BL小説短編集

相沢蒼依

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なおしたいコト

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 多いときは、1日に5~6件ほど出席することも。週で平均を出すなら、毎日多くて3件の会合をこなすことになる。

 そんな平日が終われば、金曜日の夜には地元に帰郷する。今度は地元の方々との会合が、土曜の“朝10時”からセッティングされていることがデフォだった。

 土日は朝・昼・晩・晩・晩とだいたい2時間ずつ、お酒を飲みながらの会合に参加しなければならない。

 芸能界で活動した経験上、ドラマや地方ロケのせわしない忙しさを経験しているゆえに、多忙を極める業務をそれなりにこなせると思っていた。しかしそれは、子どもの頃から慣れ親しんでいる芸能活動だからこなせていたというのを、現在進行形で思い知らされている。

 ずぶの素人である俺が政界入りし、聞き慣れない単語を耳にしたり書類で見たりしているうちに、焦りを覚えずにはいられなかった。新人でも議員バッチをつけている以上は、知りません・わかりませんでしたでは済まされない。

 先輩議員に追いつくべく、日々の勉強が欠かせない状況だった。

「陵、お茶を持ってきた。少し休憩したらどうだ?」

 議員会館の事務所で、出された要望書を眺めながら頭を抱えていると、秘書である克巳さんが、俺好みの渋いお茶をデスクに置く。

「さすがはできる秘書って感じだね。ナイスなタイミングで、お茶を持ってきてくれちゃって。ありがと! お蔭で仕事が捗りそう!!」

「無理やり笑顔に妙なハイテンション。昨日は何時に寝たんだ?」

 美味しいお茶を啜っているところになされた、厳しい表情をした恋人の質問に、どう返せばいいのか……。

 議員宿舎には、家族以外の部外者をみだりに入れては駄目という規律があるため、克巳さんは近くのマンションに引っ越してくれた。

 俺を議員宿舎に送ってから、どんなふうに過ごしているのかを、彼はまったく知らない。

「えっと、つい勉強に夢中になっちゃって、多分午前1時すぎだったような?」

 視線を右往左往しながら答えると、胸ポケットから電子手帳を取り出し、眉間に深い皺を寄せつつ、何かをチェックしはじめる。

 困惑顔を決めこんだ俺を尻目に、静まり返った事務所内で、無機質かつ規則的なピッピッという音が鳴り響く。

(――今の現状にげんなりしてる、俺の心電図を計ってるみたいなリズムだな)
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