195 / 329
抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
20
しおりを挟む
「ルール?」
きょとんとして訊ねたローランドに、明堂はまぶたを伏せて説明する。
「カースト制度っていう上下関係が、僕の知らない間に、クラスの中でできあがっていたんです。なんでも下位の人は上位の人に、メッセージを送っちゃダメなんだそうです」
「巷で噂の、スクールカーストってやつか。つまり下位のヤツらは上位の会話を、既読無視すれってことなのか?」
ローランドは腕を組みながら明堂に視線を投げかけると、それに反応するように静かに頷いた。
「僕、新しい環境に慣れることに必死になって、周りに合わせなきゃいけないって、焦ってしまい……」
「なるほど。周りに合わせようとして、アプリの会話にたくさん乱入した。不器用なりに一生懸命、コミュニケーションをとったと思っただろう?」
持っている単行本を両手で握りしめ、悔しそうな表情をありありと見せた。
「クラスメートと仲良くなろうと、勇気を出して書き込みしたのに、そのせいでペナルティが課せられて、カーストの最下位になりました。友達どころか、奴隷みたいな扱いを受けてます……」
日の光を浴びた朱みがかった髪は眩いくらいに輝いているのに、その下にある黒曜石のような瞳は翳りを帯びて、心の闇を表しているように、ローランドの目に映った。
「ちなみにカーストの上位にいるヤツは、どうしてその地位にいられるんだ?」
「クラスの中で目立ってる人や、部活で活躍してる人と、その取り巻きですね。他にもご両親の仕事の関係、官僚に勤めていたり、弁護士やお医者さんだったり。芸能界と繋がりがある人も、上位にいます」
「そのカースト制度っていうのは、全学年共通なのか? だって君には、お兄さんがいるだろう?」
問いかけの中の『お兄さん』の言葉を聞いた瞬間、明堂は一瞬だけ躰をビクつかせた。隣でそれを目の当たりにして、ローランドの口角に少しだけ笑みが浮かぶ。
(こりゃどう見ても、愛し合ってる兄弟という反応じゃない。よかったな、ベニー)
「兄さんは僕と違ってできがいいので、クラスの中で浮くようなことはないと思います。むしろ、中心になって引っ張っていくというか」
「まぁ会長するくらいだから、引っ張っていくのは得意分野だと思うけどさ。そのやり方がなぁ……」
「なにかあるんですか?」
上目遣いで見つめる明堂に、ローランドは顔の前で激しく片手を横に振りまくった。
「いいや、ないない。それよりもそのお兄さんのこと、明堂くんは好きだったりするか? もちろんこれは、恋愛感情を含めた話だ」
「れれれ、恋愛感情なんてそんな! 畏れ多くて無理ですよ」
「畏れ多いねぇ。じゃあ他に好きなヤツいるの? 気になるヤツでもいいや」
きょとんとして訊ねたローランドに、明堂はまぶたを伏せて説明する。
「カースト制度っていう上下関係が、僕の知らない間に、クラスの中でできあがっていたんです。なんでも下位の人は上位の人に、メッセージを送っちゃダメなんだそうです」
「巷で噂の、スクールカーストってやつか。つまり下位のヤツらは上位の会話を、既読無視すれってことなのか?」
ローランドは腕を組みながら明堂に視線を投げかけると、それに反応するように静かに頷いた。
「僕、新しい環境に慣れることに必死になって、周りに合わせなきゃいけないって、焦ってしまい……」
「なるほど。周りに合わせようとして、アプリの会話にたくさん乱入した。不器用なりに一生懸命、コミュニケーションをとったと思っただろう?」
持っている単行本を両手で握りしめ、悔しそうな表情をありありと見せた。
「クラスメートと仲良くなろうと、勇気を出して書き込みしたのに、そのせいでペナルティが課せられて、カーストの最下位になりました。友達どころか、奴隷みたいな扱いを受けてます……」
日の光を浴びた朱みがかった髪は眩いくらいに輝いているのに、その下にある黒曜石のような瞳は翳りを帯びて、心の闇を表しているように、ローランドの目に映った。
「ちなみにカーストの上位にいるヤツは、どうしてその地位にいられるんだ?」
「クラスの中で目立ってる人や、部活で活躍してる人と、その取り巻きですね。他にもご両親の仕事の関係、官僚に勤めていたり、弁護士やお医者さんだったり。芸能界と繋がりがある人も、上位にいます」
「そのカースト制度っていうのは、全学年共通なのか? だって君には、お兄さんがいるだろう?」
問いかけの中の『お兄さん』の言葉を聞いた瞬間、明堂は一瞬だけ躰をビクつかせた。隣でそれを目の当たりにして、ローランドの口角に少しだけ笑みが浮かぶ。
(こりゃどう見ても、愛し合ってる兄弟という反応じゃない。よかったな、ベニー)
「兄さんは僕と違ってできがいいので、クラスの中で浮くようなことはないと思います。むしろ、中心になって引っ張っていくというか」
「まぁ会長するくらいだから、引っ張っていくのは得意分野だと思うけどさ。そのやり方がなぁ……」
「なにかあるんですか?」
上目遣いで見つめる明堂に、ローランドは顔の前で激しく片手を横に振りまくった。
「いいや、ないない。それよりもそのお兄さんのこと、明堂くんは好きだったりするか? もちろんこれは、恋愛感情を含めた話だ」
「れれれ、恋愛感情なんてそんな! 畏れ多くて無理ですよ」
「畏れ多いねぇ。じゃあ他に好きなヤツいるの? 気になるヤツでもいいや」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる