました。それが嫌で抵抗したら、こんな格好に……」
「襲ったって、それは――」
「ずっと、性的な暴行を受けていたんです」
「弘泰っ!」
階段の最上段で、母親と明堂のやり取りを見ていた伊月が、愕然としながら叫ぶ。
「伊月、貴方なんてことをしてくれたの……」
「弘泰の自作自演だよ。俺はそんなことしてないって」
首を横に振りながら階段を下りた伊月は、縋るような眼差しでふたりに近づいた。
(母さんとしては、実の息子が旦那の連れ子に手を出していたなんて事実、認めたくないだろうな)
母親に抱かれながら俯き、いろいろ考えていて、それが目に入った。
ベニーが自分につけた、胸元のキスマーク。
『弘泰が寂しくならないように、私も痕を残しておきます』
楕円の形をしたベニーからのキスマークを見ているうちに、明堂の頭の中が閃く。
「兄さんは嘘をついてます。これがその証拠です。こんなもの、自作自演でつけることはできません!」
嘘をつかれるのなら、自分も嘘をついて真実にしてやろうと、堂々と嘘八百を並べたてた。
破れたワイシャツを自ら脱ぎ捨てて、ベニーにつけられた痕を母親に見せつける。
「俺はそんなもの、つけた記憶はない!」
「母さん、僕を信じて。僕は兄さんにイヤらしいことをされて、ずっと苦しんでいたんです」
怒りに躰を震わせる伊月と、半裸になって涙ながらに訴えた明堂。母親のジャッジは、伊月に平手打ちしたことで、あっけなく決着がついてしまった。
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