167 / 329
抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい
90
しおりを挟む
「バカにするな、俺だけじゃない。他にも、同じようなヤツがいるんだって」
「人の機微が読めないせいで、まともな恋愛ができず、他力本願とはお可哀想に」
ひょいと肩を竦めながら同情するような表情を見せられたことに、カチンときた黒ずくめの男は、ベニーに睨みを利かせた。
「ベニーちゃんにだけは、慰められたくない!」
「そういうところですよ。本来なら愛する人を目の前で失った、僕を慰めてほしいというのに」
「あ……。悪かった」
今頃そのことに気づいた黒ずくめの男は、バツの悪い顔をする。それを見て、ベニーはお腹を抱えて笑いだした。
どんよりした空模様に似つかわしくない態度を目の当たりにして、黒ずくめの男は仕方なさそうに声をかける。
「本当に悪かったって。ベニーちゃんに泣かれると、どうしていいのかわからない」
「笑いすぎたせいで、涙が滲んでるだけですよ」
「おまえのことを、赤ん坊のときから見ているんだ。わかってるに決まってるだろ。泣くのが恥だと思って、さっきからわざと笑ってるくせに!」
ベニーは指摘された涙を拭って、何度か頭を振る。切なげな彩りを飾るまなざしを、しっかりと黒ずくめの男に向けた。
「恥とは思ってません。空虚になった胸の穴の大きさに対処できなくて、こうして笑ってでもいないと、何もかもがその穴に吸い込まれそうなんです」
「とっとと、新しい恋を探すんだな。そうすればその穴も、自動的に埋まるって」
「嫌です」
「即答かよ! 相手は死んじまったんだぞ、絶対に無理だ」
スパッと言い放たれたベニーのセリフに衝撃を受けたのか、黒ずくめの男は唖然としながら返事をした。
「でしたら僕も死んで、あの世に行きます」
「うわぁ、最悪のパターンだろ。俺の見守り人の成績に、汚点をつける気か?」
黒ずくめの男は頭を抱えながら、しゃがみこんだ。
「成績なんていうものがあるんですね。それは大変……」
他にもわーわー騒ぎ立てる文句を聞きながら、ベニーは考えにふけった。これまでの流れを考慮しつつ、自分が優位になる話の道筋を、パズルのように頭の中で並べる。
「ベニーちゃんそれがわかったのなら、俺のために普通に恋愛して、一生を過ごしてくれ」
「僕に普通の恋愛を促したいのでしたら、簡単なことでそれが可能になります」
「人の機微が読めないせいで、まともな恋愛ができず、他力本願とはお可哀想に」
ひょいと肩を竦めながら同情するような表情を見せられたことに、カチンときた黒ずくめの男は、ベニーに睨みを利かせた。
「ベニーちゃんにだけは、慰められたくない!」
「そういうところですよ。本来なら愛する人を目の前で失った、僕を慰めてほしいというのに」
「あ……。悪かった」
今頃そのことに気づいた黒ずくめの男は、バツの悪い顔をする。それを見て、ベニーはお腹を抱えて笑いだした。
どんよりした空模様に似つかわしくない態度を目の当たりにして、黒ずくめの男は仕方なさそうに声をかける。
「本当に悪かったって。ベニーちゃんに泣かれると、どうしていいのかわからない」
「笑いすぎたせいで、涙が滲んでるだけですよ」
「おまえのことを、赤ん坊のときから見ているんだ。わかってるに決まってるだろ。泣くのが恥だと思って、さっきからわざと笑ってるくせに!」
ベニーは指摘された涙を拭って、何度か頭を振る。切なげな彩りを飾るまなざしを、しっかりと黒ずくめの男に向けた。
「恥とは思ってません。空虚になった胸の穴の大きさに対処できなくて、こうして笑ってでもいないと、何もかもがその穴に吸い込まれそうなんです」
「とっとと、新しい恋を探すんだな。そうすればその穴も、自動的に埋まるって」
「嫌です」
「即答かよ! 相手は死んじまったんだぞ、絶対に無理だ」
スパッと言い放たれたベニーのセリフに衝撃を受けたのか、黒ずくめの男は唖然としながら返事をした。
「でしたら僕も死んで、あの世に行きます」
「うわぁ、最悪のパターンだろ。俺の見守り人の成績に、汚点をつける気か?」
黒ずくめの男は頭を抱えながら、しゃがみこんだ。
「成績なんていうものがあるんですね。それは大変……」
他にもわーわー騒ぎ立てる文句を聞きながら、ベニーは考えにふけった。これまでの流れを考慮しつつ、自分が優位になる話の道筋を、パズルのように頭の中で並べる。
「ベニーちゃんそれがわかったのなら、俺のために普通に恋愛して、一生を過ごしてくれ」
「僕に普通の恋愛を促したいのでしたら、簡単なことでそれが可能になります」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる