BL小説短編集

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
71 / 329
悪い男

6

しおりを挟む
***

『とにかく上條くんは、私の傍にいればいいんだからね。浮気なんて、もってのほかだよ。あとね――』

 ミスキャンパスの彼女の繰り出すワガママが、日毎に厳しくなるせいで、ほとほとまいっていた。そんな微妙な関係を維持しているというのに、周囲から羨望のまなざしが、いやおうなしに注がれる日々にも、正直ウンザリした。

 彼女のことが好きで付き合ったはずなのに、その気持ちはどんどん薄れていき、気がつけば自由にのびのびと行動している那月へと、俺の想いは移った。

 誰とでも寝るという酷い噂が、大学構内のそこかしこで囁かれているというのに、我関せずというマイペースを崩さない那月に惹かれたのが、好きになった理由だと思う。

 だから彼女には別れを告げたのに、別れたくないの一点張りを貫かれ、俺が冷たくあしらってもずっと彼女面された。

 断り続けるという面倒くささも手伝ったので、仕方なくそのまま放置し、那月にアタックすることに決めた。

 相手は、ビッチと噂されている年上。年下だからと舐められてあしらわれたら、そこで終了なのが分かった。

 だから逢うたびに毎回声をかけつつ、必死に食らいつきながら、偉ぶった態度をとり続けてやった。

 すると根負けした那月が、触れることを許してくれた。

 あからさまな嫌悪感を示されなかったものの、仕方なく付き合ってやるという感じが、肌を重ねているうちに、なんとなく伝わってきた。

 見つめると逸らされる、絶対に合わせない視線。煽る言葉をかけても、感じていないをひたすら貫く、強固なメンタル。

 そんな気難しい相手を夢中にすべく、ゲイビを何本も見て研究した。ひとえに好きな相手を、とことん感じさせるために――。

『このあと、彼女とヤるんだろ。せいぜい頑張りな。俺もアンタに負けないように、抱かれに行ってくる』

 クリスマスイブにプレゼントを渡して、想いを告白しようと思っていたところにかけられた言葉で、真実を告げる勇気が失せてしまった。

 躰だけでつながる俺たちは、この先も変わらず、現状維持したほうがいいのだろうか――逢いたいときだけ言葉を交わし、抱きたいときに触れるだけの関係。しかも誘うのは、すべて俺から。那月は動かず、そこに立ちつくしているだけ。

(このままじゃ埒が明かない。アイツは絶対に動かないんだから、俺が自ら行動しないと!)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

処理中です...