110 / 329
抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい
33
しおりを挟む
「今回のように、ベニーと離れて仕事をすることになっても、お前に恥じないように一生懸命に頑張ってみせる」
「お願いがございます」
言いながら片膝をついて、しっかりと僕を見上げたベニーの表情は、頼りがいのある執事の顔をしていた。
「なんだ?」
「困ったことがあれば、屋敷に連絡をしていただけたらと思いまして。解決できるものであれば一緒に考えますし、駆けつけることが可能な場所であれば、馬に乗ってお傍に馳せ参じます」
挽回してみせるという思いが、アクセントになって言の葉に込められたのを、ひしひしと感じとった。主として、それを見過ごすわけにはいかない。執事としての、彼の資質を上げるために――。
「分かった、必ず連絡する。まずはさきほど頼んだ電話の件、早急にしてくれ」
「はい、ただちに!」
ベニーの右手を僕から解放したのに、名残惜しげに指先を一瞬だけ掴んでから手を放す。
ちょっとした行為にときどき戸惑ってしまうのは、こういうのをしたことがないのと、される機会がほぼないせいだった。
どんな気持ちで、それをしたのかがさっぱり分からない。
「ベニー……」
かけた声を振り切るように素早く立ち上がると、身を翻して執務室を出て行った。
(慣れない仕事をするだけでもいっぱいいっぱいなのに、相手の気持ちを推し量る余裕がないのも困りものだな。少しずつ、両方こなせるようにならなければ!)
「お願いがございます」
言いながら片膝をついて、しっかりと僕を見上げたベニーの表情は、頼りがいのある執事の顔をしていた。
「なんだ?」
「困ったことがあれば、屋敷に連絡をしていただけたらと思いまして。解決できるものであれば一緒に考えますし、駆けつけることが可能な場所であれば、馬に乗ってお傍に馳せ参じます」
挽回してみせるという思いが、アクセントになって言の葉に込められたのを、ひしひしと感じとった。主として、それを見過ごすわけにはいかない。執事としての、彼の資質を上げるために――。
「分かった、必ず連絡する。まずはさきほど頼んだ電話の件、早急にしてくれ」
「はい、ただちに!」
ベニーの右手を僕から解放したのに、名残惜しげに指先を一瞬だけ掴んでから手を放す。
ちょっとした行為にときどき戸惑ってしまうのは、こういうのをしたことがないのと、される機会がほぼないせいだった。
どんな気持ちで、それをしたのかがさっぱり分からない。
「ベニー……」
かけた声を振り切るように素早く立ち上がると、身を翻して執務室を出て行った。
(慣れない仕事をするだけでもいっぱいいっぱいなのに、相手の気持ちを推し量る余裕がないのも困りものだな。少しずつ、両方こなせるようにならなければ!)
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる