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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
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「ロレザス先生、俺の弘泰に手を出さないでください。いいですね?」
保健室中に響く大声で告げてから、ベニーを放り出す。驚きのあまり固まっていると、明堂は顔を背けるようにして、足早に出て行った。
「いろいろ驚かせてくれる男ですね……」
ベニーは乱された白衣の襟を両手で直し、会話の最中に靴音がしたところに視線を向ける。するとローランドは人差し指を口元に当てた姿で登場するなり、持っているスマホの画面を見せた。
『盗聴器が仕掛けられた。ロッカーの裏』
表示されている文字を素早く読み取って、書かれた場所へ静かに足を運び、壁とロッカーの隙間を覗いてみる。ワイシャツのボタンくらいの黒くて小さな塊が、そこに転がっていた。すんなり取れる位置にあったので、腰を屈めてそのまま拾い、迷うことなく靴で踏みつける。
「すげぇな、あの会長。喚きながら、そこに盗聴器を投げ入れたんだぜ。コントロール抜群すぎるだろ」
目を瞬かせながら、ローランドは驚きを示す。ベニーは踏みつけて破壊した盗聴器をゴミ箱に捨てつつため息をつき、呟くように口を開く。
「この学校のあちこちに盗聴器が仕掛けられてるのは、彼の仕業でしょう」
「だがここにあらかじめ仕掛けられたものは、おまえが排除した。だからもう一度仕掛けるべく、保健室に顔を出したわけか」
「大事な弟に手を出されないように牽制しながら、ね……」
簡単に恋が成就するとは思っていなかったが、厄介そうな今回のライバル明堂伊月の胡散臭さに、心の底からゲンナリした。
「ベニー、あのさ」
「はい?」
「ああして明堂会長に牽制されたんだから、おいそれと近づかないほうがいいと思う」
気落ちするベニーに、ローランドは的確なアドバイスをした。
「近づかずに、どうやってアプローチすればいいのでしょうか……」
指摘されたことが的確すぎて、消え入りそうな声で返事をするのがやっとだった。
「俺が彼をここに来るように仕向ける」
「不器用なバーンズ先生に、そんなことができますか? 三百年の長い間、自分の恋を実らせることすら、できなかった人なのに」
力強く告げられた後押しするセリフはベニーの心に届かず、ローランドを傷つける刃となって返してしまった。
「おいおい、協力者に冷たい言葉を吐き捨てるなよ。やる気を削いでどうするんだ」
「すみません。前途多難すぎる展開が目の前にぶら下がってるせいで、マイナス感情に支配されてました」
顔を伏せながら肩を落として、思いきりうな垂れるベニーに歩み寄ったローランドは、柔らかい頬を右手で抓りあげた。
「ちょっ、いらいれす!」
保健室中に響く大声で告げてから、ベニーを放り出す。驚きのあまり固まっていると、明堂は顔を背けるようにして、足早に出て行った。
「いろいろ驚かせてくれる男ですね……」
ベニーは乱された白衣の襟を両手で直し、会話の最中に靴音がしたところに視線を向ける。するとローランドは人差し指を口元に当てた姿で登場するなり、持っているスマホの画面を見せた。
『盗聴器が仕掛けられた。ロッカーの裏』
表示されている文字を素早く読み取って、書かれた場所へ静かに足を運び、壁とロッカーの隙間を覗いてみる。ワイシャツのボタンくらいの黒くて小さな塊が、そこに転がっていた。すんなり取れる位置にあったので、腰を屈めてそのまま拾い、迷うことなく靴で踏みつける。
「すげぇな、あの会長。喚きながら、そこに盗聴器を投げ入れたんだぜ。コントロール抜群すぎるだろ」
目を瞬かせながら、ローランドは驚きを示す。ベニーは踏みつけて破壊した盗聴器をゴミ箱に捨てつつため息をつき、呟くように口を開く。
「この学校のあちこちに盗聴器が仕掛けられてるのは、彼の仕業でしょう」
「だがここにあらかじめ仕掛けられたものは、おまえが排除した。だからもう一度仕掛けるべく、保健室に顔を出したわけか」
「大事な弟に手を出されないように牽制しながら、ね……」
簡単に恋が成就するとは思っていなかったが、厄介そうな今回のライバル明堂伊月の胡散臭さに、心の底からゲンナリした。
「ベニー、あのさ」
「はい?」
「ああして明堂会長に牽制されたんだから、おいそれと近づかないほうがいいと思う」
気落ちするベニーに、ローランドは的確なアドバイスをした。
「近づかずに、どうやってアプローチすればいいのでしょうか……」
指摘されたことが的確すぎて、消え入りそうな声で返事をするのがやっとだった。
「俺が彼をここに来るように仕向ける」
「不器用なバーンズ先生に、そんなことができますか? 三百年の長い間、自分の恋を実らせることすら、できなかった人なのに」
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「おいおい、協力者に冷たい言葉を吐き捨てるなよ。やる気を削いでどうするんだ」
「すみません。前途多難すぎる展開が目の前にぶら下がってるせいで、マイナス感情に支配されてました」
顔を伏せながら肩を落として、思いきりうな垂れるベニーに歩み寄ったローランドは、柔らかい頬を右手で抓りあげた。
「ちょっ、いらいれす!」
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