BL小説短編集

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
159 / 329
抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい

82

しおりを挟む
 そうして距離をとろうとしたのに、大きなベッドが伯爵の足を引っかけて、見事にそれを阻む。両腕を上げたままという無様な格好で、ベッドの上へ仰向けになったところを、ローランドは間髪入れずに颯爽と跨った。

「アーサー卿にこうして触れるのは、いつ以来でしょう?」

「ローランド、銃をおろしてくれ。た、頼む!」

 両手で構えていたのを右手のみにし、無機質な銃口を喉元に突きつける。刃物で脅されているのと変わらない行為に、伯爵は恐怖に顔を凍らせた状態で、躰をぶるぶる震えさせた。

「僕をいたぶって、楽しかったですか?」

「たたたっ、楽しいわけがないだろ、そんなの!」

 慌てふためく伯爵の喚き声が、薄暗い部屋の中に響いた。聞いたことのない怯えきったそれに、まったく反応することなく、ローランドは質問をぶつける。

「口ではそんなことを仰ってますが、とても楽しそうなお顔をしてましたよ」

「それは君を痛めつけると、俺のを締めつけて、気持ちよくなるから…とか」

 うるさいくらいの喚き声から一転、蚊の鳴くような弱々しい声で伯爵は答える。

「では僕のをアーサー卿の中に挿れて、何らかの方法で痛めつけたら、すごく気持ちよくなれるのですね?」

 ローランドは小さく笑いながら、自身の下半身をアーサー卿のモノに擦りつけた。

「ヒイィッ! なんで勃ってるんだっ」

「好きなお方にこうして跨るのですから、当然のことかと思います。アーサー卿は変わらないのですね」

「こんな状況下で、勃つわけがないだろ!」

「なんだか嘘つきの貴方を示しているみたいで、とても寂しいです」

 蔑んだ瞳で見下ろされたせいで、伯爵の中にあるなにかがプツンと切れた。

「ローランド、いい加減に銃をおろしてくれ!」

「嘘つき……」

「嘘など言ってない。君を愛してる! 本当だ」

「この部屋に案内してくれた、貴方の執事が言いました。今日の午前中は来客がないから、ゆっくりしていってくださいと」

「え?」

 ローランドの突きつけた言葉に、血の気がさーっと引いていく。

「それなのにアーサー卿は先ほど、来客があると仰った」

「そ、それは――」

 伯爵はこの場を何とか取り繕うセリフを考えるが、右から左へと流れていくだけで、口をパクパクさせるのが精一杯だった。

「何度、僕に嘘をつくのですか? 愛してもいない相手に、どうして好きだと言えるのです!」

 ローランドは、トリガーと横並びしている安全装置を指先で一緒に引き、セーフティを解除した。カチッという小さな金属音を耳にした途端に、伯爵は一気に取り乱し、上げたままにしている両腕をベッドに叩きつけながら、上擦った声で叫んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

処理中です...