101 / 329
抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい
24
しおりを挟む
「やはり私の出生も、ご丁寧にお調べになったのですね。話題作りが大好きな伯爵らしい行動ですが、そんな無駄なことばかりにかまけて、お仕事のほうは大丈夫なのでしょうか」
心配しているとは到底思えない口調で指摘すると、嬉しそうに瞳を細めた。まるで待っていましたというリアクションに、嫌な予感が脳裏をよぎる。
「そういう執事殿こそ男爵が一大事のときに、こんなところで呑気に寝ていたんだ。このあと頭を下げて、詫びをいれなくてはいけないだろう。そんなんだから前にいた屋敷で、男娼の館に売られてしまったといったところか」
「養父母を悪く言わないでいただきたい!」
「だって、君が売られたのは事実だ。孤児院から子どもを数人引き取れるくらいに、裕福な貴族だったのに、お人好しが過ぎた結果、ある者にまんまと騙されて、借金を抱えることになった」
これ以上返答したら、それを好機に口撃を仕掛けてくることが想像ついたので、両手を握りしめて怒りを何とか抑えた。
「反論しないのかい? 君は借金のカタに売られたんだろう」
「……そうです。ですが私自ら、それを志願したのです。ぅ、売られたわけじゃない」
内なる怒りで、声が震えてしまう。
(どこかで気持ちを切り替えないと、伯爵にしてやられてしまう――)
「男娼まで落ちぶれた君が、今やアジャ家の執事にまで成り上がったのは、男爵の出生に関係しているのか?」
「ローランド様は、どちらにいらっしゃるのでしょうか?」
「質問に答えないと、男爵の居場所は教えない」
ぴしゃりと言い放った伯爵の対応に、今度は自分から仕掛けてみる。
心配しているとは到底思えない口調で指摘すると、嬉しそうに瞳を細めた。まるで待っていましたというリアクションに、嫌な予感が脳裏をよぎる。
「そういう執事殿こそ男爵が一大事のときに、こんなところで呑気に寝ていたんだ。このあと頭を下げて、詫びをいれなくてはいけないだろう。そんなんだから前にいた屋敷で、男娼の館に売られてしまったといったところか」
「養父母を悪く言わないでいただきたい!」
「だって、君が売られたのは事実だ。孤児院から子どもを数人引き取れるくらいに、裕福な貴族だったのに、お人好しが過ぎた結果、ある者にまんまと騙されて、借金を抱えることになった」
これ以上返答したら、それを好機に口撃を仕掛けてくることが想像ついたので、両手を握りしめて怒りを何とか抑えた。
「反論しないのかい? 君は借金のカタに売られたんだろう」
「……そうです。ですが私自ら、それを志願したのです。ぅ、売られたわけじゃない」
内なる怒りで、声が震えてしまう。
(どこかで気持ちを切り替えないと、伯爵にしてやられてしまう――)
「男娼まで落ちぶれた君が、今やアジャ家の執事にまで成り上がったのは、男爵の出生に関係しているのか?」
「ローランド様は、どちらにいらっしゃるのでしょうか?」
「質問に答えないと、男爵の居場所は教えない」
ぴしゃりと言い放った伯爵の対応に、今度は自分から仕掛けてみる。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる