119 / 329
抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい
42
しおりを挟む
*:,.:.,.*:,.:.,.*:,.:.,.。
保管されている残りの資料を取りに行ってくれと、ローランドから命令されたベニーは、ハンドルを握りしめてアーサー卿の別荘を目指していた。
『すべて持ち出さなくていいように、全部で8個厳選しておいた。箱の右隅にRの印を付けてある。伯爵の細工をさけるために、とても小さな文字で書いてあるから、確認して運び出すように。あとはお前の目で見て、必要なものを持ち帰るように』
(昨日は資料を選ぶため、ローランド様は帰宅が遅くなったというのに、伯爵の別荘に行ったという事実にとらわれて、いらない嫉妬に駆られてしまった)
内心昨夜のおこないを反省しつつ、気を引き締める。向かう先が厄介な相手だけに、これ以上の失態は許されなかった。
あらかじめローランドに書いてもらった地図を見て運転していたが、途中からそれが必要なくなる。別荘と呼ぶには似つかわしくないくらいに大きな屋敷だったため、遠くからでもそれがよく分かったからだった。
「遠路はるばる、ようこそ執事殿。って、やはり男爵は不在だったか」
荷物の運び出しをする関係で、屋敷の正面に車を停めず、裏に駐車したというのに、伯爵がわざわざ勝手口から出てきた。
愛想笑いを浮かべながら車から降り立つベニーを見て、あからさまに落胆した表情の伯爵に向かって口を開く。
「お出迎えありがとうございます。電話では私だけが、こちらにお伺いすることを伝えていたのですが?」
「ああ、それは聞いていたけどね。男爵はシャイだから、隠れてやって来るかと思ったんだ」
「昨日の今日で、何度もこちらに顔を出す暇がございません。地元での会合に、出席の予定がありますし」
ぺこりと深く頭を下げて、一応詫びをいれる。
「男爵は昨日のこと、何か言ってた?」
「昨日のこととは?」
頭をあげて顔を見つめると、伯爵は蒼い瞳を細めて唇に微笑みをたたえた。意味ありげなその笑みに、嫌な予感が胸の中をよぎる。
保管されている残りの資料を取りに行ってくれと、ローランドから命令されたベニーは、ハンドルを握りしめてアーサー卿の別荘を目指していた。
『すべて持ち出さなくていいように、全部で8個厳選しておいた。箱の右隅にRの印を付けてある。伯爵の細工をさけるために、とても小さな文字で書いてあるから、確認して運び出すように。あとはお前の目で見て、必要なものを持ち帰るように』
(昨日は資料を選ぶため、ローランド様は帰宅が遅くなったというのに、伯爵の別荘に行ったという事実にとらわれて、いらない嫉妬に駆られてしまった)
内心昨夜のおこないを反省しつつ、気を引き締める。向かう先が厄介な相手だけに、これ以上の失態は許されなかった。
あらかじめローランドに書いてもらった地図を見て運転していたが、途中からそれが必要なくなる。別荘と呼ぶには似つかわしくないくらいに大きな屋敷だったため、遠くからでもそれがよく分かったからだった。
「遠路はるばる、ようこそ執事殿。って、やはり男爵は不在だったか」
荷物の運び出しをする関係で、屋敷の正面に車を停めず、裏に駐車したというのに、伯爵がわざわざ勝手口から出てきた。
愛想笑いを浮かべながら車から降り立つベニーを見て、あからさまに落胆した表情の伯爵に向かって口を開く。
「お出迎えありがとうございます。電話では私だけが、こちらにお伺いすることを伝えていたのですが?」
「ああ、それは聞いていたけどね。男爵はシャイだから、隠れてやって来るかと思ったんだ」
「昨日の今日で、何度もこちらに顔を出す暇がございません。地元での会合に、出席の予定がありますし」
ぺこりと深く頭を下げて、一応詫びをいれる。
「男爵は昨日のこと、何か言ってた?」
「昨日のこととは?」
頭をあげて顔を見つめると、伯爵は蒼い瞳を細めて唇に微笑みをたたえた。意味ありげなその笑みに、嫌な予感が胸の中をよぎる。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる