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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
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「ベニー先生……」
「すべては、私の中にある傲慢から生まれました。自分の恋を叶えるために、主の手を汚したのです。その結果、ここで転生した弘泰は苦しむことになった。それなのに私は自分の想いのためだけに追いかけて、そして……」
「僕は全然気にしません。ここまで追いかけてくれて嬉しかったです」
言いにくそうにしたベニーのセリフを断ち切る感じで、明堂は喋った。少しでも好きな人の心を軽くしてあげたいと、思わずにはいられない。
「ですが現状、君がつらい人生を送っていることには、変わりありません。それは、私のせいなのですよ。君の中にいるもうひとりの彼は、私を罵りました。当然のことです。人の不幸の上に、幸せは成り立たないものですから」
明堂に喋らせないようにするためか、ベニーは一気にまくしたてた。
「マモルがそう言うのは、当たり前です。僕の嫌なことを全部引き受けているせいで、ベニー先生に対して、逆恨みしているんです」
「マモルという名でしたか」
はじめてマモルの名を知り、ベニーの表現が幾分穏やかなものに変わった。
「僕を守ってくれるからマモルなんて、安易なネーミングなんですけどね」
「弘泰が嫌だなと思った瞬間に、彼と交代する感じでしょうか?」
「はい。不快感を感じたら、どこからともなく声が聞こえてきます。「変わってやるぞ」って。そしたら僕は目を閉じて、何も聞こえない穴の中に落ちるんです。自分の体温や匂いすら感じることのできない暗くて深い穴の中で、両膝を抱えたまま、嫌なことが終わるのをじっと待つだけなんです」
ベニーは明堂の説明を聞いて、気難しい表情をしながら、さきほどまでのやり取りを思い出す。
「終わったら、弘泰は意識を取り戻す感じでしょうか」
マモルとの会話や、明堂自身の意識の有無の経緯から、あり得そうなことを訊ねる。
「そうです。だからさっきみたいな、いきなり戻るなんてこと、今までなかったんです」
「マモルは私から逃げたのです。大嫌いな私に触れられたくなくて、大騒ぎしてました」
「ベニー先生を嫌い、なんでしょうか……」
質問というよりも、自分に問いかけた感じで呟いた。当然、中にいるマモルからの返事はおろか、反応すらなかった。
「すべては、私の中にある傲慢から生まれました。自分の恋を叶えるために、主の手を汚したのです。その結果、ここで転生した弘泰は苦しむことになった。それなのに私は自分の想いのためだけに追いかけて、そして……」
「僕は全然気にしません。ここまで追いかけてくれて嬉しかったです」
言いにくそうにしたベニーのセリフを断ち切る感じで、明堂は喋った。少しでも好きな人の心を軽くしてあげたいと、思わずにはいられない。
「ですが現状、君がつらい人生を送っていることには、変わりありません。それは、私のせいなのですよ。君の中にいるもうひとりの彼は、私を罵りました。当然のことです。人の不幸の上に、幸せは成り立たないものですから」
明堂に喋らせないようにするためか、ベニーは一気にまくしたてた。
「マモルがそう言うのは、当たり前です。僕の嫌なことを全部引き受けているせいで、ベニー先生に対して、逆恨みしているんです」
「マモルという名でしたか」
はじめてマモルの名を知り、ベニーの表現が幾分穏やかなものに変わった。
「僕を守ってくれるからマモルなんて、安易なネーミングなんですけどね」
「弘泰が嫌だなと思った瞬間に、彼と交代する感じでしょうか?」
「はい。不快感を感じたら、どこからともなく声が聞こえてきます。「変わってやるぞ」って。そしたら僕は目を閉じて、何も聞こえない穴の中に落ちるんです。自分の体温や匂いすら感じることのできない暗くて深い穴の中で、両膝を抱えたまま、嫌なことが終わるのをじっと待つだけなんです」
ベニーは明堂の説明を聞いて、気難しい表情をしながら、さきほどまでのやり取りを思い出す。
「終わったら、弘泰は意識を取り戻す感じでしょうか」
マモルとの会話や、明堂自身の意識の有無の経緯から、あり得そうなことを訊ねる。
「そうです。だからさっきみたいな、いきなり戻るなんてこと、今までなかったんです」
「マモルは私から逃げたのです。大嫌いな私に触れられたくなくて、大騒ぎしてました」
「ベニー先生を嫌い、なんでしょうか……」
質問というよりも、自分に問いかけた感じで呟いた。当然、中にいるマモルからの返事はおろか、反応すらなかった。
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